
神様の御用人6
浅葉なつ
メディアワークス文庫
東京編も九州編も史実との関連が面白い さらに勉強したくなりました
あまりにも、超現実主義のある人物の登場で新展開になります。 神様にも悩みと悲しみがあって人の人生も同様。 それをみごとに解きほぐしていく御用人 良彦の活躍と成長が楽しく読める。 九州編では、故郷をテーマに古事記 日本書紀を紐解きながら、史実もからませて古代九州と大和を描いていて歴史好きにはたまらない展開になっているとおもいます。 巻末では、荒ぶる神の登場で、さらに続編が楽しみになります
5投稿日: 2016.10.03
下天を謀る(下)(新潮文庫)
安部龍太郎
新潮文庫
スケールの大きさの割りに影にかくれていた人物 もっと表に出ていい
藤堂高虎は、何度も主君をかえた人物で、築城の名手家康というイメージがつよい。この物語上下巻を通して自分がいままで知らなかった 新たな高虎像がでてきた気がします。まず豊臣秀長に仕える中で、武将として人として成長していく高虎がえがかれ、のちには外様大名で ありながら、家康に重用されていきます。それまでの過程には紆余直接がありますが、加藤清正との友情や傾奇者 水野勝成との掛け合いや水野照葉 (作者創造の人物ではありますが)とのロマンスも描かれ、大変面白く読み応えのある本だとおもいます。 無論、築城の話もふんだんにあり、歴史上の史実の中で、高虎がどうのように考え、行動していったのかをじっくり味わえます。 大河の主人公としてぜひとりあげてほしい一人ですね。
4投稿日: 2017.02.21
日輪の賦
澤田瞳子
幻冬舎文庫
”日本”をつくった情熱と信念
強い国をつくるため、律令編纂に心血をそそぎ対立する豪族たちとの戦いを を描いた作品。女であり、夫と愛息をなくしながらも自分犠牲にして孤独な戦いを続ける讃良大王と、官吏になるため、京に上ってきた廣手を中心に物語が展開する。それぞれが、新しい国造りに信念をもやす様は感動です。 また、男装の麗人 忍掌。廣手の敵である大麻呂。大友皇子の遺児である葛野王などの活躍と人間模様がうまくえがかれていて、読んでいて飽きさせない。最初、時代の役職や官職名など難しい名がでてきて読みにくいとかんじたことがありましが、中盤から終盤にかけて一気によんでしまいました。 フィックションとノンフィックションがうまく融合されていておもしろいとおもいました。映像として見てみたい気もします。
4投稿日: 2016.06.26
江戸を造った男
伊東潤
コルク
不運を克服し、知識を知恵に変え、たぐいまれな行動力で日本をつくった男の物語
東廻り航路、西廻り航路をつくった人と教科書で習ったが、この本で、銀山開発、治水事業などもおこなった 大富豪であることをあらためて知った。 明暦の大火で子供をなくしたが、すぐに材木の買い付けに危険を冒しても奔走し、富豪への舵をきり、銀山開発 でも事故で子供をなくす不幸にあいながら、あらためて再挑戦し、見事にやり遂げる。とてつもない不撓不屈の 精神の持ち主であるが、そのかげには、民のためという気持ちを常に持ち続けて行動しているところがすごい。 また、保科正之、稲葉正則 新井白石など、幕閣の重鎮と関係をもてたのは、運もあるかもしれないが、 運をよびこむ力みたいなものも感じてしまう。 現代の画一化された世界、社会のルールが細かく設定されている世の中では、こんな波乱万丈な男は あらわれようがないかもしれないが、その精神と気概をもって生きたいとおもわせるストーリーに拍手を送りたい。
3投稿日: 2016.12.12
喜連川の風 忠義の架橋
稲葉稔
角川文庫
木連川藩サラリーマンシリーズ第2幕開幕
家格は10万石だが、石高は5千石。参勤交代も免除された名門、木連川藩。シリース第2作。今回は、橋造りを命じられた中間管理職、天野一角の奮闘がえがかれます。期限はたった1ケ月。他藩領の工事に、諸事情が絡まって人出もあつまらず、しかも責任者の家老は仕事を丸投げ。そんな中、まじめな性格でありなら先輩たちから、誤解をうけいじめをうけている清兵衛が橋つくりにかりだされ成長していく姿も平行してえがかれ苦難の中、仕事をやりとげようと奮闘する姿に、今の自分を奮いたたせる勇気をもらえます。現代の社会中にも同様のことがあり、共感を得てしまいます。 名君、熙氏の登場もかっこよかったですね。勧善懲悪。映像化しても らえたらおもしろいものができるかもしれませんね
