あかんたれさんのレビュー
参考にされた数
97
このユーザーのレビュー
-
ちょっと!そこの男子!
津留崎優 / ヤングエース
リア喪によるリア喪のための慟哭に満ちたブラック4コマ
1
薔薇色の学園生活とかリア充とか、女子率の高い共学校とか、夢は破られるために観てるようなもんだよね!(断言
……閑話休題。
女子率の高い共学校なのにこれといって美人が居るわけでもなく、マジョリティーの圧…力で男子全員パシリ同様レベルの扱いをされ、それでもメゲずに抗う男子3人の、かなり背中の煤けた4コマです。
ネタがいちいちドス黒い上に男子の(女子からすれば)身勝手な視点がベースになっているため読者を間違いなく選びますが、ハマれば病みつきになるタイトルですね。 続きを読む投稿日:2014.01.02
-
ファンタジスタドール イヴ
野崎まど / ハヤカワ文庫JA
歳食った童貞は禄な事しません。
1
アニメ「ファンタジスタドール」のタイアップ企画小説であるにも関わらず、その作風の異様さ(著者の芸風としては割と普通のようだが)で話題になっていたので、興味本位で購入。
序盤~中盤までは気鋭の理論物理…学者の半生を描いた「SF版『人間失格』」。
終盤になって風合いの変わったキャラが出てきてから展開も変わっていき、果てに「そりゃねーよ幾ら何でも」とツッコミ入れたくなるような大事件が起こり、それを潮に主人公の人生そのものまで大変転。
もうラスト辺りは「ああ、何かこのノリ既視感あると思ったら、昔『電車男』が流行った頃に当てつけて刊行された『電波男』だわどいつもこいつも」という世界。
感想を一言で言えば表題の通りとなりまして。
中々不思議なノリで、アニメ本編より(別な意味で)面白かったです。 続きを読む投稿日:2014.01.02
-
グラスホッパー
伊坂幸太郎 / 角川文庫
巧みな伏線と複数視点で描かれる、現代殺し屋群像
2
愛妻を車でひき殺された主人公。しかし運転者に故意どころか悪意まで窺われるのに微罪という顛末。さあどうする!?
そこで復讐を目論む主人公だが、相手は裏社会で相当の顔。ならばそこに自ら踏み入るよりない。物…語はこの段階からスタートします。
メインの主人公は上述の素人。それ以外に2人のプロが語り部パートを受け持つ格好の、複数視点でのストーリー展開。
それぞれが当初無関係だった筈なのに、ある事件を切っ掛けに全員が当事者として関わる羽目になってしまい、さあトーシロのメイン主人公はどうするどうなる、そしてこの騒動の元になった事件の真相は何なのか。
それぞれの語り部パートで提供される情報が絡み合いもつれ解れた末にスパッと決着させる展開はお見事。
リーダビリティーの高い文体でもあるので、一気に読了できます。 続きを読む投稿日:2014.01.02
-
NieA_7 Recycle
安倍吉俊, gK / ヤングエース
安倍吉俊氏の漫画家業の出発点
3
個人的に色々と関わったタイトルではあるので中立的に語るのが難しい所ではあるのだが。
lainのキャラデザインなどで注目を浴び、今やリューシカ・リューシカ連載中の安倍吉俊氏の商業誌デビュー連載作です。
…同名アニメとのタイアップ連載でもあり既に其方を観た人も多いでしょうが、こちらも下品・悪趣味な危険球ギャグをポンポン繰り出しつつ、時折しっとりした描写の妙を楽しませてくれます。
惜しむらくは、電子化の際にコントラストを少し上げて欲しかった。
枠線を含めた全てを手書きの薄墨(?)で起こしているため、紙で見ると味わいを感じるのだが、電子端末では可読性が少々悪くなってしまっている。 続きを読む投稿日:2014.01.02
-
悪行の聖者 聖徳太子
篠崎紘一 / 角川文庫
史実から推理した人間・厩戸皇子
0
中々刺激的なタイトルだが、中身は割と堅実な歴史小説。
聖徳太子については人間離れした各種能力や斑鳩寺、六角堂、十七条憲法に冠位十二階などが知られているが、資料に残る足跡の少なさなどから、あくまで伝説上…の人物とする見解もあるが。
本書ではその能力は政治的ライバルへの対抗上、部下が勝手につけたハクと片付けた上で、旧来の皇位を継承する身と仏教信奉者としての価値観の板挟みで苦悩する皇子の半生を描いています。
じゃあライバルは誰かというと、これが自分のイロを女帝・推古天皇に祭り上げて皇室内外で好き放題していた豪族の蘇我入鹿。
まだまだ中央集権が確立していない時代だからこその、分の悪い勝負ではあったのです。
太子の悩みや懊悩に至る考え方がやや現代的で軽く首を傾げたくなる所もあったものの、古代史キー・パーソンの生き様を知るには面白い書物かなと。 続きを読む投稿日:2014.01.02
-
はなとゆめ
冲方丁 / 角川文庫
時代小説二作とは趣が違う歴史小説
6
天地に光圀と、男の心意気とか侘しさを熱く描き出した著者の新作という事で、事前調査もせずに勢いだけで購入。
タイトルが……うん?白泉社?(それは違う とか思ったりしたけれど、内容的にもかなり違うタイプの…ボール投げてきたなという感じ。
「この世をば望月と…」を詠んだ事、安倍晴明の上司としてなどで知られる平安宮廷政治の頂点・藤原道長の弱さやドス黒さを、ライバル側の中宮やそれに仕える清少納言の側から描いております。
(主人公が清少納言故に、語調は抑えながらもかなり辛辣)
現世的な栄華や絆は儚いけれど、心から愛し合えた者同士の幸せは一瞬であれ永遠の輝きを放ち、魂で結ばれた絆は永遠である事が淡々と描かれていきます。 続きを読む投稿日:2014.01.02