鈴木敏文 孤高
日経ビジネス(編)
/日経BP
作品情報
日本を代表する巨大流通コングロマリット、セブン&アイ・ホールディングス。長く同社を率いてきたカリスマ経営者の鈴木敏文氏が、2016年5月に、経営の表舞台から退いた。
鈴木氏が退任に至るまで、異例の事態が続いていた。中核事業会社であるセブン-イレブン・ジャパンの社長人事に端を発した“お家騒動”は、「物言う株主の暗躍」「創業家の反撃」「取締役会内部の分裂」「カリスマが求めた世襲」など、さまざまな形で報じられた。
だが、日経ビジネスは改めて問いたい。鈴木敏文氏の退任とは、そんな近視眼的な言葉で済ませてもよいものなのか。日本にコンビニエンスストアという新しいインフラを生み出し、メーカーが支配していた流通業界の力関係を逆転させた立役者が、経営者・鈴木敏文氏である。
一人のサラリーマンは、どのようにカリスマ経営者となり、巨大な流通コングロマリットを率いるようになったのか。そしてどんな壁に直面し、長い年月をかけて築き上げた「帝国」を去ることになったのか。
本書では2つのアプローチで真相に迫った。
1つは、鈴木氏本人の肉声である。日経ビジネスは鈴木氏の退任以降、述べ10時間に渡って本人への単独インタビューを重ねてきた。鈴木氏自身がその半生を振り返りながら、真相を語った。
もう1つは、セブン&アイの「2人のトップ」を知ることである。鈴木氏本人と、イトーヨーカ堂創業者でありセブン&アイのオーナーでもある伊藤雅俊氏。日経ビジネスは1970年代以降、40年以上に渡って伊藤氏と鈴木氏の取材を重ねてきた。
戦後の日本を変えたカリスマ経営者の半生を、本書で総括する。
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商品情報
- シリーズ
- 鈴木敏文 孤高
- 著者
- 日経ビジネス
- 出版社
- 日経BP
- 書籍発売日
- 2016.12.22
- Reader Store発売日
- 2016.12.26
- ファイルサイズ
- 10MB
- ページ数
- 376ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (3件のレビュー)
-
おもしろかった、一気に読めました。
なぜ、鈴木はやめなければならなかったのか。その答えを求めてこの書を手にとりました。
流通王「鈴木敏文」の53年間の軌跡をつづる、日経ビジネスの残した記録が本書です…。
幾多のライバルである流通企業を倒し、コンビニという巨大なインフラを構築した彼は
オムニという次の夢半ばでその舞台をおりなければならなかった。
気になったのは、次です。
・これからの大きな問題は、オムニチャネル(ネット事業と店舗の融合戦略)です。オムニチャネルに対してどれだけ力を入れてくれるか。それがきちんとできれば、我々の会社は小売業として日本で一番、そして世界で何番目かに成長すると思います。
・コンビニ創業、銀行業への進出など、周囲の猛反対を押し切って始めた事業が大きな成功を収めてきたのは、鈴木の類まれなる先見性と、常に消費者目線で変化に対応し続けようという、執念ともいえる揺るぎない経営哲学があったからだ。
・創業者と雇われ社長という立場をわきまえ、無私の姿勢で仕事に打ち込み実績を重ねてきたことで、伊藤の信頼を得てきたとの思いだ。
・「もちろん、僕はずっと自分を無くそうと努力してきた。だから、伊藤さんも僕をずっと使ってこられたのだと思う」
・鈴木は他人の反論を許さないほど理詰めで考え抜き、強烈なトップダウンで実行する
・発想というものは、他人の意見を聞くことじゃないんだと、自分の人生を振り返ってみて僕は思う。必要なのは、ボトムアップではなく、リーダーシップですよ。
・伊藤さんは我慢強いんですよ。まあ、慎重という表現もできるよね。
・この範囲までやってダメだったら諦めますと、きっちり宣言するわけ。そうすると、じゃあ、まあ、となるんだ。
・鈴木の伊藤評は、革新に挑む自らの姿とは対照的に、保守的で慎重な存在として語られる。ただし二人が共有する価値観もあった。それが金銭感覚と、真面目さだ。
①伊藤さんの偉いところは、借りたものは必ず返さなければならないという金銭感覚をもっていた。無理な融資に依存することがなかった。
②伊藤さんのよさは、真面目さなんだ。今、うちの社風が真面目なのは、伊藤さんから引き継いだものです。
・鈴木が描いたFC方式による小型店戦略は、流通業界に革命をもたらした。創業者の伊藤が信条としてきた「持たざる経営」を極めたのである。
