不正の迷宮 三菱自動車 スリーダイヤ転落の20年
日経ビジネス(編)
,日経オートモーティブ(編)
,日経トレンディ(編)
/日経BP
作品情報
三菱自動車の燃費改ざんはなぜ起きたのか。そして、三菱自動車ではなぜ何度も不正が繰り返されるのか──。
「日経ビジネス」「日経オートモーティブ」「日経トレンディ」など日経BP社の各媒体の総力を集めて燃費不正問題を検証した。
軽自動車4モデルで発覚した不正は、三菱自動車の運命と自動車産業のあり方を大きく揺さぶった。危機的状況に陥った三菱自動車を、
日産自動車が傘下に入れて救済。スズキでも燃費に関する不正が発覚し、国の制度が見直されるなど「パンドラの箱」を開けた。
不正の原因を探ると、そこには絶望の縁に立たされた開発現場の姿があった。ダイハツ工業やスズキとの燃費競争に勝とうと、目標は5度も引き上げられた。
現場の「無理だ」との声は経営陣には届かない。走行試験などを担当する技術者は追いつめられ、不正に手を染めた。
データを改ざんするための専用ソフトウェアまで開発され、不正の手口は代々引き継がれていった。
開発現場だけの問題ではない。三菱自動車はこの20年近く、経営の混乱が続いてきた。リコール隠しなどの不祥事もあり、株主や経営者が次々に変わった。
技術者が次々に会社を去り、競争力は低下していった。経営が迷走すれば現場はモチベーションを落とし、それが不正の温床となる。
本書が紹介する三菱自動車の「転落の歴史」は、そうした事実を改めて教えてくれる。
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商品情報
- シリーズ
- 不正の迷宮 三菱自動車
- 著者
- 日経ビジネス, 日経オートモーティブ, 日経トレンディ
- 出版社
- 日経BP
- 書籍発売日
- 2016.09.14
- Reader Store発売日
- 2016.09.20
- ファイルサイズ
- 7.4MB
- ページ数
- 296ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (2件のレビュー)
-
とうとう三菱自動車は、日産自動車に吸収合併されることになりました。このままでは消滅する可能性もあるので、対等合併でなく、吸収合併なのでしょう。
池井戸潤氏の「空飛ぶタイヤ」を昨年(2016)の春に読…みました、この本はフィクションとされていますが、中身を読むと、どの自動車会社のことを指しているのかが誰にでもわかります。最終的には、その会社はある自動車会社に吸収合併されることで終わっているのですが、正しく、小説通りに事が運んだようです。
それにしても、全盛時の三菱自動車の時代を知っている私にとっては寂しい限りです。パジェロという素晴らしいRVを日本市場に先駆けて投入し、一般車では走行が不安になる山道を、4WDで楽しみながら走る素晴らしさを我々に与えてくれました。
もっとも値段の高いパジェロは私は購入できないのですが、その下のクラスに新設された「RVR」は、4駆動バージョンでも当時、250万程度で購入でき、寮暮らしで新入社員だった私は、見積もりまで取って本気でローンを組んで買うことまで考えました。結局、その時に乗っていた車に、スタッドレスタイヤをつけて、年12回スキーに行く方を選んでしまいましたが。。。
それは兎も角、当時の三菱自動車は、RVだけではなく、乗用車部門でも続々と「カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、ディアマンテや、エメロードは将来結婚したら購入したいと思っていた程でした。乗用車の販売シェアも上昇して、ホンダやマツダを離して、堂々の3位、当時凋落傾向のあった日産を抜くのも時間の問題だと思っていました。
そんな三菱が20年でこのような姿になってしまいました。この本にはそこに至るまでに「日経ビジネス」が取材した内容が纏められています。数々不祥事がありながら、資金困難に陥りながら、なぜ正せなかったのか、当時似たような状況であった、日産やマツダで上手くいったのに、なぜ三菱自動車ではダメだったのか、これが書かれています。
