るいさんのレビュー
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57
このユーザーのレビュー
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極黒のブリュンヒルデ 1
岡本倫 / 週刊ヤングジャンプ
奇をてらっているようで王道的なシナリオ構成が見事
21
研究所と呼ばれる施設から逃げる少女達を主人公が匿うことになり、持ち前の知略と友達を助けたいという勇気で困難な状況に立ち向かっていく純愛ダークファンタジー
とある理由から明日の命もわからないヒロイン達の…刻一刻と悪化していく状況を、どのように切り抜けていくのかが先の読めない作品です。
非日常に巻き込まれていく作品でよく願われる”平穏にただ明日を生きることが出来る事”という願いもあまりにもスタート地点が絶望的なので自然と彼女達を応援したくなりました。
見所はなんといってもストーリーの構成と舞台設定の練りこみ具合でしょう。作者が大体の流れは決めてあると言っているように、各所に伏線を張りつつ、小さな伏線を回収しながら大きな伏線を張っていく手腕の隙なさには感服します。
作風も岡本さんの絵によるかわいらしい女の子達のほのぼのコメディかと思えば間髪いれずにグロテスクシリアスをぶち込んでくる匙加減が絶妙で最高です。
特に魔法を使うことの出来る回数や、延命手段および日数等といった主人公側の行動制限の掛け方が非常に上手く作用しています。
これによって詰んだと思われた状況からの逆転によるカタルシスが主人公側が助かったときの安堵と相まって極上の快楽となり、それが病み付きになります。
ヤミツキです。むしろ毎週の極黒のブリュンヒルデが私の鎮死剤です(笑)
個人的にここ最近のエンターテイメントでは一番先が気になっています。一巻を買った当時は二巻が出ておらず先の展開が気になるあまり、連載してるヤングジャンプを買い始めました。
一巻から現行の卷まで一気に読める、これからの読者がうらやましい! 続きを読む投稿日:2014.04.04
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十角館の殺人〈新装改訂版〉
綾辻行人 / 講談社文庫
求めていたミステリーがここにある
11
私自身あまりミステリーを読んでこなかったのでこのジャンルの初心者ですが、早い段階からこの書籍に出会うことかができて本当によかったと思います。
最初は早く謎を解きたいと思っていましたが、謎が解明された時…は解けてしまったことがもったいないと感じてしまったことはこれが初めてです。
出来ることなら記憶を消してもう一度初めから読みたいと切実に願ってしまうほどに鮮やかな叙述トリックでした。
今でも思い返しては「あの1行」が記憶のなかに刷り込まれてしまったことが悔しくも、しかし爽快という二律背反な感情が私の中に同居しています。
外部との連絡のとれない絶海の孤島 その館でおこる連続殺人
有名で古典的すぎるこのテーマが上質な読み解くエンターテイメントとして成立しているのはやはり小説という媒体だからです。
この作品をドラマや映画といった映像化作品には出来ないでしょう。出来たとしてもこの小説を読んだときの衝撃は絶対に再現できてないはずです。
ミステリー小説の金字塔ともいえるこの作品が多くの人に愛される理由が良く分かりました。また、私にとっても愛すべき一冊となっています。 続きを読む投稿日:2014.03.29
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極黒のブリュンヒルデ 4
岡本倫 / 週刊ヤングジャンプ
奈波が一番ほしかったもの
9
この作品は今まで、主人公こと村上側の視点を軸に話が語られていました。もちろん彼らを追う敵である研究所や協力者の小五郎もときおりスポットが当てられていましたが、基本的には村上と天文部にかくまわれた魔法使…い達の物語です。しかし、今卷はその大半を新たな刺客である奈波の話を軸としており、今までと視点を変更し魔法使いの立場にスポットを当てた構成となっています。
この奈波というキャラクターは沙織のような斬撃やキカコのような強力なビームももっておらず、身体能力的には普通の女の子です。 ですが、そんな彼女には寧子の破壊による力や、小鳥の転移によるトリッキーな魔法さえも的確には通用しません。加えて彼女の能力は研究所から隠れている村上達にとっては最大の脅威であり、彼女と相対することによって窮地が訪れます。(といってもこの作品自体が常にその場その場で最大のピンチの連続でハラハラしながら読むのが止まらない漫画ですが)
