豚山田さんのレビュー
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最後の悲劇
エラリー・クイーン, 田村隆一 / グーテンベルク21
結末を目の当たりにして寒気が止まりません
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結末を目の当たりにして寒気が止まりません。こんな経験は初めてです。
よく目にするのはXとYが最高傑作とかいう評価ですが、とんでもない。むしろXYZは序章としか思えなくなりました。
主人公の特性、Yの衝…撃的な結末とその後の変化、Zからのパットの役割……それまで無秩序に撒かれていたものが、最後の数行で音を立てて吸い寄せられて来るのが分かりました。
これだけの事が明確であっても、詳細は読み手の想像に任せる、といった粋な文章にも痺れます。
本格に余り価値を見出していない自分でしたが、今回ばかりは参りました。これはハマる! 続きを読む投稿日:2014.02.13
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この中に1人、妹がいる!
田口一, CUTEG / MF文庫J
シリーズ物は止めて単発ミステリにしませんか?
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思春期男子の都合のいい妄想ばかりを掻き集めてできた物語、という印象です。
学校の美女は皆、実は俺のことが好きで、俺の気を引くために色仕掛けで競い合い、俺が歩けばハプニングからエロイベントに発展し、しか…もたまに「お兄様」なんて呼ばれてみたい……などという願望を持つ読者がいれば、この本にも需要があるということでしょうか。
とはいえ仕掛けの素材としては非常に面白いものを感じました。
これで伏線を張って、アリバイ工作、二重仕掛けのトリックなどで逆転に次ぐ逆転の展開だったら……
シリーズ物は止めて単発ミステリにしませんか? 続きを読む投稿日:2014.02.14
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シンメトリー
誉田哲也 / 光文社文庫
作者によるシリーズのスタンスを再認識できる短編集
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再読。短編集。
自分が本作に感じたのは、作者の「読み手の感情を揺り動かしていくぞ」という決意表明めいたメッセージでした。というのも全ての短編に一貫して、そこに良し悪し問わず一石を投じようという意図が透…けて見えたからです。
それが強引というか多少あざとさを感じるものもあり、だからこそむしろ強い意図として感じるのでした。
それは過去2作の痛々シーンからも読み取ることができますが、この感性は自分が物語に求めるものとも合致しており、そこが面白く感じさせてるんだろうなぁ、と得心した次第。
今後が益々楽しみになる一冊でした。 続きを読む投稿日:2014.02.17
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まりかセヴン 1
伊藤伸平 / 漫画アクション
おさげのまりかと作風に惹かれる
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おさげのまりかに惹かれて購入。
ウルトラマンのオマージュというか、パロディですね。
作風としては、ゆうきまさみ的なほのぼのさというか、独特の間合いがあり、妙にハマります。それでいて怪獣が暴れる⇒死者が…出るという、当然とはいえ深淵なテーマにも切り込んで行っているところは好感。
欲を言えば、パロディだけで終始するのではなく、メリハリとしてシリアスさも挟んでもらいたいような。
雰囲気が好みのシリーズです。 続きを読む投稿日:2014.02.17
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けんぷファー 1
築地俊彦, せんむ / MF文庫J
笑いに「粋」を感じる一作
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氏の作品は「ライオット」に続き2作目です。
なるほど、どうやら自分はこの方の文章は嫌いではないようです。
ラノベに必須の要素としてお笑いがあるのかはともかく、本作にもその要素が多分に含まれています。が…、案外くどくなくて好感、というのが印象です。
笑わせたいポイントでも、大騒ぎせずにさらっと流している感じがいいんですよね。「粋」という言葉が適切かは分かりませんが、本作にはそれがある気がしています。
とはいえ反面、比喩表現は粋じゃありませんでした。逆に読者を混乱させてどうすんの、と思わず脱力です。
内容? 平坦でした。 続きを読む投稿日:2014.02.19
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感染遊戯
誉田哲也 / 光文社文庫
姫川玲子を超えた姫川シリーズに感涙
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唖然です。
外伝的短編集? いやいや、3巻の伏線も回収した長編以上に壮大なスケールの一冊でした。
しかも今回は姫川の影響を中心に据えつつも視点を別に移すことで、より作品の幅を広げることに成功しています…。それでいてコンパクトで間延びしていない。読者に同調や反感を抱かせるテーマも相変わらず。
もう贅の限りを尽くしてます。
ところで、犯人の主張は作者のそれとつい深読みしてしまいますが、結局はそれを警察が抑えねばならない所に本作への苦悩が伺えるような。
まぁ、だからこそ今回はガンテツだったのかとも。そう思えば尚更奥が深い。 続きを読む投稿日:2014.02.23