羽生善治 闘う頭脳
羽生善治(著)
/文春文庫
作品情報
1996年2月、史上初の七タイトル独占を達成。通算タイトル獲得90期(史上1位)。1991年以降24年にわたり、少なくとも一冠以上を保持。通算対局数500超、通算勝率7割超の双方を満たす唯一の棋士――将棋棋士、羽生善治さんが打ち立ててきた記録の一端です。いまなお勝ち続けている彼の発する言葉には、将棋の枠には収まりきらない深い含蓄に満ちています。【主な内容】1. 巻頭ロングインタビュー「勝つための6つのプロセス」2. 羽生善治の思考力〈覚える〉と〈発想する〉のスイッチを切り替える【対談】「頭の使い方」にはコツがある ×池谷裕二(脳研究者)【講演録】「長考に好手なし」決断力を磨くために3. 羽生善治の「勝負力」――七冠プレイバック1995-19964. 羽生善治の「発想力」眠っていた力が目覚めるとき ×小川洋子サムライ魂と勝負の心 ×為末大人間の理を越えて ×朝吹真理子5. 羽生善治の「人間力」「垂直」な人間関係、「水平」な人間関係 ×山折哲雄「将棋はゲーム」と言い切る革命児 大崎善生6. 羽生善治の「持続力」調子の上がらぬ朝にこそ、すべきことがある 高川武将若い世代に勝ち続ける思考法 聞き手・後藤正治特別対談「考える力」と「捉える力」 ×沢木耕太郎特別対談 「七冠制覇は自分の力で成し遂げた気がしませんでした」 × 阿川佐和子※2015年3月配信のムック電子版に巻末の阿川佐和子氏の対談を加えた、文庫の電子版です。※
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商品情報
- シリーズ
- 羽生善治 闘う頭脳
- 著者
- 羽生善治
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2016.03.10
- Reader Store発売日
- 2016.04.22
- ファイルサイズ
- 2.9MB
- ページ数
- 384ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (21件のレビュー)
-
羽生善治 闘う頭脳
著:羽生 善治
文春文庫 は-50-1
対談集と関連するエッセイでできている不思議な書です
巻頭で勝つために必要な6つのプロセスが提示されます
それは
①目標設定
②情…報処理
③自己管理
④コミュニケーション力
⑤大局観
⑥モチベーションの維持
そしてそれに続く7つの力
①思考力
②勝負力
③発想力
④人間力
⑤持続力
⑥考える力
⑦捉える力
羽生をいろいろな角度から眺める書であると思いました
気になったのは以下です。
・試行錯誤によって、自分の戦法の精度を上げていくというアプローチを繰り返しました
・情報過多な時代では、自分にとって必要な情報、知識というのは、日々刻々と変わってゆくものです
だから、迷ったら大胆に捨ててしまい、必要なタイミングで拾いあげればいいのです
・対局の現場で、棋士は「読み」と「大局観」の2つを駆使しています
・将棋では、はっきりと答えがでないものについて考え続ける能力が必要とされています
・エジソンの有名な言葉に、「1%のひらめきと、99%の努力」というものがあります
・うまく能力を伸ばして行くためには、スイッチを次々に切り替えることが必要なのだと思っています
・知識の積み上げの結果つけられる「知恵」の一つに「直感力」があります
そしてもう1つの大切な「知恵」が、「見切り」です
・つまり、将棋の勝負においては、新たな判断の選択肢を「得る」よりも
まさに思考を捨ててしまうこと、判断をある段階で断ち切って決定する「見切り」のほうがむしろ大事なのです
・将棋で一番大変なのは、似て非なる局面をたくさん覚えておかないといけないことなんです
覚えてもちゃんと理解し、その後、意味あるものとして効果的に使えなければ意味がない
わすれた時に、自分がどれだけ理解していたかが分かります
・「ひらめき」:たとえそれが1秒にも満たないような瞬間的な出来事であったとしても、なぜそれを選んだのか、あるいは選ばなかったのかをきちんと論理だてて説明できるものです
・逆に「直感」とは、何故だかわからないけれども、これはやってはいけないとか、こうしなければならないとかというように、理屈では説明することができないものです
・「木を見て森を見ず」とは、部分ばかり見ていて、全体を把握していない、理解していないことの例えとしてよく使われます
・「大局観」は、その逆に、全体を見た時に、今どうなっているのか、どういう流れでここまで来たか、あるいはどういう方向にむかっているのかというような抽象的な、大雑把な概念として捉える見方です
