海の向こうから見た倭国
高田貫太(著)
/講談社現代新書
作品情報
倭も百済、新羅、加耶などの朝鮮半島の国々の歴史も従来は、すでに国が存在することを前提として語られてきました。しかし近年の日韓両国の考古学の進展により、事実はそれよりも複雑だったことが明らかになってきました。交易の主役は「中央」ではなく様々な地方の勢力だったのです。倭一国だけを見ていては見えないことが、朝鮮半島という外部の目から見えてくる。歴史研究の醍醐味を味わうことのできる1冊です。
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商品情報
- シリーズ
- 海の向こうから見た倭国
- 著者
- 高田貫太
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2017.02.20
- Reader Store発売日
- 2017.02.24
- ファイルサイズ
- 37.5MB
- ページ数
- 304ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (12件のレビュー)
-
著者は岡大史学科大学院を出た後に韓国の慶北大学を出ている。日韓両方の目から古代を見ることが出来る若い研究者である。ここまで突っ込んでわかりやすく、日朝関係特に朝鮮半島の考古学成果を描写した本を私は初め…て読んだ。私の興味関心は、弥生後期なので、そこに絞って学んだことをメモする。
◯魏志東夷伝韓条では、3C、弁韓では鉄を生産し、朝鮮東北部と共に倭国が鉄を求めてやってきていたとある。また、楽浪郡と帯方郡にも供給していた。このルートは、楽浪郡ー弁韓ー倭国ルートにもなっただろう。
◯魏志倭人伝の対馬・壱岐記述でも「南北市てき」(北九州と朝鮮と交易)。
◯鉄交易は弥生中頃(朝鮮初期鉄器時代)から始まる。トンネネソン遺跡(釜山)では鉄さいや鉄片共に多くの土器が弥生土器かそれを真似たものだった。勒島(ヌクト)遺跡(弥生前期末ー後期初)でも全体の一割が弥生系土器。ここでも鉄器製作の跡あり。
◯蔚山達川(タルチョン)遺跡では、弥生人が鉄鉱石を採掘した所に来た痕跡がある。達川遺跡は初期鉄器時代の住居、穴、壕、柵などが確認。採掘場から一部北九州弥生系土器確認。他にも楽浪郡系土器、鉄鉱石が出土。
◯以上の弥生系土器は、BC4-AD1前半かBC2中頃-AD1前半か、まだ決着ついていない。
◯勒島はAD1より衰退して、AD2には役割を終える。AD1後半より、弁韓や辰韓の有力者の墓に北九州の青銅器が副葬される。特に金海。楽浪郡からもたらされた文物も、AD1後半には金海(狗邪国)に集中する。衰退期には、北九州だけでなく、中部九州や瀬戸内、山陰などの土器も出土するようになっていた。
◯金海良洞里(ヤンドンニ)遺跡は、AD3まではこの国の中心地だった。この頃、奴国や伊都国が、壱岐や対馬をコントロールするようになり、楽浪郡や朝鮮半島との交易を主導。勒島はそのルートから外れたから衰退したのか。
◯海人たちの交易ルートが最初にあり、それを有力な国が取り込んでゆくように金海ー北部九州ルートが整備され、それを西日本もそのまま使うようになった(←北部九州にとり、西日本は国ではなく、個人だったのだろうか)。このネットワークは神奈川や長野まで続いていた痕がある。そしてこれが魏志倭人伝の「南北に市てき」に記録された。
◯古墳時代を迎えたAD3後半になると、福岡市西新町で大きな港ができる。住居は竈(列島への普及よりも1世紀以上早い)をもち、多量の朝鮮半島系土器出土、列島各地の土器出土。渡来人は多量にいただろう。
◯西新町の周りには、大規模な集落(比恵・那珂遺跡群)、鍛治工房(博多遺跡群)、
玉作工房(潤地頭給遺跡)が展開。
◯背景にAD3中頃に成立するヤマトの倭王権の展開があった(かもしれない)。
