賊軍の昭和史
半藤一利(著)
,保阪正康(著)
/東洋経済新報社
作品情報
薩長(さっちょう)史観に隠された歴史の真実!
“官軍(かんぐん)”が始めた昭和の戦争を“賊軍(ぞくぐん)”が終わらせた!!
鈴木貫太郎(関宿)、石原莞爾(庄内)、米内光政(盛岡)、山本五十六(長岡)、井上成美(仙台)・・・・・・など、幕末維新で“賊軍”とされた藩の出身者たちの苦闘を通して「もう一つの昭和史」を浮かび上がらせた異色の対談。
奥羽越列藩同盟など、幕府方につき新政府軍(官軍)抵抗した藩は、維新後「賊軍」としてさまざまな差別を受けた。その藩士の子息たちは、陸軍、海軍で薩長閥によって非主流派に追いやられ、辛酸をなめることになる。
やがて昭和に入り、日独伊三国同盟に反対した海軍の米内、山本、井上の賊軍トリオは、主流派である薩長閥に抗しきれず開戦を迎える。
そして、“官軍”が始めた無謀な戦争により滅亡の瀬戸際まで追い込まれた日本を救ったのは、鈴木貫太郎、米内光政ら賊軍出身者だった――。
新視点からあの戦争の真相を読み解き、いまに続く“官軍”的なるものの正体を明らかにする。
★著者の言葉
半藤一利
「あの戦争で、この国を滅ぼそうとしたのは、官軍の連中です。もっとも、近代日本を作ったのも官軍ですが・・・・・・。
この国が滅びようとしたとき、どうにもならないほどに破壊される一歩手前で、何とか国を救ったのは、全部、賊軍の人たちだったのです。」
保阪正康
「太平洋戦争を批判するとき、実は薩長政権のゆがみが継続していた点は見逃せないのではないでしょうか・・・・・・。
薩長閥の延長にある軍部を(賊軍の官軍的体質といったものまで含めて)批判するという視点がそのまま持ち込めるように思います。」
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この作品のレビュー
平均 3.4 (10件のレビュー)
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司馬遼太郎が書かなかった、書けなかった?昭和史。迫りくる欧米列強と対峙し、明治維新後、日清・日露を官軍の側から描けた司馬史観。
官軍・賊軍の確執、そして、統制派、皇道派と続く、昭和の軍閥の混乱。司馬史…観では取り上げられない史実だ。
昭和史に詳しい、半藤、保坂コンビが、官軍・賊軍がどう昭和の戦争に突き進んだのかを解明しようとした著作だ。
基本的には、吉田松陰の思い描いた東アジア構想を具体化しようとした永田鉄山、石原莞爾。
そして、長州の天皇の権威を利用した、錦の御旗が、統帥権干犯へと繋がっているとの考え方が示されていた。
敗戦処理に携わったのは賊軍を出自とする軍人だ。
明治憲法下の最後の首相鈴木貫太郎が居なかったらポツダム宣言の受諾がおくれ、国民不在の戦い方をした官軍的体質で、日本という国はもっとひどく焦土と化していただろうちうのが二人の見立てでありました。続きを読む投稿日:2015.09.15
このレビューはネタバレを含みます
毎度お世話になっております、半藤さんと保阪さんの対談形式で、
レビューの続きを読む
昭和史を官軍、賊軍の視点で描く一冊。
お二方の著書をよく読ませてもらうのは、
複雑な昭和史をわかりわすくまとめているからなのですが、今回も…わかりやすかった。
鈴木貫太郎って何でこんな評価分かれるんだろうなとずっと思ってたけど、
「ニ・ニ六事件で殺されかけて、とにかく生きることを優先し、戦争を終わらせるために生き延びた。だから戦争賛成側にも恨まれないようにどっちつかずの態度をとった」という
本書での視点はなるほどだなぁと。
斬新な視点だなと思いました。
今だからこそ、そんな昔の出身地で官軍賊軍なんて…と思うけど、それがアイデンティティであり、自分を構成する一部だったんだもんな。
特に海軍は人数が少ない分、それが顕著だったそうで、鈴木も、三羽烏の米内、井上、山本五十六も冷遇されている。
逆に陸軍は永田鉄山、東條英機あたりから「反長州閥」の流れが出てくるんだけど、
それにより皇道派や統制派の戦いが生まれるという…。
いずれにせよ官軍賊軍が昭和にまで影響を及ぼしたことを実感する一冊でした。
それにしてもお恥ずかしながら、今村均という人に関しては全然知らなかった。
こんな清々しい軍人がいたとは。
また別著で読もう。
続きを読む投稿日:2022.09.24
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