3投稿日: 2016.11.24
五峰の鷹
安部龍太郎
小学館
歴史 経済 世界観も楽しめる盛りだくさんの戦国譚
主家を滅ぼされ、不遇をかこう中、お家再興をめざしていく中、海商王直に認められ商人としても才能を発揮していく三島清十郎。 主人公は、架空の人物で物語はフィックションであるが、脇をかためる王直、足利義輝 細川藤孝 氏家卜全 織田信長 毛利元就などがいきいきと動き、実際の史実が舞台となっているので歴史好きにとっては、胸躍る エンターティメントになっているとおもいます。 鉄砲伝来の史実の裏に王直ありですが、一般的にはあまり表にででこないのはなぜか。石見銀山 生野銀山の話から貨幣価値などを現在になおしてくれているのは時代背景をみるのにいい。毛利元就と陶晴賢との戦いと将軍家と三好の戦いについては史実と重なりあわせてストーリを膨らませてみるのもおもしろい。 仇敵、石見玄蕃の正体は?ちょっと無理があったかも。 王直についても、もっと描いてほしかったかな。(贅沢かもしれないけど)
2投稿日: 2016.09.06
家康、江戸を建てる
門井慶喜
祥伝社
究極のピンチをチャンスに変えた男たち
秀吉の無理難題を家臣の反対にあってもはねのけ、”関東にはのぞみがある”と江戸の建設にたちあがった家康。利根川東遷 小判鋳造 上水道整備 江戸城石垣 天守閣漆喰 それぞれのテーマにそって取り組んだ男たちの物語。 便利になった現代の我々には到底理解できない難事業 難工事に取り組んだ人々。大成功を収めた人。最後は残念な結果に終わってしまった人。悲喜こもごもがえがかれていて、史実としての物語を読む楽しとともに 人間物語としてよむのも面白みがあるとおもいます。
2投稿日: 2016.08.03
満つる月の如し 仏師・定朝
澤田瞳子
徳間文庫
御仏はどこにいるのか? 人心の内にある弱さと苦悩をあますところなく描き出した、歴史エンターティメント
時は、藤原道長の御世。御仏はどこにいるのか?御仏を彫るだけで本当に人を助けることができるのか?苦悩する仏師定朝。片や、彼の仏像に魅入られ、定朝を説得し、仏師として起たせることに成功する内供奉隆範。 やがて考えの相違から袂を分かってしまうのだが・・・・・。 一方、宮城内での敦明親王の乱暴狼藉。でありながら彼を信じる中務。 権謀術数の渦の巻きこまれ悲しい結末に。 時代背景からか、人物関係がややこしく最初は読みにくいと感じたが、定朝が、仏師として活躍し始めたところから、宮城内でおこる事件、人間関係のストーリーの展開がてんぽよくすすみ一気によめました。 歴史小説というとどうしても戦国武将のいうイメージですが、仏師を取り上げ 人間の内面に入り込んだ異色の小説ですが、まったく違和感なくはいりこめました。
2投稿日: 2016.07.24
喜連川の風 江戸出府
稲葉稔
角川文庫
江戸時代のサラリーマン物語
足利家の末裔。石高わずか5000石でも家格は10万石。参勤交代も各賦役も免除された名門家は実在したという事実にも興味をもってよみはじめました。テーマはずばり ”借金”。貧乏藩ならではの悲哀をえがいていますが、金を借りるために、いろいろ裏工作を命じられ奔走する主人公。その中で事件がおこり解決にも奔走する。やがて、工作に疑問を感じ、上役に意見するが、逆に勘気をこうむり牢に。現代のサラリーマンにも通じる話としてみることができおもしろいと思います。さてお金は借りられるのかはできるのか? 牢屋にいれられた主人公の運命は? 次は、名君熙氏を主人公にした物語を期待したいとおもいます。
1投稿日: 2016.09.11
命もいらず名もいらず 上 幕末篇
山本兼一
NHK出版
命もいらず名もいらず、こんな男だからこそ偉業をなしとげた。
剣、槍の奥義を極め、禅は印可を与えられ、書に通じた。その反面、大酒を飲み、女遊びもしたらしい。江戸城無血開城の英雄は、勝海舟と西郷隆盛だが、その前、死を賭して敵陣に乗り込んで西郷と会談したことが、江戸を火の海から救ったことになる。もっと、評価されていい人だと思う。若いころの豪放磊落な人物像、維新後も明治天皇の教育係として活躍した人物。 とても、自分にはおいつけない人物ではあるが、魅力があふれた人物であることはたしか。西郷 勝 千葉周作 清水次郎長 明治天皇など、色々な人物とのかかわりがより興味をそそられます。
0投稿日: 2016.06.30
