
彼女は存在しない
浦賀和宏
幻冬舎文庫
読み返してもわからない
最初読んだ時、映画の「シックス・センス」を思い出しました。あれは、見直してみると、きちんと死者と生存者は全く会話をしていなったりして、「すごい!」となりました。 途中まで、この物語もそういう感じがしていたのですが、最後を読んだ後、読み返しても、「シックス・センス」のように「そうなのか!」「そういうことだったのか!」となりませんでした。 あまり書くとネタばれになるので書けませんが、私は最後ががっかりでした。この本を面白く読めるような解説書がほしいくらい、理解できなかった・・・。
2投稿日: 2015.05.16
シャドウ
道尾秀介
東京創元社
シンプルだけれど、こういうのがいい
物語の半分くらいのところまで、疑惑の種がまかれ、誰が何をしたのか気になってきます。 半分をちょっとすぎたあたりから、その疑惑が少しずつ解明されていきます。 そこからは、「どうなるんだろう?」「この人が、○○したのか?」と考えながら一気にクライマックスに。 結局、自分が考えていた内容とは違う終わり方になりましたが、満足。 他の方の評価は低いですが、シンプルに「誰が何をしたのか?」を追えるので、このジャンル初心者(私もそうです)にはお勧めです。
1投稿日: 2015.05.14
影踏み
横山秀夫
祥伝社文庫
愛とは何か
夜中に忍び込む泥棒の真壁修一。修一には双子の啓二という弟がいる。彼はすでに他界しており、その魂と会話することができる。 各章ごとに物事がテンポよく展開し、推理が味わうことができます。 私は、ぼうっと読んでいたので、推理を楽しむという感じではなかったのですが、ハラハラさせられる展開が各章でおきます。 最後に明かされる弟の死の真実。愛とは何かこれから修一はどう自分に折り合いをつけ、恋人久子に愛を与えられるのか? そういうことを考えさせられる本でした。 ただ、犯人はこの人だったんだ!という爽快感はありませんでした。そういうのが好きなので、ちょっと評価が低めです。
0投稿日: 2015.05.11
食品の裏側―みんな大好きな食品添加物
安部司
東洋経済新報社
原材料を見るようになりました
便利なレトルト食品や短時間で料理を作るための調味料。その実態を知ると気持ち悪くなってしまいました。 「専業主婦」がいつか死語になるであろう現代社会において、これらを利用することをすべて否定しているわけではないことが少し救いではあります。 けれども、この本を読んでから、休日はなるべく自宅で料理をするようになり、必ず原材料を見るようになりました。 食品は安いだけが正義ではありませんが、高価なものだけでやりくりできないのも事実。どこで折り合いをつけるのかは自分次第です。 あんまりやりすぎると「美味しんぼ」みたいに、押しつけがましいうえに、そんなん毎日やれるか!ってなります。
2投稿日: 2015.05.01
愚行録
貫井徳郎
東京創元社
誰が犯人だ?というのは重要ではないかも。
閑寂な住宅街で起こった一家惨殺事件。一家と関わりのあった人達を取材していく形式で物語は進む。 途中織り込まれる誰だかわからない兄妹の境遇。 その表現形式に慣れるまでに、半分を読み進めなければならなかった。 4分の3読み進めたあたりから、格段に面白くなる。 それは、同じ人を違う立場から見たら、こんなにも異なるものかとういう視点。 そこから一気にフィナーレまで突き進む。あぁ、この人が犯人だったんだぁ・・・・だけでは終わらない悲劇。 物語に入り込むまでに時間がかかるため、星三つにしたけど、読み切った後は、星4以上になる不思議なミステリーと思います。 読み終わった後には、一番最初の新聞記事を読み返しましょう。
5投稿日: 2015.05.01
インストール
綿矢りさ
河出文庫
これは読めた
著者が芥川賞を取った「蹴りたい背中」は全く理解ができず、「書いたお前の背中を蹴りたいわ!」と思ったことを思い出す。お安くなっていたので、初期作品に再挑戦してみた。 「インストール」は、この先どうなるんだろうと思わせるものがあり、前述のような「何じゃこりゃ!」という感情は抱きませんでした。 ただ、終わりは平凡。日常の中の非日常がテーマなのだろうか?人の本当のところは分からないというのが、テーマなのだろうか? 表題以外にも、「You can keep it」というのが入っているのですが、これが「蹴りたい背中」と同じ感じで全く理解できない。 権威ある賞である「芥川賞」だが、他の受賞作のどの作品を読んでも面白いと思ったものはなく、私の感性には全く肌が合わない賞なのだろうと思います。 読者に考えさせる結末がお好きな人にはお勧めですが、わたしは、彼女の初期作品でお腹いっぱいです。彼女の作品は、これ以上読むことはないと思います。
