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ドストエフスキー, 工藤精一郎 / 新潮文庫 (38件のレビュー)
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やました
ロシア+監獄+死の家というタイトルからして、陰気で鬱々した内容かと思ったら違った。舞台は刑務所なのに何故か上品で、ほのぼの日常物と言えるような小説。
投稿日:2024.01.07
momchap
ロシア文学のイメージは、なんだか暗そうで苦しそうと自分勝手に思っていた。そして、その勝手なイメージから、ロシア文学を避けていたのだが、この本を読んで全く違っていたことがわかった。 ここではドストエフス…キーが4年間シベリア流刑での体験をもとに、監獄での暮らしや人々の様子などが描かれている。 日々の様子をつづったものや人物に焦点を当てたもの、イベント的に起きたことなどについて正確に緻密に描かれている。監獄という特殊性から興味が湧く部分もあるが、多くは普通の人物がどのように生活しているかを見るのと変わらないのかもしれない。 表現が非常にリアリスティックで、それでいて愛情に満ちた文だった。人間観察が緻密であり、その様子から考えられる心情や、監獄であったできごとを描いているが、決してドラマチックではない。また、貴族と民衆の溶け合わないことを実に実感をもって、そしてそれを胸苦しい思いで描いてもいる。 作家が人間に対して愛情をもち、生き生きとした人物を描く作家として確立するにはこのような人間観察をできるかどうかにかかっているのかもしれない。続きを読む
投稿日:2023.10.18
馬場豊
「死の家の記録」名前がかっこよすぎて、本屋さんで目に付いた瞬間、(あっ、これは買いだな、、、)ってなりました。 ロシア文学かつ、ドストエフスキーのシベリア行き時代の本。とんでもなく暗い話を想像していた…けど、実際は施設や環境が暗いなだけで、中の人間たちは元気。なんなら少し楽しそうに見えるほどだった。3日位だけなら行ってみたい。 最初の方は目新しかったけど、ストーリー性がなく、中盤からは正直飽きて、読み進めると眠くなった。 囚人は、自分を対等に扱ってくれる上官達に行為を持つっていうのが親近感を覚えた。上から目線で優しくされても、ただのマウンティングオナニーにしか思えないんだよね。 あとペット話が好き。犬が頑張って生きて囚人たちと仲良くしようとしてるのに、蹴られたり最終的には皮を剥ぎ取られたりしてるのが面白い。最終的に可愛がってた犬が殺されたのに、ペトローヴィチがそこまで悲しんで無いのも、当時の監獄の雰囲気が伝わってくる。続きを読む
投稿日:2023.05.12
トリコ
このレビューはネタバレを含みます
『死の家の記録』は、1860年から1862年にかけて発表された。 ペトラシェフスキー会のメンバーとして逮捕されたドストエフスキーは、オムスク監獄で囚人として4年間過ごした。「死の家の記録」は実質上、ドストエフスキー自身の獄中体験記録とも言える。 あらすじ 語り手アレクサンドル・ペトローヴィッチ・ゴリャンチコフは妻殺しの罪で10年間の追放と強制労働との判決を受ける。彼は貴族地主出身であったことから、他囚人たち(多くが、地主に搾取される農民出身)から悪意・憎しみを大いに買い、当初は監獄生活に苦しむ。しかし次第に収容所生活や受刑仲間に対する自身の嫌悪感を克服して、それまでの信念を再構築してゆく。(Wikipediaより) 感想: ドストファン必読書。なぜなら後年のドスト作品に登場するキャラクター達のモデルになった人々が本作に多数登場するから。獄中で仲良くなった天使のように可愛い青年アレイは『カラ兄』のアリョーシャだし、父親を殺し財産を持ち逃げした軍人はドミートリィのモデルだし、敬虔な正教徒のお爺さんはゾシマ長老のモデルに思える。また、妻殺しは本作以外だと『永遠の夫』のシナリオに重なる。ドストが獄中で培った犯罪心理学的考察は『罪と罰』、『虐げられた人々』などに反映されているのではと思えなくもない。 本作は一言で言えば獄中での人間観察記。主人公が見た、ロシア民衆達、たまにタタール人やインド方面の囚人もいる。言葉が通じないながらも心をかよわせたり、仲良くなっていく様子はちょっぴりホッコリする。が基本的には、貴族である主人公は周囲から敬遠され、いやむしろ疎まれ敵対され馬鹿にされる対象であった。ために主人公は当初獄中で、これ以上ないと言っていいほどの孤独を味わい、収監当初は獄舎に居着いている犬しか話し相手が居ないほどであった。これドストエフスキーもそうだったんかな?ドストも犬相手に話かけたりしてたのかと思うと、侘しいと同時に少しユーモラス笑 主人公が特に愛し、可愛がった美青年アレイ…これはカラマーゾフの兄弟のアリョーシャだよね!?いちいち描写が可愛いので少しキュンとなる。 一言で囚人といっても、性格から出自から何もかもが違い、個性的で、いろんな奴らがいる。陽気であったり陰気であったり。 一般に監獄生活といえば、苦しく辛く単調なものてあるように思われがちだが、本作における囚人達はそれぞれ手に職があったり、内職をして小銭を稼ぎ、稼いだ金で肉を買ったり酒を飲んだり(許可はされていないがどこかしらから持ち込んでいるのである)クリスマスには一張羅を着てご馳走を食らい、また囚人達一丸となって外部客を招き劇を演じるなど、それなりに監獄生活を謳歌しているので、 『死の家の記録』と題されるタイトルに似つかわしくないある意味楽しげな(楽しいのかわからないが)生活ぶりが描かれる。これは帝政ロシアの時代までなのか?ソ連時代はどうだったか知らないが、当時は割とおおらかだったのかなと思わないでも無かった。それでも懲罰はかなり苛烈で、笞刑(ムチ打ち刑)の描写には戦慄してしまう。死んでしまう者もいたらしく、当時の法律や刑罰の方法、施行され方に対する非難めいた記述も所々に見られ、非人道的な体制へのドストエフスキーの強い憤りが垣間見られることもあり、とても興味深かった。
投稿日:2022.04.01
nabecho
1973年「Записки из Мёртвого дома」 (発表 1860年~1862年) NOTE記録 https://note.com/nabechoo/n/n545fa162c0c3 その後のドスト作品に大きく影響してくる作品らしいが、確かに、ここでの経験があの深い人間描写に繋がるのかと納得した。本物の「民衆」の姿を、ここで強烈に印象付けたのか。 本書はたぶん、当時メモってたものから書かれていたかと思うが、「深く鋭い観察と正確な描写」によって、この「死の家の情景」がありありと描かれている。 メインはやはり、「ロシアのそれぞれの地域の代表が集まっているかのような、あらゆる種類の人間」と言われる、囚人たちのこと。この監獄には、250人ほどいたらしい。とりあえず、いろんな「民衆」がいた模様。 そんな囚人たちとの監獄での生活について。強制労働、刑仕・刑罰、病院、イベント、動物のことなどが語られていく。そして4年間の服役を経て、出獄の時を迎え、話は終わる。
投稿日:2021.12.19
佑真
ドフトエフスキー後期の傑作群の源泉であり、彼個人の人生における最も重要なターニングポイント。 一般の人々が当然経験しえない異常な状況下にこそ、彼の文学の素材があり、それこそ啓示とも言える監獄での強烈な…出会いと閃きが、カラマーゾフや罪と罰などの大作を作り上げた。 そういうの考えるだけでも泣けてしまう。 文章も読みやすくユーモアも点在してて相変わらずリスペクト。続きを読む
投稿日:2021.08.29
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