【感想】泣き虫ハァちゃん

河合隼雄, 岡田知子 / 新潮社
(20件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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ブクログレビュー

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  • ニコ

    ニコ

    この小説は、世界文化社発刊の「家庭画報」に連載されていたが、著者が脳梗塞で倒れ、帰らぬ人となったため、それまで書き溜めていた執筆分を新潮社が受け出版された。

     あとがきの妻の河合嘉代子さんによると、「この本の舞台は自身の出身地、兵庫県・丹波篠山です。話はフィクションですが、夫の少年時代のイメージそのものと言っていいと思います。夫は両親と大勢の兄弟で過ごした篠山の思い出を大切にしていました」と書いています。

     全十二話で構成され、どれもが秀逸です。
    主人公の「ハァちゃん」(城山隼雄)は感受性が高く国語と算数が好き、唯一の欠点は、泣き虫である。でもその泣き虫が瑞々しいばかりの清らかな感情表現で、河合隼雄さんの大人目線と、子供時代の目線の表現が素晴らしいのです。

     ご自身は、昭和三(一九二八)年生まれなので時代を考慮しなければなりませんが、素朴な疑問に大人である読者も、共感するのではなかろうか。勿論、子供目線で思わなければなりませんが…。

     特に第二話 どんぐりころころが好きです。
     ハァちゃんは、歌詞を間違って覚えていたのです。その意味を兄さんに教えてもらった時、ハアちゃんは、「どんぐりころころは、家に帰れたんやろか」と心配になってきて、泣いているどんぐりの姿が目に見えるようだった。ハァちゃんはおうちに帰れないどんぐりさんのこと思うだけで、涙が出そうになってくる。「かわいそう」「どんぐりさんはおうちに帰れへんのやで」
     城山家のねえや(お手伝さん)は、「そら帰れませんで」(泣)

    「せやけどな、どんぐりさんはおうちに帰らんでもええんやで」「どんぐりのさんはな、そこで芽を出して、どんぐりの木になるんや」

     ハァちゃんは、段々と話がわかってきたし、もう泣いていなかった。もう晴れやかな顔をしていた。段々大きい木になっていくのが見えるような気がした。(詳細は本書で)

     また、岡田知子さんの水彩画の挿絵も素晴らしく心が洗われるようです。僕の子供時代を振り返るのはまだ早いかもしれませんが、何となく懐かしみを覚えました。
     読書は楽しい。
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    投稿日:2024.01.07

  • きゃーみ

    きゃーみ

    河合先生の遺作となった作品。
    小学校4年生までの思い出が、昭和時代の自然豊かな風景とともに、まざまざと浮かんできます。最終話の「夜が怖い」は含蓄のある、示唆的な憂いに満ちていてとても印象的でした。小学生は3・4年生の頃が最も難しいというのを聞いていたので、こういうことなんかなと推察しながら読み進めました。
    もっともっと続きが読みたかった。
    最後の谷川俊太郎さんの詩に目の奥が熱くなりました。
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    投稿日:2023.09.15

  • ちい

    ちい

    古き良き昭和初期の温かな日常を、小学生低学年の男の子目線で書かれたお話。
    兄弟、両親との愛情いっぱいの生活や、昔のこどもは小さなうちから両親や先生に対してきちんと敬語を使えていたんだな、ということに感心するのと同時に、人を敬う気持ちが現代では失われつつあることに寂しさを感じた。
    それにしても幼き頃の自叙伝が遺作だなんて、それだけでも染み入ってしまう。

    文字が大きくてこどもでも読めると思う。おすすめ。
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    投稿日:2022.03.13

  • a25!

    a25!

    とても優しい物語。

    兄弟が多くて、
    お父さんが家族の長で、
    令和にない絆や愛や優しさがある気がした。

    こんな時代もあったんだなーと感じた。


    谷川俊太郎さんの後書きも
    孤独のなかに立ってるけど、
    孤独じゃない感じも良かった。



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    投稿日:2021.11.14

  • いち

    いち

    尊敬する河合隼雄さんの自伝的小説。
    あの素晴らしい人格はこんな子ども時代を過ごすことによって形成されたんだなあ、と腑に落ちました。舞台となる篠山(現在の丹波篠山市)の自然を思い浮かべると故郷に帰ったような懐かしい気持ちになりました。続きを読む

    投稿日:2021.02.14

  • agnes

    agnes

    時代も国も違うけど、リンドグレーンのやかましむらの世界と同じ。幸福感に満たされる。谷川さんの詩もよい。

    投稿日:2020.08.22

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