パギー・ハナフサさんのレビュー
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22
このユーザーのレビュー
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この世界の片隅に 上巻
こうの史代 / 漫画アクション
優しい画風でノンビリとした女の子が主人公です。
7
3巻読後にまたすぐ、読み直しました。伏線がいたるところに張られていますがそれが全て回収されている素晴らしさ!何度でも、繰り返し読みたい作品です。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが戦中の女性達は…このような生活をしていたのでしょうね。他の原爆などのお話など、ともすれば暗い話になりがちですが彼女独特の画風で優しく、ほんわかと仕上げてあります。時には切なく、哀しく、心温まる。戦中の庶民の生活の様子が当時の資料も交えてわかって興味深かったです。 続きを読む投稿日:2015.05.05
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ヒストリエ(10)
岩明均 / アフタヌーン
「地平線まで続く”自由”などありえない」
4
せつない、の10巻。「でも、行く手を遮る敵は倒してみせる」なんて好きな人に言われたらググッとついていってしまいそうですが まぁ、そうなると話が盛り上がらない、このお話。悲恋の方が恋は燃え上がる。彼女は…自分自身の死を目の前にして、この言葉を思い出すのだろうか? そこも最後は描いて頂きたい。
少年だったアレクサンドロスも表紙のように青年に。天然、というか感が鋭い、閃きがある天才なのでしょうね。対して父親は努力の人。
「自由」が鍵になっているこの作品。今後の展開が楽しみです。次巻までまた首をながーくして、待たなければいけないのでしょうね。でも待ちます!それほど魅かれる作品なのです。
続きを読む投稿日:2017.03.24
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フイチン再見!(1)
村上もとか / ビッグオリジナル
満州国とは一体どんな国だったのか?
2
満州国の、当時の雰囲気が少しでも味わえたらと思って読み始めました。
背景などは当時の資料などを参考にしてあり、とても洗練された、西洋と東洋が入り混じった街という印象を受けます。日本も巨額を投じて、街…を建設、そして色々な公共機構を整えたのです。
資料でそれらをみていたのですがこの風景が漫画の中に上田とし子という女性と入ってくると俄然、輝き出すような感じです。まさに自分がその場に上田さんといるような。そしてあまり語られない、満鉄の女性社員の光と影。
主人公の上田とし子さんは恵まれた家庭のお嬢さん、というのもあって強気な発言もされますが同時に日本(内地)に行けばカルチャーショックも受ける。でも素晴らしいのは周りの人にイジメや嫉妬を受けてもめげない明るさ。軽く流してしまう。とし子さんはあくまでポジティブ。これが彼女の一番の財産でしょう。
彼女に対比する漫画家として長谷川さんが出てきます。長谷川さんの人となりまでは流す程度(5巻現在)ですが現実の人生としてはとし子さんの方に魅力を感じざるを得ません。実在の人物がモデルですがどこまでフィクションかわからないし、色々と都合が悪い部分は省略されたところもあるでしょう。
全体として読みやすいし、とし子さんの生き方に大いに興味があります。当時の歴史に興味がある方にはまたお薦めです。面白いですよ! 続きが楽しみです。
続きを読む投稿日:2015.12.11
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零戦少年
葛西りいち / ヤングチャンピオン烈
人の数だけ事情はある。
1
零戦、神風特攻隊、といえばステレオタイプ的な、型にはめたような美談系の話になりがち。だが、一旗上げたい、という動機も少なくなかった思う。事実、当時は軍隊へ入隊する者は農家の子沢山の家庭が多かった。人の…数だけ、事情は色々あるものだ。
当時の人しかわからないであろう数々の出来事が漫画として描かれているのも面白い。しかし一番印象に残ったのは、戦後、戦友会等、特攻の生存者が集まる集いへの参加を辞退されていた件。彼の想いはそこへ集約されているような気がする。
作者が祖父から聴き取りをした話を元に、予科練への入学前から、戦後までのお話。お薦めです。
続きを読む投稿日:2016.03.05
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かくかくしかじか 1
東村アキコ / ココハナ
お勧めです。
2
彼女が宮崎でりぼん少女だったころ、ちょうど宮崎に住んでいました。なので懐かしい地名が出てきたり、方言などローカルな部分でも楽しめました。先生の家の前の、ビニールハウスでコンビニどころか、自販機も何にも…無い風景って案外日本に多いのでは?当時は竹刀を持った先生は通っていた宮崎の中学にもいらっしゃいました(しかも1人でなく、複数・汗)。まぁ、さすがに美術の先生ではいらっしゃいませんでしたがね。個性的な先生が沢山、教鞭をとられていて、とても楽しかった宮崎時代です。主人公が作中で何度も描いているように、自由でのびのびしていましたね。
伝説の「岡田あーみん」を彷彿させるような抱腹絶倒、でも時々はっとする綺麗な絵を描く東山アキコさんの自伝的漫画。
面白かったです。多少、絵を描く人であればもっと楽しめると思います。肥大した自信過剰、妄想女子高生から美大生、就職、漫画家になって、、という時の流れのなかに先生への気持ちが織り込まれていてせつなくなる。消したい過去、恥ずかしい事件って誰もがありますがそれらを描く勇気もさながらそれらを面白く、話に盛り込んでいる作者の手腕。他作品もいくつか読みましたがこれが一番好きかも。5巻が出るのが待ち遠しいです!
私も日高先生に習ってみたかったです。(日高って宮崎によくある苗字なんですよね~。浅香唯ちゃんも宮崎市内出身だし) 続きを読む投稿日:2015.06.01
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嘘つきアーニャの真っ赤な真実
米原万里 / 角川文庫
嘘のような、本当の話。そして人生は続いていく。
1
当時の共産圏の様子を、子供目線で綴った貴重な回想禄。賛否はあれ、大好きだった個性的な3人の友人。それぞれの人生の足跡を辿った旅の記録です。フィクションのようではありますがこれはノンフィクション。ぐいぐ…いと引き込まれて久々に一気読みをしてしまいました。某ドキュメンタリー映像でこの時の旅の様子が見れますがリアリティはこの本の半分くらいにしか満たないかも。クラスには一人はいそうな、おませで憎めない陽気なリッツア。数々の矛盾を抱えるユーゴスラビア高級官僚の娘、アーニャ。自分の意志に忠実な、一見クールなヤスミンカ。三人三様で彼らの性格や家庭環境は違うのですがその仲良しだったマリ。限られた時間で、各自の足跡がよくここまで辿れたと思います。映像では描ききれなかったアーニャの矛盾が、詳細に書かれています。題名にもなっている「真っ赤な嘘」は共産党の赤、の意味も込められていますね。この作品を読んで、米原万理という魅力的な人をもっと知りたくなりました。 続きを読む
投稿日:2016.12.10