しゅららさんのレビュー
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38
このユーザーのレビュー
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人魚は空に還る
三木笙子 / 創元推理文庫
帝都東京のホームズ譚
5
超絶美形の天才絵師と雑誌記者。二人の関係は明らかにホームズとワトソンなのですが、この物語ではワトソンが事件を解決する探偵役なのです。
礼の描く絵にも、礼自身にも『心酔』している高広は、彼の頼みは拒め…ないのですねぇ・・・ワトソンです、全く。なのに「お前がホームズだ。」この逆転が面白い。高広の義父は、マイクロフト?と、思ってみたり。
正典ホームズ好きな人にも楽しめると思います。上質のパスティーシュ作品です。思えば短編で構成された作品、どれも派手な殺人とかがある訳ではなく、その雰囲気も正典の香りがします。
とはいえ、ホームズを読んでいなくても作品としては十分面白いので、ご安心を。
西洋と東洋が入り混じる帝都東京の物語です。その「魔都」的な雰囲気もこの作品の魅力。
私は二人の関係はBL的とは思えないのですが(ホームズ、ワトソンですあくまで。いや、彼らがそういう関係だとは…)
そんな視点で読むのも面白いかも。
続きを読む投稿日:2015.02.07
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時の娘
ジョセフィン・テイ, 小泉喜美子 / 早川書房
彼は本当に悪人だったのか?
4
最近、リチャード3世が主人公の某少女漫画に出会い、彼について久しぶりに調べていたところ、この作品にヒット。
実はリチャード3世が主人公の漫画は数十年前に発表された某作家さんの中編があり、それが本当に素…晴らしい作品で、私のマイベストに入るぐらいの傑作なのです。そのせいか私はもともとリチャード3世が『悪人』というイメージはないので(シェイクスピアも未読)、すんなり入っていけました。
主人公グラント警部は、長年犯罪者と接してきた経験から、リチャード3世悪人説に疑問を持つ。つまり肖像画からみるリチャードは決して犯罪者の顔ではないと睨むのだ。歴史上の人物を論じるのではなく、グラント警部の思考は現代の犯罪捜査という点が本書の面白いところ。調書?を読み解き、グラント警部の出した結論は?リチャード3世は果たして、シロかクロか?
ミステリーとしての本書ですが、やはり歴史的背景を知っていた方が読みやすいとは思います。
続きを読む投稿日:2015.04.06
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サイドストーリーズ
東直己, 冲方丁, 貴志祐介, 中山七里, 狗飼恭子, 中田永一, 宮木あや子, 垣根涼介, 貫井徳郎, 笹本稜平, 誉田哲也, 三浦しをん, ダ・ヴィンチ編集部 / 角川文庫
贅沢で、面白い企画。
4
著者も作品も贅沢なこの一冊。それぞれの作家の入門編としても、物語の導入編としてもおすすめです。
私もすべての作品を読んでいた訳ではないのですが、サイドストーリーだけでも十分楽しめます。ちゃんと本編の…あらすじもついているので安心ですよ。
しかし贅沢なラインナップだなぁ…と思っていたのですが「ダ・ヴィンチ」に掲載されていたというので納得です。
アンソロジーの魅力はいろんな文体の作品を並べて読めること。今作は、「一つのテーマをオリジナルで競作」というのではなく、「本編のある物語のサイドストーリー」という形なので、それがより顕著になっているように思います。
といっても、実はあるテーマが隠されています。読み進めていくとあら…?と気づくという、凝った構成。
好きな作品から気軽に読むこともできるし、アンソロジーはそれがいいですね。
続きを読む投稿日:2015.05.09
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風が強く吹いている
三浦しをん / 新潮社
年末年始に読み返したい。
3
箱根駅伝はお正月必ず見る。けれど彼らにとってそれは一瞬のこと。そこに至るには長い道程があるのだ。このチームが箱根に辿り着くことは、現実にはファンタジーかもしれない。けれど、襷を繋ぐ駅伝ならばそれも有り…かと、様々な人生を繋げていくことこそ走ることなのかと…。物語の原点はしをんさんのエッセイに有り。けれどそれをここまで昇華させるとは…。やっぱり侮れません。 続きを読む
投稿日:2013.10.29
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夏のリング
榎田尤利 / SHY NOVELS
夏のリング
榎田尤利
幸せな、はじまり。
3
榎田尤利さんの作品は紙本で殆ど読破しているので、レビューは少ないのですが、この特別版に出てくるカップルの作品はどれもお気に入りで皆にこんな形でご紹介できるのがとっても嬉しい。
榎田さんのお話はと…ても重いテーマが絡んでくるものも多いのですが、何故か読後感が悪くなくて…。登場人物たちの明るさ、有り勝ちな「二人だけ」な世界ではなく周りのサブキャラたちとの関係性の温かさ、そしてBLなんですけど女性キャラがとても魅力的。読んだ後の幸せ感がほんとにいいのです。
作品はほとんどリーダーでも読めるので是非。この作品を読んで本編に興味が出ればどの作品を選んでも大丈夫です。
特に『魚住くんシリーズ』は私の中では、星無限大の「神」的な作品なので是非読んで欲しい。そして、できればこの特別版はその後に読んで頂きたい。
とはいえ、この作品だけでもお話としては成り立っているので十分読むことはできます。この作品オリジナルのちょっと不器用な、でも可愛いカップル(男女)の物語を中心に3作品のカップルたちが絡んでくるとっても贅沢な内容です。
ネタバレになるので詳しく書けませんが、こんな形であの物語の完結編を読めるなんて…。
心が温かくなる、幸せな未来の予感が、嬉しい。おススメです。
続きを読む投稿日:2015.05.09
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フェア・ゲーム
ジョシュ・ラニヨン, 草間さかえ, 冬斗亜紀 / モノクローム・ロマンス文庫
フェア・ゲーム
ジョシュ・ラニヨン, 草間さかえ, 冬斗亜紀
ツンデレ眼鏡はやっぱり萌えます。
3
海外作家さんのBL小説?と思い、購入。主人公エリオットは、元FBIの特別捜査官。足の負傷が元で退職し、今は大学で歴史を教えている。ひょんなことから失踪学生の捜査依頼を受けるが、事件のFBI担当は元同僚…で恋人(!)のタッカーだった。その名を聞いただけで動揺するエリオット。事件に関しては冷静に分析するエリオットだが、タッカーが登場するたびに胸キュンとなる自分に戸惑う。
「彼との関係はもう終わった、元々単なるセフレだった筈なのに何故?」なーんて悩むのですが・・・そんなのわかりきってるでしょう!全く。これだからツンデレさんは・・・。
ミステリ要素もしっかり読ませてくれます。それとエリオットを取り巻く人物たちがしっかり書き込まれていて魅力的。
あとは、なんといってもイラストが草間さかえさん!表紙だけではなく挿絵もちゃんと入ってます。(二人の絡みのシーンが多くて、嬉しい。草間さん大好きです。)解説は三浦しをんさん、ツボをついた解説に、そうそう…と思わず頷いてしまいます。さすがです。 続きを読む投稿日:2013.11.17