0投稿日: 2015.04.25
ランナー
あさのあつこ
幻冬舎文庫
久々に文学に浸れた
夫に突然離婚を言い渡された母と息子と娘が暮らす一家。息子は高校で陸上競技をしており、彼がこの物語の主人公。 ある大会で走ることができなくなった彼は、その理由を母と妹のせいにしていた。 しかし、それではダメだと自分に勝つために競技を再開する。それまでの出来事、妹と母との関係、気の置けない仲間と情動。 最近、映像化された小説を多く読んでいたからか、久々に豊かな状況描写、感情の表現に出会えて清々しかったです。 ただ、漢字が難しい。「縋る」「抉る」「双眸」「萌葱」「漣」この辺りの漢字は読めた方が読みやすいです。 私はPRS-650で読んでいて、日本語辞書未登載のため、電子辞書を引きながら読んでました。
1投稿日: 2015.04.23
週末婚
内館牧子
幻冬舎文庫
幸せな結婚とは?
結婚は恋愛の墓場か幸せのスタートか、それは、自分の努力によってしかどちらにもできるもののような気にさせます。 普通に結婚して、子どもができ、子どもが大きくなるとともに会話が減っていき、30代後半から40代には、配偶者を疎ましく思う・・・・。 恥ずかしながら、あまりに今の自分の状況を言い当てられているようでドキリとさせられます。 これが結婚生活で、それが幸せなのか?そして、それでいいのか? そうしたことを考えさせられますが、結局、人生、結婚だけに限らず、自分次第で幸せにも不幸にもなっちゃうんですよね・・・。 幸せは気の持ちようといってしまえば、この本は成り立たないような気もしますが、週末に一気に読んで、そうなるかぁ・・・と納得も行く結末でもありました。 読みやすく、スリリングな本でした。
2投稿日: 2015.04.20
ビジネスマンのための「行動観察」入門
松波晴人
講談社現代新書
現状を眺めるのではなく「観察」する
職場でどういう行動を取る人が出世するのかとか、どういう行動が疎まれるのかとかそういう関係の本と思っていましたが、 全く違っていました。 そういったありがちな人間関係本ではなく、状況を観察し、課題に対する問題点を認識し、改善のための手段を得るための 「行動観察科学」という分野の事例をまとめた本です。 「行動観察科学」という分野があるらしく、著者は論文発表もし、大学で講義も行っているようですが、行動観察の要点や ノウハウは全く語られておらず、ただ「気づき」が重要程度しか理解できませんでした。 「気づき」は、同じ環境にずっといるとなかなか得られるものではないです。 「気づき」こそが重要であれば、何らかの着想が得られないと仮説も改善案も立てられないわけですから、 行動観察科学を自分の環境改善に応用することが極めて難しいと感じます。 素人に分かりやすくするために書いたのだろうけど、それがかえってこの方の経営する会社の宣伝本っぽく なってしまっているところが残念です。 テーマ自体は面白いと思うので、いっそ、とことん社会科学の作法に則った本格的な論文形式の内容で読んでみたいです。
2投稿日: 2015.04.18
キリスト教入門
島田裕巳
扶桑社BOOKS新書
信仰から一歩引いて見る
宗教に関する入門本は、えてしてその素晴らしさを伝えているものが多い。そのため、その根拠となる資料(聖書や経典)がいかに素晴らしいかを説いて終わってしまっている感がある。 しかし、この本はそういった視点ではなく、「信仰」から一歩引いて、この宗教の難しさは何か、なぜ日本で根付かないのか、なぜ他の宗教に寛容ではないのかといった視点で述べられており、興味深く読みすすめることができる。 多少、仮説の域を出ない部分があるが、読者を引きつけておくには、必要な部分でもあろう(この手法は著者の「ほんとうの親鸞」でも見られる)。 信仰を求めている方への「入門」ではなく、「宗教って何?」といった興味に対する問いに対する「入門」書である。
2投稿日: 2015.04.10