・中内功が率いるダイエーに象徴されるように、当時は借入に頼って不動産を取得し上昇する資産価値を担保に積極出店を続けるスーパーや百貨店が多かった。一方、伊藤は、リース方式でヨーカ堂を出店することで初期投資を抑え、高収益の財務体質を築いた。
・鈴木は、FC方式で小型店を組織し、メーカーを対立する相手ではなく、「チーム」として取り込んだ。その最たるものがFCの本部と加盟店オーナーで利益を分配する方法、つまりロイヤルティーに関する考えだ。
・セブンイレブンは当初から、売上高に対する歩合ではなく、本部と加盟店で粗利を分配する方式を採用。それは、米セブンイレブンに学んだ、本部と加盟店が事業を共同経営するという思想だった。
・創業間もないセブンイレブンは店舗数が少ないうえに店舗が小さく、問屋からすれば、取引は非効率的で積極的に組みたい相手ではなかった。が、セブンイレブンの棚に商品がそろったのは、ヨーカ堂の取引先がセブンイレブンを渋々ながらも支援したからだ。
・みんな無理と言ったけれど、いいものだったら必ず売れる。そう確信したから、今がある。
・鈴木が半生をかけて社員に浸透させてきた行動原理が「変化対応」だ。消費者視点で物事を考えるという原理原則に立ち、時代の変化に合わせて事業や商品の有り方を変え続けることを示す。
・鈴木さんは、細かいことは言わないが、妥協を一切許さない。現場は必至に考えて組織全体が強くなった。
・鈴木は、オムニチャネル戦略に、セブン&アイの今後の成長を託していた。
・いまあるネット通販のやり方のままだったら、すぐに行き詰まる。多くのネット通販なんか、実態は物流会社みたいなものでしょう
・ユニクロのようなSPAが力を増し、百貨店離れが止まらない。
・アメリカで倒産した大きな会社を再建した日本企業の事例は、セブンイレブンだけと誇らしげに言う。一方で、35年近くかけても、鈴木の思い通りにならなかった会社もある。イトーヨーカ堂だ。
・要するに、スーパーってのは、アメリカの物まねですよ
・僕も渥美先生と一緒にアメリカに視察にいったことがあるけど、意味がなかった。チェーンストアの仕組みをそのまま日本に入れてもダメだという事を再確認して帰ってきた程度だったよ。
・僕は、業革で、在庫を減らせといったんです。それまでスーパーはどこも、在庫管理なんてやっていなかった。僕が日本の流通業界で一番最初に始めたんです。
・鈴木は、単品管理の考え方をヨーカ堂にも導入。売れ残っている死筋の商品を棚から早めに排除すると同時に、売れ筋の商品にアイテムを絞り込むことで在庫を削減した。
・ヨーカ堂マンに要求されるのは、単なる礼儀正しさだけではない。商人として常に、身ぎれいでなければならない。
・ストックのない、フロー重視の経営にとって、担保は収益意外に求めようがないのだ
・お互いの利益になることでなければ長続きしないという建前は、ヨーカ堂に関する限り本音だろう。
・質を追えば、量は伴ってくると鈴木は言うが本当であろうか。
・何が売れていないかを発見して、死筋商品を排除していけば結果として、売れ筋商品が残るという発想である。
・創業者オーナーは誰もわがままで気性の激しいもの、仕える者の気苦労が多いのは当たり前。
・創業経営者がひしめく流通大手の中にあって、サラリーマン出身の鈴木は異質だ。
・鈴木は続ける「売上じゃない、利益を上げるにはどうするかを考えるんだ」
・鈴木が重視するのは、発表の上手下手ではない。発表の内容が論理的な手順を踏んでいるのかをチェックする。これを、「仮説と検証」という
・「後入れ先出し」はセブンイレブンの基本原則である。消費者は鮮度のよい商品を求めている。「後に入れた商品を先に出す」という論理である。逆に消費期限の近い商品が近くにあればお客はどう感じるだろうか。セブンイレブンにはこんな古い商品しか置いていないと思って帰っていくだろう。これでは、来店数が下がり、商品は売れ残る
・トップと現場が直接やりとりすると、間の管理職が育たないのでは ⇒ 世の中の変化は速いんだ。ダイレクト・コミュニケーションじゃないと変化に追いついていけない。
・死屍累々
①戦後トップを切ったのはダイエーの中内功さん プロ野球やったり、ホテルつくったり、いろいろ広げてダメになって、今はイオンが整理吸収しています
②長崎屋の岩田孝八さん、息子の文明さんが継いだけど、結局、拡大しすぎてダメになった。ドン・キホーテの傘下に入っている
③セゾングループの西友、西武百貨店の堤清二さん、最終的に崩壊した。残ったのは、良品計画と、セゾンカードはくらいです。西武百貨店は、そごうと一緒になってセブン&アイ・ホールディングスの子会社になりました。
④大阪のニチイ(マイカル)も結局経営破綻してイオンに引き取られた。
