gokuriさんのレビュー
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8
このユーザーのレビュー
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孤島の鬼
江戸川乱歩 / 東京創元社
乱歩が好きなら必読の作品
6
江戸川乱歩の作品でランク付けをするなら1位は、この作品しかない。
知名度や読みやすさでは、「屋根裏の散歩者」「人間椅子」の方が入りやすいので、入門用としては初期の有名な短編群をお薦めするし、初期短編を…ひと通り読んだ後は中編の代表作「陰獣」をお薦めしたい。
ただし、それらと比較しても、作品を素直に楽しめて、乱歩らしさをほどよく楽しめるのは「孤島の鬼」だろう。
もちろん、90年近く前の作品なので、文章表現や話のテンポに難はあるし、古典的作品の宿命である「どこかで似たような作品や場面を見たことがある」という既視感はあるかもしれない。トリック自体に稚拙さを感じるかもしれない。それでも、作品に漂うインモラルな空気を是非感じて最後まで楽しんでほしい。乱歩に興味を持った方には是非お薦めの作品。 続きを読む投稿日:2014.01.09
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陰獣 芋虫
江戸川乱歩 / 創元推理文庫
初期傑作群の最後を飾る名作
2
「陰獣」は江戸川乱歩の最高傑作「孤島の鬼」と並ぶ、彼の代表作にして、初期の作品群を総括する、乱歩らしい傑作だ。
「孤島の鬼」が乱歩らしさタップリながらも独立した作品であるのに対して、この「陰獣」は初期…の傑作短編である「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「パノラマ島奇談」を巧みに引用しつつ物語を盛り上げる道具として使い、甘く悲しい喪失感に満ちた結末には、発表当時の読者は「乱歩はこの作品を遺書として残したのではないか」と誤解したのではとさえ思ってしまうほどだ。
乱歩はこの作品の後に最高傑作の「孤島の鬼」を書いた後、「蜘蛛男」などの、乱暴な言い方だが、生活のための傑作を残していくが、「陰獣」「孤島の鬼」は彼にとって仕事抜きで書きたかった作品群の最後を飾る傑作だと思う。
文体は90年近く昔の作品なので、表現のくどさやテンポの遅さを感じるかもしれないが、初期の傑作短編とともにぜひぜひ読んでほしい。 続きを読む投稿日:2014.01.09