レビューネーム未設定さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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グラゼニ(1)
森高夕次, アダチケイジ / モーニング
「プロ野球」好きだけど、メジャーリーグにあまり興味がなかった自分は、楽しめました。
2
これまでの野球マンガとは違う、本当に異色な作品。けど面白い。昔「プロ野球」が好きで良く見ていたのだけれど、最近のメジャー一辺倒の日本の野球界からは、ちょっと距離を置いていた。どこが違うのかな、日本もメ…ジャーも同じ野球なのに、と思っていたのだけれど、こういう「裏側」とか「人間くささ」が、昔のプロ野球にはにじみ出ていたのではないか。テレビを見ているだけで大量のプロ野球情報が流れてくる、そんな昔のことを思い出させてくれる作品でした。 続きを読む
投稿日:2014.02.23
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All You Need Is Kill
桜坂洋 / 集英社スーパーダッシュ文庫
いい意味でライトノベル
9
「神林長平トリビュート」に寄稿していた桜坂氏に惹かれ半年前購入していた本書を、年末滑り込みで読了したけれど。どうやら、ハリウッド映画化やコミック連載など、メディアミックス的展開が進んでいるようで、流行…に乗ったみたいでちょっと癪(^^;)。
ストーリーは、繰り返す時間のループに捕らわれてしまった主人公が、そこから抜け出すための手段を探す物語。ループの中で出会ったある人物(うら若き女性)との出会いが、ループを抜け出すための鍵になるのだけれど…。
若い女性登場ということで当然ながら予想されてしまう分かりやすい展開や、ループ発生のSF的理屈の掘り下げは丸めている(ちょっと「なんちゃって」感が…)など、厳密さを求めずちょっと情緒に傾けたライトノベル的な方向付けが行われているのだけれど、この作品については吉と出ている気がする。短いボリュームの中で、話のフォーカスがぶれずに、スッと最後まで読み通すことができた。結末もきれいで爽やかにまとまっている。あえて言えば全体がきれいにまとまりすぎの感があって、結末にもっと不条理感ややりきれなさを残してもいいかなとか、もう少しパワーを感じさせてほしいかなとか思うのだけれど、そこは計算も入っているのかな、とも感じた。確かにこれはハリウッド映画的かも。
一点。電子書籍版で読んだのだけれど、文庫版にはあったはずのイラストがない。ライトノベルなのだから、小説+イラストが揃っての作品のはず。安倍吉俊氏のイラスト、以前、某アニメ/ゲームで結構はまったのもあったので、その点は残念。 続きを読む投稿日:2014.01.12
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うさぎドロップ(8)
宇仁田ゆみ / FEEL COMICS
あと少し、最後まで付き合います
2
なんか、思わぬ方向に話が転がってきたような…。
光源氏的な話?と思って作品を読み始めたのだけれど、実は子育て世代の自分には身につまされる子育てマンガだったのか!と思って読んでいたところ、実は…。
期待…を裏切られたのは確かだけど、この先どう話をまとめていくのか、それによって良い方か悪い方か評価が分かれそう。ここまで読んだので、もう少しだけ付き合ってみるかな。 続きを読む投稿日:2014.01.05
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青い花 2巻
志村貴子 / EROTICS f
まとめ読みしたい
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いろいろな人との関わり合い、できごとの中で、少しずつ心が動かされていく様を、本当に丁寧に描いているのだけれど、物語の人の名前を覚えるのが得意でない自分にとっては、登場人物が多いだけで、少しずつ薄まって…いきイマイチ没入できていない。人物は(絵的に)十分描き分けられているようには思うので、これは純粋に受け取り側の自分の問題かな。
ただどうやら、この先の巻のあらすじを読むと、人間関係が変わっていく様子。その前提で読むと、いろいろ見えてくるものがありそう。ストーリーを追う物語ではなく、話の流れを知った上で読み込んでいく(あるいは再読前提)のが正しい読み方なのかも。雑誌連載/コミックレンタルで読むより、まとめ読み向きかな。 続きを読む投稿日:2014.01.03
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バイオーグ・トリニティ 2
大暮維人, 舞城王太郎 / ウルトラジャンプ
うまくはまったコラボ作品
2
作画、原作それぞれに、定評のあるクリエイターを選んだコラボレーション。これまでのところ、この世界観にどちらもピッタリはまっている感があり、このまま順調に進んでいけば…と楽しみになる作品。
ただ、大暮維…人氏の絵、微妙に電子書籍端末を選ぶ。5インチスマホでは線が繊細すぎて読みづらく、6インチSony Readerなら線はOKだけど、見開きのネームが多く縦読みがつらい。ぜひ、見開き可能なタブレットまたは紙での読書をオススメします。 続きを読む投稿日:2013.12.23
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オール・クリア2
コニー・ウィリス, 大森望 / 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
コニー・ウィリス8年の集大成
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「ブラックアウト」「オール・クリア1」「オール・クリア2」通しての感想。
厚い!紙で読んだのだが、1冊目を手にしたとき、あまりの厚さに読む前から心が折れそうに…。3冊で、400字換算3,500枚。当初…もっと長かったものを、必死でこの長さに収めたらしい。どれだけ長いの、コニー・ウィリス。まさにこういった本こそ電子書籍向けではあるのだけれど、「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」の装丁も格調高く捨てがたい。
読み始めると、この分厚いページがみるみる減って楽しくなる。特に「ブラックアウト」終盤1/4はものすごい疾走感。物語に完全に入り込んでいるため、単語を見た瞬間に状況が理解できてしまう。プロットだけを考えるともっとコンパクトにできるはず、と冗長に感じるけれど、物語ピークでの加速感は、飽きるほどひたすら描き込まれた助走期間があればこそ。
舞台は、第二次世界大戦中のロンドン。タイムトラベルしてきた学生がトラブルに巻き込まれ…という物語。歴史や地理などの背景知識が全くなくても十二分に楽しめたが、知識があればもっと楽しめたのでは、と感じてしまったのは残念。
タイムトラベルSFでは「パラドックス」の処理が肝心。本書では、流行りの量子力学的に煙に巻くでもなく、「感覚的に理解できる」パラドックス解決法が提示されている。しかし登場人物はこの解決法に疑問を抱き、実は…。このテーマが、物語を構成する単なる「ギミック」にとどまらず、登場人物の心の動き、そこから紡ぎ出されるストーリーの根幹に影響を与えていく。この処理がお見事。
章構成も、短い章構成で時間・場所をシャッフルする中に、「叙述トリック」を紛れ込ませていく巧妙な構成。二転三転する登場人物の名前がトリックの要。一見誤植かと見逃しそうな中にヒントが埋め込まれており、本当は再読して解き明かしたいところ。ただこの長さでは…。
今だからこそ3冊連続して読むことができ、久々の濃い読書体験ができたのは幸せだった。 続きを読む投稿日:2013.12.22