檻の中の裁判官 なぜ正義を全うできないのか
瀬木比呂志(著者)
/角川新書
作品情報
元判事、ベストセラー『絶望の裁判所』著者による、司法批判の集大成!平成の司法制度改革は大失敗!? 政府と電力会社に追随した根拠なき「原発再稼働容認」、カルロス・ゴーン事件で改めて露見した世界的に特異な「人質司法」、参加者の人権をないがしろにした「裁判員裁判」、国家が犯人1人に責任を押し付ける「死刑制度」・・・・・・閉ざされ歪んだ司法の世界にメスを入れ、改善への道を示す!● 出世コースに乗れば生涯収入7億超えも!「天下り」もあり、国家に逆らえない。● 無罪判決や行政に不利な判決を出した判事たちは人事や異動で報復を受けた。● 在野の法律家から判事を選任する「法曹一元制度」を活用し、“市民のための司法”を取り戻せ!〈目次〉第1章 個人としての裁判官とその問題第2章 官僚・公人としての裁判官第3章 裁判官の仕事とその問題点第4章 裁判官の本質と役割――儀礼と幻想の奥にあるもの第5章 戦後裁判官史、裁判官と表現第6章 法曹一元制度と裁判官システムの未来
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この作品のレビュー
平均 3.6 (5件のレビュー)
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高橋昌一郎氏による「新書100冊」という新書で、オススメの新書100冊として紹介されていたのがこの「檻の中の裁判官」です。
東京の某私大の法学部出身であり裁判には多少興味も有り読んでみようと思いたち…ました。
弁護士や検事についてはドラマや小説やニュースなんかでその特徴などはなんとなくイメージができますよね。でも裁判官については謎のベールに包まれています。その生態は如何に?という興味ですね。
長年裁判官をしてきた著者が退官して外から見ての裁判官や裁判所への分析、批評、考察がなされており非常に説得力がありました。元裁判官の学者だけあって文章も論理的で、わかりやすい。たまに判決文みたいに回りくどい記述があるのは、ご愛嬌といたしましょう。
裁判官というのは独立して可能な限り他者から影響を受けずに自らの高潔な思想や信条に基づき裁定を行う高尚な判断者というイメージでしたが、本書でそのイメージはぶっ壊れました。崩壊したと言ってもよいです。
裁判官て独立した判断者ではなくて裁判所という閉鎖した組織の中に生きる役人なんですね。司法官僚としての性格が強く、官僚型ムラ社会にいきる住人です。官僚型ムラ社会というのがタイトルに言う「檻」なんですね。まさにいい得て妙な表現だと思います。
終身雇用に年功序列に社命による配置転換や異動転勤などが日本型キャリアシステムと言われますが裁判所もまさにこの日本ならではのキャリアシステムを地で行く組織だということがよくわかりました。
しかもこのシステムは最高裁とその事務総局を中心とする裁判所当局の過酷な統制と管理により裁判官をコントロールします。権力が集中しておりお上意識が如実に残りしかも三権分立で司法に期待される役割である権力チェック機能が働かずむしろ権力補完機構としての側面が強い。
司法がこのようなシステムでがんじがらめになっていることに一国民として強い問題意識を持ちます。
対権力との裁判で権力側に忖度した判断をしたり、冤罪を生み出したりすればそれはもはや民主主義国家とは言えないんだろうと思います。一日も早い裁判所の抜本改革が必要でしょう。
読んでそんな感想を抱きました。
続きを読む投稿日:2024.03.16
高橋新書ガイドから。自身の来し方から語り起こされる序盤、大方の評伝やら自伝が嫌いな自分としては、正直『えー…』って感じで読み始めた。でも実際は、小難しくない分とても読み易く、加えて、いわゆるエリート集…団にありがちな性癖を的確に指摘していることもあり、掴みとして上出来。中盤以降、専門的な内容が増えていくんだけど、抵抗なくそこに誘われていることに気付く。鳴り物入りで導入されはしたけど、先行して導入された諸外国とは一線を画する制度で、あまり機能しているように思えない陪審員制度。このジャンルでもまたか…と思っちゃうけど、行政の司法への介入という、お上幻想の病。うんざり。続きを読む
投稿日:2023.12.06
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