【感想】いつも彼らはどこかに(新潮文庫)

小川洋子 / 新潮文庫
(41件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
7
13
14
2
0

ブクログレビュー

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  • Kyohei

    Kyohei

    気に入った2編

    - ビーバーの小枝
    緩やかに繋がり関係し合ういのち。
    一生懸命に手元の小枝を食んで、残るのはその痕跡だけ

    - チーター準備中
    特別なコトはなくて、誰もがかけがえのない特別

    投稿日:2024.05.05

  • 海外おやじ

    海外おやじ

    このレビューはネタバレを含みます

    小川洋子さんによる動物がテーマの短編集。2013年発行ですからちょい前のものです。

    ・・・
    作りとしては短編集となっています。相変わらず不思議な物語を綴ります。

    タイトルに動物が絡みますが、物語は時として重層的に進みます。

    あらすじを書こうと思ったのですが、上記の重層性の関係で説明しきれんと思い、このようにバッサリやりました。

    帯同馬・・・タイトルは『フランスの凱旋門賞で優勝が期待されるディープ・インパクト。慣れない土地への移動のストレスを緩和するためにピカレスクコートが帯同場として出国した。』という点より。主人公は(おそらく)大阪モノレール間のみ移動できる電車恐怖症の女性(職業;実演販売)。

    ビーバーの小枝・・・主人公はとある作家。タイトルは、彼の翻訳を担当した外国人が翻訳の際にさすったという、ビーバーが表皮をキレイに食った小枝より。

    ハモニカ兎・・・主人公は、とある村の朝食屋の主人の話。タイトルは、この男の村で開催されるオリンピック競技の開催までの日めくりのボードより。ここにかつてハモニカ兎という特産兎がいたという話から、この動物が日めくりボードになっている。

    目隠しされた小鷺・・・主人公はとある私立美術館の受付係。タイトルは、ここに訪れるうらびれた修理屋で何をやってもダメそうな「アルルの女」が機敏に助けた動物から。

    愛犬ベネディクト・・・主人公は若い男の子(大学生くらい?)。タイトルは彼の妹が可愛がる陶製の犬の名前より。

    チーター準備中・・・主人公は動物園の受付で働く女。タイトルは、彼女の失ったhがチーターcheetahに含まれていており、また彼女が好きなのは展示の主人のいなくなった「展示中」の檻とその看板だったことから。共有されない「喪失」の悲しみが痛い作品。

    断食蝸牛・・・主人公はとある断食施設に身を寄せている女性。タイトルは、彼女が足しげく訪れた近くの水車小屋、そこで買われている蝸牛と、彼女が入っていた施設の目的から。

    竜の子幼稚園・・・主人公は身代わり旅行人のおんな。タイトルは、若くしてなくなった弟が通っていた幼稚園から。

    ・・・
    今回も、美しくも静謐に満ちた表現の花園にうっとりしたのですが、読中ひらめきました。小川氏の表現は、ナチュラル・メイク的表現だな、と。

    通常描写というのは隠喩であれ直喩であれ、手を変え品を変え、時に複数の角度から物事を表すと思います(違うって!?)。

    でも小川さんの表現はこんな厚化粧ではないのです。もっとシンプルで美しい。あ、でも薄化粧というわけではないのです。
    そこにはきっと計算と試行があり、一番質の良い表現が意図をもって配置されているのだろう。そして表現は適切に間引かれ、ミステリアスな雰囲気をまとうのだろう。

    ああ、これって、(薄化粧でなくて)ナチュラル・メイクじゃないのか、と。という一人合点でした笑

    ・・・
    表現が適度に間引かれているせいか、最初の「帯同馬」以外、舞台がどこであるか分かりません。

    特に幻想度が強いのが、最後の「竜の子幼稚園」でしょうか。身代わり旅行人なんて聞いたことが有りません笑 でもあったら素敵だなあとも思いました。最後に死んだ弟と再会するかのような出会いも幻想度を高めていたと思います。

