わたしの出会った子どもたち
灰谷健次郎(著)
/角川文庫
作品情報
17年間の教師生活を通じて知った子どもたちのやさしさ、個性の豊かさ。児童雑誌「きりん」に掲載された、底抜けに明るくユニークな子どもの詩の数々。どんな時も、子どもたちが自分を支え、育んでくれた――。「兎の眼」「太陽の子」「天の瞳」の著者・灰谷健次郎が綴る、子どもの可能性の大きさ、そして人間への熱い思い。限りない感動に満ちた、灰谷文学の原点。
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商品情報
- シリーズ
- わたしの出会った子どもたち
- 著者
- 灰谷健次郎
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 1998.06.01
- Reader Store発売日
- 2014.09.25
- ファイルサイズ
- 1.2MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (18件のレビュー)
-
・たとえば、朝、養護学校にいく為に、スクールバスが迎えにくる場所まで歩く数百メートルの道のりを見るだけでいい。
かの女はたくさんの生き物を友達にしていることを知るだろう。
仕出し屋の猫に、朝のあいさつ…をする。残飯を食べ過ぎて体が酸性になった猫は機嫌が悪い。そんなとき、かの女は笹の葉を猫にやるということを知っている。
かの女は一休みする。
やはり木の葉に止まって一休みしているハチが、体内の余分の水分を口から出すのを見ることがある。
その小さな水玉は朝日を浴びて、このうえなく美しい。
かの女はそれを、ハチのシャボン玉吹きといっている。
マツバボタンにも、朝のあいさつをする。
「おはようさん」
といって、一本のオシベに触れる。すると、触れていない他のオシベまで、かの女の方に傾いてあいさつをする。そういう修正をかの女は知っている。
言語障害をともなっているかの女の「おはようさん」は、もちろん他の人には「おはようさん」とはきこえない。
しかし、ぼくはこの朝のあいさつの中に、生命の充実を感じる。言葉にならない言葉の中に優しさがこめられていることを知る。
たった数百メートル歩くあいだに、ずいぶんたくさんの生命を見つけ、そして、それと交感している。
そういう子どもに、ぼくたちは
「あんな子、生きとって何の楽しみがあるんや」
という言葉を投げつけることによって、自ら非人間となったのだ。
スピードというものをとりこんだぼくたちは、かわりに失ったものがいくつもある。
「あんな子、生きとって…」という言葉はそっくりそのまま、かの女からぼくたちに向かって投げ返されいる言葉なのだ。
ある日、ぼくは重大なことを知る。
かの女をプールに連れていったときのことである。
危険がいっぱいの子だからと辞退する親を説得して、ぼくはかの女をおぶって連れていったのだった。
水着に着替えさせ、水に入れると、かの女は嬉々として手足を動かすのである。
意外だった。
そういう子だから、水は恐がるものだとばかり思っていた。ぼくはいくぶん拍子抜けしたような気分にもなったけれど、かの女の喜びがぼくにも伝わって、ぼくは、胸が熱くなった。
プールの端から端へ、かの女の体を支えてぼくは進んだ。
顔に水がかかると、いっしゅん息をつめ、それから何かおいしいものでも食べたように、ぷああんと満足げに息を吐いた。
二十五メートル進んで、かの女はプールサイドに手をかける。かの女は振り向いて笑った。ほんとうに美しい笑顔が、ぼくの顔を見上げている。
信じられないことだった。
麻里ちゃんが笑った。麻里ちゃんが笑っている。
ぼくの胸に熱いものがこみあげる。
そのとき、あることに気がついて、ぼくはぎょっとする。
ぼくには今、かの女の笑顔が笑顔として見えている。しかし、かの女と何のつながりもない人は、かの女の笑顔が笑顔に見えないのだ。かつてのぼくがそうであったように―。続きを読む投稿日:2014.01.04
なぜか本棚にあった本で手に取った。母が好きだった本で実家から持ってきたのだったろうか。子育てに悩んだときに手に取った。自分の悩みが吹き飛ばされるような感覚があった。
投稿日:2023.06.04
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