・将棋の世界には、「長考に好手なし」という格言もあります
・連続性や法則性、規則性のあるものは結構簡単に大量に覚えることができます
・ミスを重ねないためには、一息つくことも大事で、例えばちょっとお茶を飲むとか、外の景色を眺めるとか、僅かな時間でいいから一息つくことで、元の冷静さを取り戻すことができます
・もう一つはその瞬間に集中することです
・反省はするけれども、後悔はしない
・プロはスランプになるのが当たり前で、むしろ好調を維持するほうが難しいと思いますね
・師弟とはたんなる上下関係ではない、ということですね
・最善手というものは、人間が考え出すものではなくて、実はもうあらかじめ盤面に提示されているものであって、「手を読む」というのはそれを発見する作業なのです
・後で、詰むか詰まないかの判断を誤ったことは反省しなきゃいけないと思ったんです
つまり、詰んでいて、それを詰ませられなくて負けたならいい、という言い方は変ですけれど、
そもそも詰みのない局面だったわけで、前提の判断が誤っていたのです
目次
はじめに
巻頭ロングインタビュー 勝つための6つのプロセス
特別収録 エッセイ 原点の頃 羽生善治
羽生善治の思考力
羽生善治の勝負力―七冠プレイバック1995‐1996
羽生善治の発想力
羽生善治の人間力
羽生善治の持続力
特別語り下ろし対談 「考える力」と「捉える力」×沢木耕太郎
公開トークライブ 七冠制覇は、自分の力で成し遂げた気がしませんでした×阿川佐和子
ISBN:9784167905835
出版社:文藝春秋
判型:文庫
ページ数:384ページ
定価:660円(本体)
発売日:2016年03月10日第1刷
発売日:2016年05月25日第2刷続きを読む投稿日:2024.04.10
今最も有名な将棋棋士といえば、藤井聡太。しかし、棋界のレジェンドと呼べるのは羽生善治を筆頭に長い将棋史の中でも数人しかいません。羽生が登場したとき、100年に一人の逸材といわれていましたが、50年も経…たずに藤井聡太が現れたのは、AIの功績かもしれません。
羽生善治が初めて打ち立て未だに破られない記録は数えきれないほどあります。その羽生をして、破られていない大山康晴の記録があります。その1つが、タイトル戦連続登場の記録です。羽生23期(3年)に対して大山50期(10年)。昔はタイトル数も今より少なかったので、よりすごい記録ですね。
とはいえ、その怪物大山の記録をことごとく塗り替えたのが羽生善治です。
そんな天才、羽生善治の思考方法や素顔に迫ろうとする企画本です。各対談を通じて、羽生が決して将棋バカではなく様々な好奇心と興味を示し、自分の言葉で語る姿は社会人としても立派な人物だとわかります。
奥さんとの馴れ初めやデートなどプライベートな部分や、対局の夕食休憩には1時間離れたレストランでのサンドイッチを食べるルーティーンだとか、勝ちの見えてきた終盤での手の震えについても語られます。
前人未到の記録を作ったということもさることながら、羽生以前には「将棋は人間の総合力」という「道」としてのイメージを、単なる「ゲーム」だと一人で刷新した功績は「年功序列」や「盤外戦」とは決別した現代将棋の基礎を作ったのではないでしょうか。もちろんその過程では、A級順位戦初参戦の羽生が4冠タイトル保持者ではあったが順位戦上位の中原や大山の上座に平然と座ったことで叩かれたりもしましたが、きちんと勝負に勝つことでその後は誰も何も言わなくなったのが、1993年の「上座事件」です。
また、チェスのボビー・フィッシャーが日本で拘束されたときに、嘆願書を小泉首相宛に出すなど行動の人でもありました。
羽生善治(はぶ・よしはる)
1970年埼玉県所沢市生まれ。二上達也九段門下。1985年、プロ四段になる。史上3人目の中学生棋士。1989年に初タイトルとなる竜王を獲得。1994年、A級初参加で名人挑戦者となり、第52期名人戦で米長邦雄名人を破って初の名人に。将棋界の記録を次々と塗り替え、1996年には谷川浩司王将を破って、前人未到の七冠独占を達成。どんな戦型も指しこなすオールラウンダー。2014年には4人目となる公式戦通算1,300勝を史上最年少、最速、最高勝率で達成。2017年、第30期竜王戦を制し、すでに保持していた永世名人、永世王位、名誉王座、永世棋王、永世王将、永世棋聖を合わせ、「永世七冠」の資格を獲得した。最近は将棋界だけでなく、AI知能との未来についての対談・取材を精力的にこなす。広く財界の人々との対談からその考え、生き方を広めていく活動も続けている。将棋界のスーパーヒーローである。続きを読む投稿日:2022.06.06
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