⑤ヤオハンの和田一夫さんも熱海から出発して、米国、中南米へ進出しましたが、結局消滅した。大型店は、ダイエーがひきとって、小型店はイオンがひきとった。
・セブンイレブンが成功できたのは、商売だけでなく、鈴木さんのような技術者の発想が必要だったんでしょうね。エンジニアのような感性と先見性。それがあったからセブンイレブンは成功した。
・トップが直接指示しなければ動かない会社なんて、いつになっても、ダメなままですよ。
・お客様の信頼を失ったら、取り戻すには相当努力しなければいけない。チェーン全体として取り組むためには、地味なことをやり続けないといけない。
・あくまでお客様に価値を感じてもらえる商品を開発しない限り、ただ値段を下げても売れないということです。
・現実には、高齢化によって食べ盛りの人口は以前から減っていて、食の消費量は人口よりも先行して減っています。衣料など他の商品にも当てはまり、消費の飽和状態がこのところずっと続いている。
・基本をしっかり教えてほしい。まずはパート教育を徹底的に見直す。
・パートのモチベーションを上げる努力をしないと不安定になる。
・今後はパートが店長や執行役員に昇進できる仕組みを導入する
・ゴールドの登場で、ますます高価格帯に触れていくPB、セブンイレブンでは強力な武器になる。だが、価格勝負のスーパーでは顧客ニーズとますます乖離していく。開発チームでヨーカ堂MDが言った、こんなものは売れないという言葉はある意味正鵠を得ていた。
・失われた10年の間、セブンイレブンの商品は魅力を失っていた
・オムニとは、あらゆる、すべての といった意味を表す英語の接頭辞で、流通業ではコンビニ、スーパー、百貨店といった全店舗と、スマホ、インターネットなどの多様なチャネルの区別なく、商品を販売できる状態のことをさす
・セブンというインフラを活用できれば、一歩も、五歩も、十歩も有利なビジネス展開ができる
■終章
・ヨーカ堂は幾度メスを入れても改革が進まず、グループの懸案として重くのしかかるようになっていた。
・ヨーカ堂の改革が進まないのは、伊藤が会社を指揮していた時代の成功体験が組織風土に沁みついているからだ。という思いが鈴木にはあった。
・ヨーカ堂の業績悪化の要因は、衣料品などの過剰在庫だった。過剰在庫を創業家が引き取って処分するという案は代替わりの創業家からは承認がもらえなかった。
・創業家と歩調を合わせて鈴木らに圧力をかけたのが、物言う株主、サード・ポイントだった。
・井阪の解任決議は、賛成が過半数に満たず、否決された。鈴木帝国は内部から瓦解した。
・鈴木ら前体制が進めてきたオムニ戦略に対して、失敗との評価を下した。
・鈴木氏談「やっぱり(セブンイレブン)をヨーカ堂にとってどうプラスにするかということしか考えてなかったから。個人でどうかということは、ほとんど考えたことがない。自分の仕事を貫徹しようということしか考えなかったんだ。」
・資本と経営の分離、もっと恰好いい言葉で言えば能力主義だよね。最も能力のある者が会社のトップに立たなければならないという意味だ。
目次
はじめに
1章 鈴木敏文、半生を振り返る
2章 鈴木と伊藤、最強の二人
3章 鉄壁のセブン帝国
終章 舞台を降りたカリスマ
おわりに
ISBN:9784822236632
出版社:日経BP
判型:4-6
ページ数:376ページ
定価:1600円(本体)
発売日:2017年01月24日続きを読む投稿日:2023.06.14
★新事実に乏しい★ほとんどが昔の記事の再掲。退任後のインタビューは全体の2割だけでだまされた感がある。退任会見で側近の顧問2人を引き連れてきた時点で裸の王様だったのははっきりしていたので、それを覆すだ…けのファクトが読みたかった。
唯一面白かったのは、「伊藤家の世代替わり」というのは、伊藤家の資産管理会社を主導するのが伊藤雅俊名誉会長の娘に代わったことを指す点。衣料品の過剰在庫を創業家に買い取ってもらい海外に寄付することで、ヨーカ堂の業績を良く見せようとしたが、断られたという。伊藤家のためというが、普通に考えれば無茶な理屈だ。この時点で普通の会社ではない。
過去の記事から、あくまで生活者の視点を貫き、供給者側の論理に安住せずにセブンイレブンを育て上げた功績はよく分かる。しかしイトーヨーカドーの再生の失敗を「過去の成功体験にしばられた」というのは単純にすぎないか。GMSとしてのビジネスモデルの変化を主導できなかったのだろう。カリスマなのは確かだろうが、たとえばイオンとの比較を読みたくなった。
続きを読む投稿日:2019.02.11
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