    また、学校に通わなくなった妹がドールハウス世界に没入する「愛犬ベネディクト」もちょっとした狂気を感じます。妹の没入に祖父も陰に陽にサポートし始める点です。

    ・・・
    ということで二週間ぶりの小川氏の作品でした。

    今回も美しい静謐感に満ちた表現を頂きました。決して起伏が激しい展開ではありませんが、このワードチョイスあってのこの展開だと思っています。

    ことばを楽しみたい方にはお勧めできる作品です。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.14

  • shuzo music&book

    shuzo music&book

    「彼ら」とは動物。
    8篇とも人の傍に寄り添い重要な役割をする。
    静かで温かい。
    中年女性が主人公の「帯同馬」と「竜の子幼稚園」が特に良い。
    自然と小川洋子本人が主人公のように想像してしまい不思議な感覚になる。続きを読む

    投稿日:2024.02.17

  • 少しだけ丸いおもち

    少しだけ丸いおもち

    短編集。人間らしいというか、人間も一つのただの生き物として生々しく描かれるお話と、
    一つの生き物としてとにかく美しくこの世のものでは無いくらい神秘的に描かれるお話もあり、
    それらが小さな箱にぎゅっと詰まっている、感覚。
    この感覚何かに似てると思いながら、なかなか思い出せなかった。とにかく繊細に微細に作り込まれたすぐに壊れてしまうような美しい芸術品のような、
    それぞれの個性が際立つ小さなチョコレートとか、クッキーと、そんなお菓子たちが詰まってる箱をゆっくり味わっているような感覚かも、と、一つ一つをいただきながらたどり着いた。

    この手の短編は一つ一つがとにかく心に残りながら読み進めるのに、あまりに素晴らしい表現力で、脳に描きすぎて、じんわり自分のものになり
    どんな話だったっけ?と具体的なところは忘れてしまうから、一つ一つに感想を残しておいた方がいいのだろうか。

    江國香織さんの解説。
    これも一つの魅力でこの本を手に取ったのだけど、

    小川さんの短編集は
    一つ一つが全く違う世界観であるが、
    一つ一つが磨きあげられている、
    確かな質量がある、という一文を見て、
    これが答えだと思ってしまった。
    余韻が、とかそういうことではなく、
    それもそうなんだけど、それ以上のもの。
    たしかにそこにある。という感覚になる小川さんの小説は本当に素晴らしいです。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.15

  • お砂糖

    お砂糖

    このレビューはネタバレを含みます

    小川洋子の小説は、喪失感からくる寂しさと、薄っすらとした気味悪さやグロテスクさの塩梅がきれいで好きだなあと、この作品を読んで、また実感しました。

    実在はしない、もしくは私自身は見たことがないものや景色なのに、ハモニカ兎が広場に佇んでいる様子や、ミニチュアハウスと愛犬ベネディクト、蝸牛であふれる風車小屋が目に浮かび、チーター準備中は物語に漂う寂しさからか冬の空気感を感じるような気がして、ゆっくり1編ずつ読みたくなる1冊でした。

    個人的には最後の「竜の子幼稚園」が好きでした。
    いつかふとした瞬間に、脳裏にひっそりと蘇りそうなシーンがたくさんある1冊でした。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.01.22

  • sono0621

    sono0621

    どこかの国でひっそりと静かに暮らす誰かの側にはいつも彼ら(何か)が寄り添っている。それは生きた動物だったり、物であったり…。 大きな出来事はおこらない、物語の結末もよくわからない。けれどその世界観にじわっ〜と浸れるような短編集。
    特別なことがなくても平凡に暮らす私たちでも小川洋子さんの手にかかれば素敵な物語になるのかもしれない。自分の心にそっと寄り添ってくれているものって何だろう…
    続きを読む

    投稿日:2024.01.15

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