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三枝三七子 / 学研 (12件のレビュー)
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nakaizawa
(2016.11.16読了)(2016.11.13借入)(2014.04.26・第3刷) 副題「水俣から世界を見続けた医師 原田正純」 水俣病と関わり続けた医師、原田正純さんの伝記です。神経精神科医と…なっています。有機水銀中毒は、脳神経に作用するので、かかわることになったのでしょう。 医者は、病気を治すのが仕事なのでしょうけど、有機水銀中毒は治せません。患者さんにとっては、治してくれるわけでもない医者の所に、お金と時間をかけて見せに来ていたのですが、そういう事情を知った原田さんは、患者さんの家に訪ねてゆくようになります。 そうすると、同じ症状の人たちが、同じ家や近所の家にも見つかります。 水俣病は、チッソ水俣工場が流した廃水に含まれていた水銀が魚貝類に蓄積し、その魚貝類を大量に摂取した人や動物が中毒症状を起こして体が不自由になったり死亡したりするものです。 従って、同じ魚貝類を食べている家族や近所の人たちが同じように中毒症状を起こしてしまうのは当然だったのです。 魚貝類は、動き回りますので不知火海沿岸の人びと全体に影響があったはずなのですが、なるべく補償金、賠償金、等を多くしたくない、企業・日本政府・自治体などは、広範囲の影響調査はしたがらず、実態把握行われなかったようです。 子供向けに書かれた本ですが、大人が読んでも、水俣病や原田医師についてよくわかる内容になっていると思います。 【目次】 プロローグ 原田先生との出会い 第1章 医者になんかなりたくなかった 第2章 見てしまった責任 第3章 人よりもお金が大事なのか?―三つの公害・事件を追って 第4章 患者さんとともに生きる 第5章 世界のあちこちで起こる公害・事件 第6章 これからを生きるための水俣学 第7章 原田先生からのバトン エピローグ たくさんの人に支えられて 解説 人間理解と生き方 柳田邦男 原田正純先生 略年譜 ●患者さんたち(31頁) 患者さんたちがこれまでどんな思いで苦労して電車や車を乗りついで来ていたかということに、あたりまえのように駅まで車でむかえに来てもらったぼくたちは、気がつかんかった。 ●貧しさ(35頁) 何より心が痛んだのは、ひどい症状で苦しむ患者さんの家ほど、目をおおいたくなるような貧しさだったことだ。家具なんかもちゃぶ台が一つあるだけで、どうやってくらしているのかと、思うほどだったんだ。 ●胎児性水俣病(36頁) 「わたしは、下ん子がおなかにおるときに、魚ば、いっぱい食べとりました。こん子の毒はわたしのおなかのなかで入ったとでしょ? だけん、こぎゃん状態で生まれてきよったとです。えらかお医者さんも、そぎゃんあたりまえのことば、なんでわからんとですか?」 ●胎盤が通さない(37頁) ぼくが水俣に通っていたときの医学の世界では、「命を危なくするするような毒は、お母さんの体(胎盤)が通さないで、赤ちゃんを守っている」という考えが、あたりまえだった。 ●水俣病申請四万人(41頁) 水俣病問題の最終解決を目指して制定された水俣病救済特別措置法に、水俣湾を囲む地域から四万人以上の人が2012年7月末日までにかけこみ申請をしたのです。こんなにも多くの人々が五十年以上も声を出せずに病に苦しんでおられたのかと衝撃を受けました。 ●一酸化炭素中毒(47頁) 「一酸化炭素中毒は一時的なもので、あとまで残るような症状や影響はない」という定説があり、ぼくもそれを信じていた ●後遺症(49頁) 一酸化炭素中毒には、長く残る症状があった。記憶障害によって、計算ができなくなったり、仕事に一番必要な集中力がまったくなくなってしまったりしていたんだ。事故前と事故後では性格がまるっきり変わってしまったという人もいた。 ●体に残る毒(56頁) 一度、体内に入ってしまったら、このカネミオイルを食べていない状態で何年すごしても胎児性油症の子どもたちは生まれてしまう。水俣のメチル水銀より、カネミ油症で吸収されたPCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)はずっと体に残る。このようなダイコキシン系の毒を直接、食べてしまった被害は、世界でも初めてなんだ。 ●公害病認定(61頁) ぼくは公害病認定の日、ちょうど診察で患者さんの家にいてね。その家のお母さんがラジオでニュースを聞いたとたんに、「これで、むすめを医者に連れていくのがはずかしくなくなった。肩身のせまい思いばせんでよくなった!」と喜んだのを見ていた。 ●公害と差別(84頁) 水俣では公害の起きたところに、差別が生れるのだと思っていたけれど、ちがうね。もともと差別のあるところに、公害が起きる、もしくは、起こされていると思った。権利を主張できない人、声の小さい者、教育にめぐまれず、社会的にも弱い人々は犠牲にしていいと思っているんだ。