grimonaさんのレビュー
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爆速経営 新生ヤフーの500日
蛯谷敏 / 日経BP
~人も組織も変われる~組織改革のケーススタディになる本
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本書は、ヤフーの新社長、宮坂氏が取り組んでいる、ヤフーの組織改革のルポルタージュです。
組織を率いるリーダーの立場の人には、組織改革のケーススタディとなる本だと思います。
宮坂氏の行った組織改革の…ステップは次の通りです。
1. 会社の理念の再定義
2. 理念を実現するための明確な目標の設定
3. 目標達成のための具体的な戦略と戦術策定
言うまでもなく、この3つのステップは、組織改革の常道です。
しかし、ヤフーという、成功した大企業を、「理念」から再定義して改革していくのは並大抵のことではないと思います。
改革を推し進めるマネジメント層の協力者をつのり、社員に対しては管理型のマネジメント手法から、社員が自律的に動けるマネジメント手法に変えたり、そして、時には他社をも巻き込みながら、宮坂氏が情熱をもってヤフーの改革を進める様子が本書から知ることができます。
宮坂氏が社長に就任する前のヤフーは、増収増益を続けていたにもかかわらず、社内には閉塞感があったといいます。
実際、1ユーザーの立場で、ヤフーのサービスを使っていた私からしても、そのころのヤフーは、サービスは乱立し、SNSとのシナジーもなく、スマホで利用したいと思うサービスもなかったという印象でした。
要するに、PC時代のポータルサイトをひきづったままだったという印象です。
しかし、宮坂氏の体制になり、1年で、業界や市場関係者からの評価も高くなったと言われています。何より、サービスを使っている私も変化を感じている一人です。
まだ宮坂氏の組織改革は道半ばですが、これからどのようにヤフーが変わっていくか、楽しみでもあります。 続きを読む投稿日:2014.02.12
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リフレはヤバい
小幡績 / ディスカヴァー・トゥエンティワン
リフレ政策がもたらす国債の下落と円安への警鐘
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本書は、リフレ政策がもたらす円安と国債の下落への警鐘の書です。
2012年に発足した安倍内閣が掲げる経済政策「アベノミクス」。
これで広く知れ渡ったのが「リフレ」です。
小幡氏のリフレの定義は明…快です。
『リフレとは、意図的にインフレーションを起こすことです』
日銀総裁が金融政策の目標として2%のインフレを掲げているように、リフレはまさしくこの定義の通りです。
そのリフレがなぜヤバいのか?
それは、円安が国債の暴落をもたらし、銀行危機、そして実体経済危機につながる可能性があるからです。
円安から国債の暴落への考えられるシナリオは以下の通りです。
円安がもたらすドルベースでの国債価格の下落が国債の売りにつながり、売って得た円でドルを買うためさらに円安になり、そのためさらに国債が下落する、というように
『円と日本国債の暴落スパイラルが始まります』
そして、国債が暴落すると、国債を保有する金融機関の含み損が増え、それが金融危機につながり、更に実体経済の危機につながる可能性があります。
危機の具体的事例として、1997年の円安と日本の金融危機を例に説明されています。
さて、アベノミクスが始まって1年。
事実として、円安は進みましたが、幸いなことに国債の下落にはつながっていないです。
『円安で注意しなければならないのは、国債価格の下落、すなわち、名目金利の上昇なのです。逆に言えば、これさえ起きなければ、リフレ政策でも何でもやってかまわないと言ってもいいくらいです』
と小幡氏が語るように、今は結果オーライなのでしょう。
しかし、今後、さらに円安が進んだ時には、国債価格の下落には要注意なのかもしれません。
最後に、一言。
「ヤバい」、「暴落」、「危機」という言葉のイメージとは裏腹に、本書の内容はいたずらに不安をあおるようなトーンではなく、経済学と歴史的事実をもとに冷静に論を進めており、また、円安に頼らない日本のとるべき戦略なども語られており、参考になります。
続きを読む投稿日:2013.11.01
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オンリー・イエスタディ
石原慎太郎 / 幻冬舎文庫
読んでいて、羨ましくも懐かしくも感じられる濃密な交遊録
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本書は、石原慎太郎氏の交遊録です。
石原慎太郎氏の交遊録では、政治の回顧録「国家なる幻影」や、文壇、芸能界、スポーツ界の交遊録「わが人生の時の人々」があります。
田中角栄、渡辺美智雄、森繁久彌など…重なる部分がありますが、本書で登場する人物は、主に、趣味のヨットの世界や、経済界を中心に石原慎太郎氏と付き合いのあった人々です。
皆さん、その分野では功成り名遂げた人々です。
これは、石原慎太郎氏が、若くして芥川賞作家としてデビューし、その才能を芸術、政治と様々な分野に広げて来たゆえに、縁あった人々なのでしょう。
全18章で取りあげられたのは、一癖も二癖もあるけれど、一本気で、芯が通っていて、義理人情に厚い人たちばかりです。
そんな彼らと石原氏とが織りなす濃密な交遊が、読んでいて、羨ましくも懐かしくも感じられました。
続きを読む投稿日:2014.10.22