いままで魔法と知略をもって格上の魔法使いと戦ってきた主人公達がその力が通用しないときに、何をもって戦うのか
それは村上や寧子が最初からもっている「ある」ものが奈波への最大の武器であり、突破口としての鍵となっている点には胸を打たれました。
奈波のすっとんきょうな行動や小鳥のボケによるギャグ、 カズミの揺れ動く恋心も随所にしっかり配置されており、シリアスとコメディのバランスが一辺倒になっていないところも含めストーリー構成の隙の無さにはとても驚かされます。
今までこの作品は先の気になる引っ張ったコミックの終わり方をしていましたが、この卷は先の研究所との戦いに悲観的ではなく希望をもった決意で締めくくられます。
もし、3巻で読み留まっていたり、アニメ化を期に読んでみようと思っているのならばこの4巻を一つの区切りとして読んでみることをオススメです。 続きを読む投稿日:2014.03.25
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冴えない彼女の育てかた
丸戸史明, 深崎暮人 / 富士見ファンタジア文庫
現状未知数
6
丸戸さんの担当している美少女ゲームは全てやっているわけではありませんが、ひとつだけプレイしています。
文体は美少女ゲームのフォーマットに近いため、ライトノベルとして見てもいかんせん台詞が多く行動や情景…の描写が乏しく感じてしまいました。
第一巻ということもあり主要キャラクターの紹介に終始しているのは問題ないのですが、ストーリー構成的に最後のカタルシスがなければ満足できなかったと思います。
先に色々不満点を書いてしまいましたが、重点的に紹介されたキャラクター達は皆、魅力的に描かれていることには間違いありません。
彼らの関係がどのように交錯していくのか続きが非常に楽しみです。
丸戸さんの本領はまだまだ発揮されてるとは思えず、正直に言うとこの巻だけでこのシリーズを語ることは難しいと感じます。
実力は間違いなくあるライターだと思っているので本筋が動き始める次巻以降に期待したいです。 続きを読む投稿日:2014.03.28
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現代百物語
岩井志麻子 / 角川ホラー文庫
すぐ隣にいるかもしれない「妙」なもの
2
タイトル通り有名な百物語をベースとして岩井志麻子さんが聞いたり体験したことを100のエッセイとして集めたものとなっています。
1話ごとの話はそんなに長くないので物事の合間合間にくぎって読むことができま…した。
百物語というと魑魅魍魎のおどろおどろしい話を想像してしまいますが、もちろんエッセイ集なのでそういったものはそうそう出てきません
逆に言えばそういった話を求めている方には肩透かしを食らうでしょう。
しかし視点を変えてみてはどうでしょう 昔はよくわからなかったものを妖怪として形つけることによって偶像化し、その恐怖を怪談として形式化していったとも言われます。
ですが、現代はそういったものが解明され姿を消し、なくなってしまったのか?
いえ、そうではなくそれらは形を変え、現代に適応し、馴染んでいるかもしれません。そう、気がつかぬ間に私達は明日にでもこの本の登場人物に出会ってしまうかもしれないのです。
私自身、怪談的なものを求めて読み始めたので最初は想像していたものと違うと思いましたが、読み進めると次第にその魅力に惹きこまれていきました。 続きを読む投稿日:2014.03.26
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秋葉原通り魔殺人事件 なぜ男には敵が見えないのか―新潮45 eBooklet 事件編13
中村うさぎ / 新潮45
彼は誰を殺したかったのか
2
今でも当事の報道を鮮明に思い出せるほど深い傷跡を残した事件
あの事件を女性であり、オタク文化に精通している中村うさぎさんが独自の視点で読み解いています。
犯人の育った背景から社会情勢、また犯人の育っ…た世代に深く衝撃を与えたあの「アニメ」といった様々な視点から鋭く切り込んでいると感じます。
もう当時から5年以上たち、震災などで風化しつつあるこの事件を忘れないため今一度考え直す良い機会となりました。 続きを読む投稿日:2014.03.28