キノコタケノコヘンピナトコロさんのレビュー
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Q&A
恩田陸 / 幻冬舎文庫
真骨頂の意味を問う作品
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無数の死傷者を出したにもかかわらず、
消防警察ともに原因をつきとめられないショッピングモールで起きた謎の事故
その被害者への聴取や関係者の会話から何が起きたのかを探っていく
というあらすじ
更…に紹介文には、Q&Aだけで進行する著者の真骨頂!(原文まま)とまである
こりゃあ名作の予感しかしない、とワクテカしながら同著者の他作品と併せて購入
結論から言えば、そんな風に思っていた時期が私にもありました、です
作品を前編・中編・後編に分割して見れば、前編はまさに思い描いていた通りのストーリーなわけですよ
しかし、中編以降がいただけない
締め切り間近のやっつけ仕事なのか、
深夜のテンションで練り上げたプロットなのか、
はたまた酒にでも溺れていたのか
それこそ作者にQ&Aしたいくらいに雑、雑、雑&雑
後編に入る頃には、思えば遠くに来ちまったもんだ、という感想以外を持てない
最終章に辿り着く頃には脳内はQで埋め尽くされ、途中与えられた僅かなAは舌打ちと共に不安へと変わる
本当にこれ、オチるのか、と
しかし、ミステリーものといえばどんでん返しが基本であり、この作品も当然そこを狙ってくるだろう
そう、期待と願望を込めて頁を捲り続けた結果、この作品は名作へと昇華――しませんでしたあ
リアルでシリアスなドラマ(宣伝文まま)を読んでいたはずが、気付いたら世にも奇妙な物語へと変貌
いかがでしたか?とグラサンの方が語りかけるシーンが脳裏をよぎる始末
読後に「なんだこれ」を連発した作品は久しいものでした
なお、私にとってこれが初の恩田作品にて、レビュー時点では最後の恩田作品
前述したように複数作品纏めて購入したものの、怖くて他の作品に手を付けられないでいる
そりゃそうだ、真骨頂と褒めちぎった作品がこれなのだから 続きを読む投稿日:2017.09.18
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去年の冬、きみと別れ
中村文則 / 幻冬舎文庫
編集の手が入っているはずなのに
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ページ数は、昨今のサスペンスにしては、非常に少なく、195頁
そのため、すぐに読み終わるかと、思ったものの、予想以上に時間がかかりました
原因は、文体
序盤は上で書いたようにやたら句読点まみれで…読み辛く、
行間もなく一文挟んだだけでそこまでの描写が過去の時間軸扱いになるなど、
編集の手が入っていて書き直されているはずなのに、
流れが把握しにくく気持ち悪い
後半は文体こそ普通になるも、読者を混乱させるためだけの描写が多く、
前半でくどくどと言われた登場人物の内面はどこへやら
そもそも、弁護士が無能でも死刑判決がでるような事件ではなく、
どんでん返しのためだけに最初から破綻した筋書きが机の上で練られただけでした
あとがきで著者の方は矛盾はないし伏線は張っていると自画自賛しておりますが……
正直、狂気(笑)を免罪符にした異常者気取りばかりの薄っぺらなお話にしか思えません
ただ、「見ていないときは…」の考え方はなるほど、と感心させられました 続きを読む投稿日:2017.11.07
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魔女は甦る
中山七里 / 幻冬舎
鳥頭には何が詰まっているのか
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前半は被害者の背景や関係者を探る推理物なのに、
後半はただのパニックアクションという
念入りに積み上げた舞台設定からの安易なオチにはげんなり
その他にも、主人公が新人だろうと、年上の駐在だろ…うと、参考人だろうと、
誰彼構わず見下す描写が多いのも気になったところ
新人に関しては殊更酷く、
主人公ら刑事の上席3人は新人のことをどぶ浚いや無医村の駐在が相応しく、
このレベルなら交番勤務に代わりはいくらでもいると無能扱い
実際無能っぽく書かれていますが、主人公らは教育をほぼ放棄しています
ここから判るように、彼らも無能です
読めば判りますが、事件を複雑化させる原因となった上席Aと
主人公が同じ行動を取り、上席Bは知りながら見逃して大炎上
多分、彼らの頭には鴉よりも小さい脳みそか、カニミソでも詰まっているのでしょう 続きを読む投稿日:2017.11.22
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瞳の中の大河
沢村凜 / 角川文庫
まさに大河
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架空の国を舞台にし、国軍と体制の打破を目指す叛乱軍の戦いを描いたこの作品
物語は主軸となるアマヨクが初めて髭を剃る場面からスタートし、
敵味方問わず多くの視点から物語が紡がれていきます。
人…々は完全なる善悪正義不義には分けられず、
それぞれの立場で意志を持って、時に流されて生きていく。
それが先の読めない展開に寄与し、
頁を捲る手が止まらず睡眠時間がガリガリと削られました。
序盤から緻密に練り上げられた伏線と展開が、
尻つぼみになることなく終わりへと流れていく様はまさに大河。 続きを読む投稿日:2017.11.29
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遠い夏、ぼくらは見ていた
平山瑞穂 / 幻冬舎文庫
タイトルと表紙絵詐欺
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主人公を含む5人が、小学生の頃に参加したサマーキャンプ
その別荘の持ち主である資産家の莫大な遺産を得るために、
キャンプ中に行った“或る事”を思い出さなければいけない
というなんとも感興をそそら…れるあらすじ――なのだが、
読破してみればがっかり感は否めない。
頁の大半は下衆く浅い人物描写で占められるうえ、
肝心の“或る事”とそれに纏わるエピソードも早い段階で予測が付いてしまうため、
中盤以降は正直なところオチを知るための消化試合でしかない。
改訂前の”偽憶”という作品名は全く内容と合ってないので変えて正解だが、
折角の新しい題名と素晴らしい表紙絵に対し、本編が力不足なのが残念無念。
――というか、表紙絵も表紙絵で中身とまるで関係ないのは何故?
ただ、ああいうオチはご都合主義と言われようが嫌いではないです。 続きを読む投稿日:2018.02.27