間 文理さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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日本会議の研究
菅野完 / SPA!BOOKS新書
ああ怖かった。。。この話が本当だとすると、中村うさぎの、イノセントなみに、怖い。。。
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世界で3番目の経済規模を持つ国の宰相が、少数の宗教的信念をもった方々のつよい影響下にあるだなんて。。。ぶるぶる。
一部の人が、善意で宗教的信念をお持ちになるのは、結構なんです。それは、善意なんだから。…でも、一国のリーダーが、人類社会の営々と成し遂げてきた社会の進歩を、少数者の宗教的信念に基づいて、無視したらいかんでしょう。
人類は、環境を変えるようになって、進化を止めた(ラリー・ニーヴンだっけ)。自然科学は指数関数的に進歩する。そのギャップを埋めるのは、人文科学。と私は思う。
家長を重んじ、家を重んじ、女性を下に置き、他民族や性的マイノリティーを排外する。そして支配階級が富を独占する。これは、古い社会では当然だったのでしょう。そのような形態の繁殖をする動物は、そこそこいそうな気がします(そんな野蛮な動物はいない?)。その古き”良き”(私にとっては古き悪しき時代ですが)時代を取り戻すべき、という善意に基づいた宗教的信念は、あり得るでしょう。
しかし、そのような人々をおいといて、人類は進歩をし、その本能を克服し、少数の支配階級ではなく、より多くの人が幸せになれるよう、個人を、女性を、他民族を、LBGTを、意見の異なるものを、尊重する社会を作ろうとしているのです。その人類の進歩を、無かったものにしようとするのは、どうかと思います。
ちなみに、著者が自分で書いているけど、連載をまとめているので、構成がよくなく、少し読みにくいです。内容は平易ですが。 続きを読む投稿日:2016.07.23
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鈴木先生 1巻
武富健治 / 漫画アクション
これは、脅威です。教師になりたいと、思わされました。
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1〜2巻目(くらいまで)を読み、いい本だな。。。と感じながら、次に手を出すのを止めてしまった人々には、是非、続きに手を伸ばし、それなりの時間を割いて、読んでみてください。
ただ、異質な表現で、慣れるま…で、少し苦労するかも。どこかの巻のあとがきにもあるように、最初のうちは、笑うべきところなのか、深刻なところなのか、分からなかったりして。
本題です。言葉の力と、ティーンエイジャーの思考力、他者に共感する能力に絶大な信頼をおき、言葉の山塊をもって、個々の人間とそれを取り巻く「社会」の多様性とその多様性の貴さ、その貴きものを理解できるために、われわれが自ずからを鍛えなければいけないこと、を滔々と、ときに訥々と、紡いでいます
世の中の、決めることのできる指導者、強い指導者などと自称する独裁的な(=複雑な事象を鑑みることをできず決定できてしまう)指導者とは対局の、人類の哲学的思索の到達点の一つ、でしょう。
この言葉の山塊を伝え、その意味を理解し、他者の立場に思いを致す時間を、授業では到底、持ち得ないんでしょうね。
やっぱり、漫画家の方がいいか。
無学なものでスペイン語を解さないのですが、鈴木先生第6巻の表紙にある横文字は、「大衆」を身分ではなく、「他の人々と同じあることに安心し、あるがままの自分に満足する人々」と規定し、「選ばれし人々」とは「孤独に耐え、成長を求める人々」である、としたオルテガの言葉だそうです。 続きを読む投稿日:2016.11.17
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下り坂をそろそろと下る
平田オリザ / 講談社現代新書
哲学者の本とは違って、違う生き方を、劇作家らしく分かりやすく提示した、よい本です。
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最初の提示、日本はもはや工業立国ではない、もはや成長せず日本は長い後退戦を戦わなければならない、日本はもはやアジア唯一の先進国ではない、は当たり前やん、と思いつつ読み進んでいきました。読み進んでいるう…ちに、その[喪失の]寂しさに耐えられない方々の存在が、共感はできないけれども、理解はでき、「首相は、日本がアジア唯一の先進国の座から滑り落ちたことを受け入れられない日本人の典型である。典型である以上、一定数の支持を保ち続けることは間違いない。」に、ああ、そうなんや。。。ちょっと寂しい。。。
ただ、理系頭から解脱できない私には、提示された解決策に深く共感しつつ、でもエビデンスないやん。。。ああ、自分の頭の固さが寂しい。
いずれにしろ、今の同調圧力の強い、成長しなければという強迫観念にかられ、なお目の前にそびえたつ壁に立ちすくみ荒む社会に、違和感を持つ人には、なんらかの助けになるように思います。 続きを読む投稿日:2016.06.07
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土佐日記(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典
紀貫之, 西山秀人 / 角川ソフィア文庫
有益な、フォーマットでした。
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学校時代、古文をほとんどパスして、最小限の資源で単位を取った私には、最適のフォーマットです。
飛ばしたくなるのを我慢して、本文(古文の部分)も読みました。私にも我慢して読める程度の長さにまとめられてい…ます。
そして、ここに記載されている人と人の関わり・交わりを(解説に助けられながら)味わいつつ、確かに人は1000年前と同じと人だと、嬉しいやら悲しいやら。
このシリーズ、読破してしまうかも。 続きを読む投稿日:2017.03.02
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陽のあたる家
さいきまこ / フォアミセス
システムを悪用する少数の人を
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排除するために、システムを真に必要としている多数の人を排除することは、ヒューマニティに反するのではないでしょうか。
行動経済学によると、社会的不公正に対して、自腹を切ってでも罰を加えようとする傾向を地…球人はもっているそうですが、少数のシステムを悪用する人を排除することに重点を置くのではなく(もちろん大事なことですが)、多数の社会的支援を必要としている人にそれを与えようとしないシステムが社会的不公正である、という観点を思い出させてくれる、すばらしい表現だと思います。 続きを読む投稿日:2016.02.20
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樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声
ペーター ヴォールレーベン, 長谷川 圭 / ハヤカワ文庫NF
心地よい、たとえ夢物語であっても、心地よい。
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夢物語なのか、現実の物語なのか、不勉強にして、判断できませんでした。参考文献をあげてくれているので、本当はそれを当たるべきなのでしょうが、残念ながらそれは私の能力を超えています。
それでも、(植物の…社会生活という)素晴らしい世界を垣間見せてくれました。私の視点を180度転換させ、展開してくれる、心地よい体験でした。 続きを読む投稿日:2019.05.12