おかしな二人
井上夢人(著)
/講談社文庫
この作品のレビュー
平均 4.2 (19件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
おかしな二人は,岡嶋二人の自伝的エッセイである。もっとも,二人の作品ではなく,岡嶋二人のうちの一人である井上夢人の作品である。井上夢人と徳永諄一の出会いから,乱歩賞を受賞するまでのストーリー。そして,職業作家としての苦悩の日々と,岡島二人の解散までのストーリー。これらのストーリーが,リアルに,そしてナマナマしく書かれている。
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岡嶋二人の出会いから乱歩賞を受賞するまでの盛の部は,将来への不安を感じながらも成長していく二人の話である。徳山諄一の貯金を切り崩し,共通の知人であるダダと三人で会社を立ち上げ,わずか11か月で,会社をたたんでしまう。会社を経営していたわずかな期間の間の,二人の中で交わされた無駄話が,岡嶋二人の小説作りの土台となったという。乱歩賞の存在を知り,小説を書こうとする二人。どうやって小説を書いたらいいか分からない二人は,小説のタイトルだけ考えたり,連想ゲームをしたり…。その後,本格的に乱歩賞を目指す。「くたばれ巨象」,「探偵志願」,「あした天気にしておくれ」という作品を経て,「焦茶色のパステル」で,二人は7年かけて,実際に乱歩賞を取ってしまうのである。ここまではまさに痛快なストーリー。ここで終わっても「おかしな二人」は傑作だが,ここから,岡嶋二人が崩壊に向かう衰の部が続くのである。
衰の部では,乱歩賞を受賞したあと,岡嶋二人がプロの小説家としてどれほど苦労したかが,恐ろしいほどになまなましく書かれているのである。
岡嶋二人の不幸の原因の一つは,井上夢人が,執筆という作業を担当していたこともあり,メキメキと力を付け,成長していったのに,徳山諄一は,それほど成長できなかった点にあるのだ思う。いっそのこと,徳山諄一が井上夢人のマネージャーのような立場になってしまえばよかったのだろうが,わがままで頑固な井上夢人はそれを許さない。それどころか,デビューするまでの,アマチュア時代の岡嶋二人の関係を取り戻そうと必死になるのである。井上夢人のわがまま,頑固,そして理想主義が,もう一つの岡嶋二人の不幸の原因だろう。
徳山諄一から,井上夢人の気持ちが離れていく様を読むのは,岡嶋二人のファンとしては辛い部分もあった。しかし,どういうわけか,井上夢人の方に感情移入をしてしまったので,おかしな二人を読むうちに,「もっと早く解散してしまえ」という気持ちがあったのも事実である。
岡嶋二人の作品は,どれも水準が高く,好きなのだが,一番好きな作品は,99%の誘拐であり,二番目に好きな作品がクラインの壺である。どちらも傑作だが,ほとんど井上夢人一人で作り上げたクラインの壺という作品より,岡嶋二人の最後の合作といえる99%の誘拐の方が好きなのだ。
井上夢人名義の作品も好きなのだが,いつか,岡嶋二人の新作を読んでみたいという気がする。
いろいろ考えさせられ,何より小説を書きたいというような気持ちにさせられる「おかしな二人」という作品は,いうまでもなく名作。★5で。投稿日:2015.09.07
昨年、岡嶋二人を知り、『99%の誘拐』『クラインの壷』『焦茶色のパステル』『ちょっと探偵してみませんか?』の4作品を読んですっかり虜になってしまいました。
二人の活動を振り返った本書には、未読の作品の…ネタバレも含まれると思われたので、読むのをためらっていたところもあったのですが、読み終えた今ではいいタイミングで読むことができたと思っています。
二人の出会いと別れの経緯が生々しく描かれていて、時に胸がつまるほどせつない部分もありましたが、読後感は爽やかでした。二人の天才が駆け抜けた13年間の歴史は、一人の創作者とは違う苦悩があって、まさに岡嶋二人でしかありえないエッセイです。続きを読む投稿日:2019.09.21
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