欲望の経済を終わらせる(インターナショナル新書)
井手英策(著)
/集英社インターナショナル
作品情報
気鋭の財政社会学者・井手英策が、新自由主義がなぜ先進国で必要とされ、広がり、影響力を持つことができたのか、歴史をつぶさに振り返り、スリリングに解き明かしていく。そして経済と財政の本来の意味を確認し、経済成長がなくても、何か起きても安心して暮らせる財政改革を提言。閉塞感を打破し、人間らしい自由な生き方ができる未来にするための必読の書! 市場原理を絶対視し、政府の介入を少なくすれば、富と複利が増大する、という新自由主義の考えは、80年代にレーガンとサッチャーによって実行され、米・英は好景気を迎える。日本では、外圧や、政財界の思惑と駆け引き、都市と地方の分断などの要因から新自由主義が浸透。経済のグローバル化も起こり、格差が広がる。勤労が美徳とされる「勤労国家」で、教育も医療も老後も、個人の貯金でまかなう「自己責任国家」、日本。財政が保障することは限られ、不安がつきまとう。本来お金儲けではなく、共同体の「秩序」と深く結びついていた経済。共通利益をみんなで満たしあう財政への具体策を示し、基本的サービスを税で担う「頼り合える社会」を提言。貯金ゼロでも不安ゼロ、老後におびえなくてすむ社会に!
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商品情報
- 著者
- 井手英策
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社インターナショナル
- 書籍発売日
- 2020.06.10
- Reader Store発売日
- 2020.08.28
- ファイルサイズ
- 2.2MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (7件のレビュー)
-
同じ著者の本を読んだので続いて。
主張されている内容に特に変わりなし。
私の感想も特に変化なし。
頼りあえる社会に生きたいと願うし、それが達成出来るのであれば高負担もやむなしという事は理解出来ます。投稿日:2023.05.21
本書では、財政をフル活用することで国民に対して無差別に「ベーシック・サービス」(医療、教育等)を提供し、それによって各人が安心・安全な生活を送れるようにすることを提唱しています。そのためには消費税を2…0%くらいにまで引き上げる必要があるとのこと。著者の主張が本当に効果的かどうかは別にして、感じた点を列挙します。
まず、本書における新自由主義批判は、カール・ポランニーの思想を焼き直して日本の特殊な状況にあてはめようとしている印象を受けたこと。その意味で日本が米国などと異なる点についての解説は有効だと感じました。他方、著者が主張する「ベーシック・サービス」とは、ジョン・ロールズの基本財の「財」をサービスにしたものであって、特に目新しいものではないこと。そう考えると、ロールズに批判を加えたアマルティア・センの主張が頭をよぎるわけです。つまり、ベーシック・サービスを国民全員に無差別に提供しますよ、といっても、それを行使する能力(ケイパビリティ)には当然差があるわけで、ケイパビリティの高い人ほど良いサービスを受けられることになるということで、ベーシックサービスの提供、だけでは片手落ちだということです。
最後に、本書で大きな違和感を持った箇所として、著者が財政を互酬の視点から論じていることです。互酬とは二者間の関係が対等であることが大前提であって、税金を取られる側と徴収する側に対等な関係性があると考えるのはあまりにナイーブでしょう(たとえ西側諸国の政府は国民のhumble servantだと建前上は言っていたとしても)。財政とは「略取と再分配」なのです。本書の中では「公・共・私のベストミックス」という概念が提唱されていますが、公が過半、いや7割くらいになることをもってベストミックスと呼んでいるのではないかという印象を持ちました。また財政学者である著者が財政のフル活用を主張しても何の驚きもなく、もしそこを主張するのであれば、市場原理主義との比較だけでなく、他の選択肢と比べて財政が格段に良い理由を丁寧に述べるべきでしょう。なぜコミュニタリアニズムよりも良いのか、あるいはシェアリング・エコノミーのように、純粋贈与と市場経済のハイブリッド型のようなスタイルよりもなぜ財政を活用するほうが良いのか。私は個人的には財政よりもシェアリング・エコノミーの発展に期待を持っており、新自由主義を終わらせるのは財政ではなくデジタルテクノロジーだと思っています。続きを読む投稿日:2023.05.06
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