◯AD3後半に金海は、国際貿易港を整備(金海官洞里、新文里遺跡)。既に遺跡公園みたいなものが出来ているらしい。行って見たい。港(桟橋、道路、倉庫、井戸)と、それを管理する生活場所があった。馬韓土器と北九州・山陰の土師器があった。そこから中央に向けて鉄関連の遺跡・工房が分布。中央には王宮(鳳凰台遺跡)、王族墓地(大成洞古墳群)、近くにも港はあり船の部品は出土。AD4には、鉄生産と海上貿易が一体で運営。この頃には倭王権と金官国が重要なパートナーになっていただろう。
◯西新町は、意外にもAD4になると、急速に衰退し、AD4後半に消滅。それと連動するように、沖ノ島で祭祀が始まる。金海は更に栄える。
◯266年以降、倭国が中国に派遣した記録はなくなる。AD4以降、楽浪・帯方が高句麗に滅ぼされると、おそらく中国との直接関係は絶たれる。それもあって、金海との交易は重要だった。
2011年と2012年の夏に、私は生涯最長の韓国旅行をした。特に、弁辰をよく歩き、例えばここでも扱われている金海の鳳凰台や大成洞古墳群、勒島遺跡などを訪ねた(金海良洞里も後に訪ねる)。釜山大学博物館など、さらには普州慶尚大学では、大学の先生たちからも情報を頂いたりもした。また、有名な古墳群はたいてい歩いた。考古学の先生かとよく聞かれたけど、実際は単なる考古学ファンに過ぎない。単なる素人がここまで来るのが珍しかったのだと思う。この本は、そこから得た情報を上書きし、さらには新しい視点を貰うものであった。話題の中心は古墳時代なので、私のここでの引用は序章にすぎない。しかしほとんど空白の紀元前後の日朝関係を埋めるものは、これから出てくる遺跡でしかあり得ないのであるから、著者には積極的に速くこれらの成果のわかりやすい紹介を期待したいと思う。
2017年4月26日読了続きを読む投稿日:2017.05.04
3世紀から6世紀の倭と朝鮮半島の関係を朝鮮の視点から、日韓の考古学上の成果をふんだんに活用して分析している。特に、朝鮮半島側の古墳の状況や研究者の視点を紹介してくれているのが新鮮。
これによると、「…倭という一つの強大国があって中央集権的に朝鮮半島と対峙していた」というステレオタイプの世界観では全く不十分であることがわかる。特に、時代が遡れば遡るほど、朝鮮半島(新羅、伽耶地域、百済、栄山江地域)と倭(九州北部、吉備、大和)が輻輳的に関係を築いていた。
時代が5世紀に下ると、朝鮮半島側は高句麗の南下に対して百済や新羅が周辺を統合しつつ、倭と友好関係を結ぶことを思考し、倭も先進技術の取り込みのため、関係を構築していく中で、吉備や九州を統合した形で倭王権が交易を独占する形になってきたというもの。また、今と比べて国の概念も曖昧だったのだろうが、筆者は後書きにおいて以下のとおり指摘する。
・古墳時代(3世紀後半〜6世紀前半)の倭では、倭王権を核としながらそれぞれの地域社会も拠点となる、錯綜した可変的なネットワークが広がっていた。それは、朝鮮半島(少なくとも中南部)にまでのびていて、そこでも同じようなネットワークが広がっていた。その環海地域を取り巻くネットワークを活用しながら、倭王権と地域社会は時には協調して時には競合して、朝鮮半島のさまざまな社会と政治経済的な交渉を重ねた。
↑の好例が6世紀前半の磐井の乱であろう。筆者は、倭王権が北部九州の港を直轄化するとともに、新羅の圧迫を受ける伽耶を助けようとしたことに対し、新羅は磐井に賂を送って倭を牽制させ、磐井も港の直轄化に反応して倭を見限ったと見ている。まさにこのような『錯綜して可変的な』ネットワークが、(今のような厳密な国境意識なしに)日本でも朝鮮でも広がっていたということであろう。
古墳の考古学的な解説の部分を読むのがやや苦痛だったが、全体として極めて説得的な本だった。
続きを読む投稿日:2022.10.09
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