だから、平気で毒物を流し、彼らの存在を無視して、ひどいことができるんだ。 ☆関連図書(既読) 「水俣病」原田正純著、岩波新書、1972.11.22 「水俣病は終っていない」原田正純著、岩波新書、1985.02.20 「水俣の赤い海」原田正純著、フレーベル館、2006.10. 「証言水俣病」栗原彬編、岩波新書、2000.02.18 「水俣病の科学 増補版」西村肇・岡本達明著、日本評論社、2006.07.15 「新装版苦海浄土」石牟礼道子著、講談社文庫、2004.07.15 「天の魚 続・苦海浄土」石牟礼道子著、講談社文庫、1980.04.15 「苦海浄土 池澤夏樹=個人編集世界文学全集」石牟礼道子著、河出書房新社、2011.01.30 「石牟礼道子『苦海浄土』」若松英輔著、NHK出版、2016.09.01 (2016年11月26日・記) (「BOOK」データベースより)amazon 「公害の原点」と呼ばれる水俣病事件から50年もの間、患者の側に立ち続けた医師原田正純。原田先生は世界のあちこちで公害病の人たちを診察し、水俣から社会のひずみを訴え続けました。過去を知り、未来に生かすことの大切さを伝える原田先生からの最後のメッセージ。続きを読む
投稿日:2016.11.26
ghostrider
水俣病認定の活動に長年携わった医師原田正純氏の伝記。作者は,原田氏との交流によって絵本「みなまたの木」を著す。その交流での内容がこの本のベースになっている。小中学生向けかな。
投稿日:2014.11.24
pumpkindad
四大公害病については、小学生のころから教科書で学んだり、受験の知識として覚えたり、資料書籍の中で考えを深めたりしてきたが、現代においては特に大人の社会の中では風化してきてしまっているように感じる。 改…めて水俣病のことを考えることで、様々な社会問題に目を向けることの大切さを再確認した。続きを読む
投稿日:2014.10.02
hinatanoneko
夏休みに小学生の2人の子どもたちに読み聞かせました。 世の中には「公害」というものがあって、生命を脅かされたり、健康をむしばまれたりすることがある、ということに驚く子どもたち。 どうしてそんなこと…があったの? 水俣以外にも「公害」があったの? 今はもう平気? 説明しながら、子どもたちがあまりにも何も知らないことに愕然としました。 私が子どもの頃は、公害や戦争で普通の人々がこうむる被害について、頻繁に大きく報道されていて、親と話をしなくても、いろいろ耳にしていたのに。 社会全体で情報を共有し、問題意識をもつということから、いつの間にか遠ざかっているのかも、と気づきました。続きを読む
投稿日:2014.08.27
読生
子供たちにとって、「教科書の中だけの話」になりつつある、水俣病をはじめとした公害病。 でも、今現在も、その病気に苦しんでいる人、取り組んでいる人はいます。 戦争の話もそうですし、昨今では放射能汚染の問…題もそうですが、目を背けたくなるような現実について書かれた本は、なかなか読まれません。 学校で勉強している、という理由でもない限り、子供たちはなかなか手に取らない。 私たち司書がお勧めの本を紹介するときにも、やはり、楽しみのための読書として提供しようと思うと、楽しい気持ちだけでは読めないこの本なんかは、どうしても進めにくいのが現実です。 でも、こうやって、本を通してでもそれを読み、それを知ることはとても大事なことだと思うのです。 もちろんみんな、受けた体験も違えば立場も違う、なるべく数多くの本を読み、色んな事例を知ることが、それを「教科書の中だけの出来事」に留めない手段の一つだと思うのです。 もちろん、修学旅行や社会科見学なんかで、その現場を実際に見ることも大切だと思います。 でも、その前、その後に、またこうして本を読むことによって、その理解はより深まり、それが現実として認識しやすくなるのではないかと思います。 それを忘れないために、繰り返さないために。続きを読む
投稿日:2014.08.18
momo
弱い者を踏みつけにしている社会に生きていることが、つらい。平等に生きようと思っている人間なんて一人もいない。誰もが人より上に立とうと努力している。自分より下の人間はいないか必死で探し回っている。 『公…害の起きたところに、差別が生まれるのだと思っていたけれど、ちがうね。もともと差別のあるところに、公害が起きる』本当にその通りだ。もしも水俣病にかかったのが総理大臣などだったら、必死で原因を究明して措置を講じただろう。被害にあったのが何の権力も持たない民草だったから踏みつけにされたのだ。 こんな昔から、国の不正に気づいて動いていた人がいたのに、また福島で同じような構造の差別が起きている。何をどうすれば国が変わっていくのか、見当もつかない。弱い者が踏みにじられるたびに、この世界に生きていることに嫌気がさす。続きを読む
投稿日:2014.08.13
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