私の受けたメッセージとしては、三菱自動車には他の自動車メーカとは異なる環境・しがらみ、があったということです。三菱グループの一員として動く必要があった、自動車部品を納入するメーカが、他とは異なっていて、自分達よりも力のある大企業であったこと、コスト高と分かりながら購入する必要があったこと、資金援助との引き換えに、三菱グループ内の天下り社員が多かったこと等が大きい要因でしょうか。
開発部が販売部よりも社内では力を持っていながらも、実験に使える研究費は、競合メーカ比較で凄く少なかったこと。これは今回の事件の根本原因となった、燃費表示の不正問題とも密接に絡んでいる様ですね。三菱では、実験よりもコンピュータを駆使した「シミュレーション」が重視されているのでしょうか。。
三菱自動車は、未だにブランド力のある日本以外の市場(アジア等)はともかく、日本では日産の指導を仰ぎながら、今までの膿を出し切って新しく生まれ変わってほしいです。また、パジェロ・RVR・ディアマンテ等の素晴らしい車を世に送ってほしいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・燃費不正の対象車は、2013年から三菱で生産している「eKワゴン」「eKスペース」、日産から受託生産している「デイズ」「デイズルークス」の4種、軽自動車を開発したことのない日産は、企画・デザインに口を出し、設計などの開発業務は三菱が担当した(p19)
・性能実験部は、設計部から依頼された走行試験を指示通り実行する職務、達成することがほぼ不可能な燃費目標は性能実験部に押し付けられた。性能実験部は、さらに立場の弱い、子会社MAEに試験を丸投げした(p27)
・2004年の2度目のリコール隠しが発覚した後も、三菱グループ三社が金融支援をすることで破たんを免れた(p48)
・最も悪質な燃費数値改ざんの対象9車種について、補償する。改ざん幅の大きい軽自動車4車種は、一律10万円、それ以外は3万円(p54)
・国交省は、2016年5月2日、三菱自動車が燃費改ざんした4車種について、燃費や排ガスの独自試験を始めた。それまでは路面や空気抵抗を示す走行抵抗値の走行をメーカに一任していた0(p57)
・トヨタの場合、製品開発が始まるのは、発売から6年前くらい。投入を決めたものは、何が何でも発売する(p70)
・三菱自動車の開発部門は、三菱重工出身者が集まって閉鎖性がひときわ強く、結果的に燃費不正の火元になった(p91)
・世界の自動車業界は、世界シェアで首位をあらそう、「1000万台クラブ」と、特定の市場や分野に特化する「200万台クラブに分けられる、日産が三菱を参加に入れたい理由のひとつ(p109)
・トヨタは2050年までに、内燃機関だけで走るエンジンをゼロにすると表明した(p112)
・中規模メーカの地盤沈下が進むのは、自動運転やITなど、新技術領域において、技術の主導権が完成車メーカから、部品メーカへ移っているためでもある。自動運転の実現や、配車サービスの普及で、車を持たない消費者が急増すると、車のビジネスが変わる(p114、117)
・実燃費は、カタログ燃費の6-7割程度、電装品をオフしたり、テスト走行パターンが、実走行とかけ離れているのが原因(p125)
・加速性能が低い三菱自動車は、上り坂で燃費が悪化したが、帰り道にバイパス中心に走行すると急激に燃費が良くなった(p129)
・日産は主力部品を自社系列から調達していたので、コスト削減の同意を取りやすかったが、三菱自動車の調達先は、三菱重工やデンソーなどの大企業が多い(p155)
・三菱ふそうは、2003年1月に三菱自動車のトラック・バス部門を分社化して誕生した、ダイムラーと一緒になっても、経営状態のよかった、トラック・バス部門は三菱側の人間に任された(p163)
・三菱自動車は先進国では存在感を失ったが、アジアを中心とした新興国ではいまだに健在である(p240)
2017年2月5日作成続きを読む投稿日:2017.01.29
決して許されるものではないが、タガが外れてしまうとこの会社に限らず不正は発生し得るとこの本を読んで感じた。
失敗から学ぶことも多い。投稿日:2023.11.20
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