【感想】徒然草

兼好, 島内裕子 / ちくま学芸文庫
(8件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • Φ

    Φ

    言わずと知れた古典文学。
    散文形式で書かれた内容は、宮廷生活や本人の読書体験により培われた記憶が映し、心に移りゆく由無し事。
    人生の理想の過ごし方に対する思索を時折挟みながら、自由に、それでいて秩序ある連想を続けていく。

    意訳をふんだんに取り入れた現代語訳により、原文を直接読むよりも、はるかに読みやすい内容となっている。通読も容易いだろう。
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    投稿日:2023.11.30

  • 光軍曹

    光軍曹

    卜部兼好(1283頃~1352頃)によって書かれた徒然草は十五世紀半ば以降、すなわち、没後約100年後に歌人、連歌師そして武士たちによって脚光を浴び始めた。実は生前から注目を集めていたわけではなかったのだ。
    古典作品は初めから古典だったわけではなく、いったん忘れられた後誰かが価値を再発見し、作者の隠された意図を明らかにすることで評価される。だから古典はその時代の価値観によって評価が変動する。

    徒然草は初め、洗練された美意識の書物として注目を集め、戦乱の時代では世の中や人生を無常として捉える側面から読まれるようになった。江戸時代になると教訓書として流行した。いずれも、現在の価値観と当時の価値観を比較し、現在と過去を重ね合わせることで物事を相対化している。そうした行いを現代に当てはめるとどうなるだろうか。

    科学的合理精神の現代と淳素(まともで質朴な状態)を理想とする兼好の時代を照らし合わせると、「専門知への態度」が興味深い。例えば、第百九十三段で「己が境界にあらざる物をば、争ふべからず、是非すべからず。」とある。自分の専門分野以外のことに関しては、争ってはならないし、相手のことをみだりに批判したり否定したりしてはいけないということだ。
    知識(特に科学技術)の細分化、専門家が進んだ現代では、往々にして専門家の意見が重宝される。しかし、そうした専門家を推量して安易にその人の知恵の程度が分かったと決め込み、行動することは身を危険にさらすリスクを上昇させる。そのため、伝染病から自分や家族を守ったり、病気よりもたちの悪い迷信から抜け出すためには、人間が陥りがちな慢心や他者に対する無理解を反省しなければならないと考えられる。

    古典を読むという体験を重視した読書を目指した。じっくり読み新しい発見もあったが、背景知識の不足からよくわからない部分もあった。それは今後の課題としよう。
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    投稿日:2022.01.11

  • よっしい

    よっしい

    独り思いにふける素晴らしさ。
    俗世(世間というフィクション)から一旦離れること。

    800年前のミニマリスト、吉田兼好の考えに触れることができる一冊です。普段の生活から離れることで、承認欲求を知り、我欲を知り、勝負への我利我利具合を知ることができる。

    こんな距離感を私も持てると良いのですが。
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    投稿日:2021.04.18

  • mm

    mm

    「通読できる徒然草」…まさに、古典を普通の読み物として読むことを叶えてくれました。
    嬉しいし、楽しい。

    現代語訳の良さはもちろん、注と評が最小限で邪魔しない。
    古典は注釈や評などでお勉強感が漂い、
    『読書中に先生がしゃしゃり出てきていちいちうるさい』感じがして萎えてしまってましたが(笑)、
    通読することを目的としたこの徒然草は、楽しむヒントを与え、背中を押してくれるものでした。
    原文の単語の解説などもないので、気を削がれることなく古文のニュアンスを楽しめます。
    なので勉強したい人には向かないかもしれないです。

    それにしても徒然草、国語の先生が大好きと仰っていましたが納得です。
    エッセイとは聞いてましたが、ほんとですね。それもなんて奥深いエッセイ。
    遠い昔の、価値観も風潮もまるで違う時代だけど、人間を見ればとても身近で馴染み深い。
    人間味に溢れて、感性豊かで思慮深く、かつ気まぐれで変わり者…兼好法師、会ってみたいなぁと思わせる人ですね。

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    投稿日:2020.06.20

  • mcpekmaeda

    mcpekmaeda

    苦労しましたが何とか読了しました。非常に丁寧で分かりやすい現代語訳があり、それを参照しながら、原文の一語一語を味わったと言えればカッコ良いですが、実際には、原文を一読しただけでは、内容が頭に入らず、苦戦が続きました。続きを読む

    投稿日:2020.06.09

  • mocciom

    mocciom

    著者の吉田兼好は無欲恬淡の隠者として語られることも多いところですが、実態は30歳で朝廷を辞して田畑を購入、これを小作人に貸し出して年貢米を得るという理想的アーリーリタイアを成し遂げた人でもあります。

    そんな高等遊民としての兼好の思想がにじむもの。

    ○自分が高貴な身分であれ、ましてものの数でもない場合はなおさらのこと、子どもというものはいない方がよい、と私は思う。…藤原良房の大臣に関しても、「子孫がおられぬのがよい。子孫が先祖より衰退なさるのは良くないことだ」と、『大鏡』には書かれている。聖徳太子が生前にお墓を造営なさったときも、「ここを切れ。あちらを断て。我が子孫は絶えさせようと思うのだ」と申されたとか。(第六段)

    ○独り、燈火の下に書物を展げて、見ぬ世の人を友とすることくらい、無上の慰めはない。本と言えば、『文選』のあわれぶかい巻々や、『白氏文集』や『老子』の詞章、『南華の篇』、すなわち『荘子』。日本の文章博士たちが書いたものも、昔のものは、しみじみと心に沁みることが多い。(第十三段)

    ○もうこうなったら、すべての縁をうち捨てるべき時である。私は、約束も、もう守るまい。礼儀も、気にしまい。このような決心が出来ない人は、私のことをもの狂いとも言え。しっかりとした現実感がなく、人情がないと思ってもよい。他人がどんなに私のことを非難したとしても、少しも苦しくはない。逆に、私のことを褒めてくれても、そんな言葉を聞く耳は持たない。(第百十二段)
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    投稿日:2014.08.03

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