夏星さんのレビュー
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エクサスケールの衝撃
齊藤元章 / PHP研究所
最初は眉に唾をつけて読み始めたが……
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本書が話題になっていると知り、購入して読み始めたのが17年12月下旬である。ふと、スーパーコンピュータは今、どうなっているのかと気になって検索したところ、著者が12月上旬に開発費不正受給で逮捕された…ことを知った。ある意味でそれが「エクサスケールの衝撃」だったが、買ったのだから最後まで読もうと決めた。
不正受給で捕まった人が書いた本と身構えたながら読み始めたのだが、最後まで読み切り、この本と著者のスパコンにかける情熱を知り、すっかりファンとなってしまった。また本来なら日本と日本国民がもっと積極的にスパコン開発を支援してしかるべきところを著者に重荷を負わせて不正受給という犯罪に追い込んでしまったことは慙愧の念に耐えない。
著者である斎藤氏という日本にとってなくてはならない人材が失われ、ただでさえ中国に遅れをとっている日本のスパコン開発がさらに困難となってしまったことは本当に残念でならない。医者であり、実業家であり、外国生活で養われた国際感覚を持ち、日本の将来のことをこれほど真剣に考える人材は他にいないだろう。叶うことなら、斎藤氏の早急の社会復帰を望む。 続きを読む投稿日:2018.01.01
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夏への扉
ロバート・A・ハインライン, 福島正実 / ハヤカワ文庫SF
今でいうライトノベル的展開が微笑ましい
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●感想
SF好きな人にしたら「名作を現代エンタメ小説と一緒にするな」と怒られてしまうかもしれないが、やはり学生時代読んでいて親しみやすさを感じたのはその物語の展開にあった。
SFの古典的名著とか金字…塔とか超大作とか、読んだことのない人にとっては読むのに少しばかり勇気が必要な、そして実際、レビューの筆者も最初のページをめくるのにはなかなか勇気が必要だった本作。
だが、本作にそんなものは必要なかった。これから購入を検討されている方にはどうか肩肘なぞはらずに今月発売されたエンターテイメント小説を読む気分で読んでほしいと思う。 続きを読む投稿日:2016.10.15
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うつを鍼灸で治す
齋藤剛康 / SBクリエイティブ
軽度うつをテーマとした一般の人向けの鍼灸本
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東洋医学の鍼とお灸での治療を分かりやすく簡単に紹介している。
東洋医学というと気の流れ、陰陽論、五行論など、漫画かゲームでしか聞かない単語や考え方があり、現代西洋医学に慣れ親しんだ現代日本人にはハー…ドルが高く感じるかもしれない。しかし、この本は東洋医学的な考え方を噛み砕いて紹介している。その上、鍼灸院の相談する時のアドバイス、セルフケアの方法なども載せられているので一般の人が東洋医学に触れる第一歩に適した本だと思う。
●購入を考えている方へ
東洋医学、特に鍼灸での経絡治療などは人によっては眉唾もののように感じる人もおられると思う。そのこと自体は個人的には構わないと考えている。むしろ常に苦言を呈されているほうが鍼灸学の研究発展に有益とすら思う。問題は逆に東洋医学にオリエンタルな神秘性を過剰に抱いている人だ。鍼やお灸は万能な霊薬などではなくできること、できないことがあることを頭に入れて読まれることをおすすめする。 続きを読む投稿日:2016.10.04
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灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ
十文字青, 白井鋭利 / オーバーラップ文庫
人によっては文章が気になるかもしれない
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一巻、二巻を読んだ感想
最近は異世界転生で主人公が強いというのが流行りであるが、あまりにそういった物が氾濫してきた為なのかこの作品の「主人公達は基本的に弱い」というスタンスがとても目新しく感じるかもし…れない。(時代が一巡しただけかもしれないが)
テーマも堅実で物語の展開自体は感情移入できて楽しめる。
しかし、文章が人によっては慣れるまで時間がかかるかもしれない。慣れる前に読むのを辞めてしまうかもしれない。本書は三人称のト書きに時折、主人公の一人称の言葉が挿入される自由間接話法が使われる。かなり多用される。あまりに使うのでもう一人称でよかったのでないかと思うほどに「文体としては」不安定な文章をしている。
これを作者の持ち味として楽しむか、やはり文体としての安定を求めるかで本書への意見は分かれるのではないだろうか。 続きを読む投稿日:2016.02.15
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AI vs. 教科書が読めない子どもたち
新井紀子 / 東洋経済新報社
酔いを醒ましてくれる良書
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AIという言葉に、夢中になるあまり、過度な期待が膨れ上がっている。という主張は何かのメディアでたまに目にすることがある。
しかし、結局、それ以上のAIへの期待がこもったニュースに押し流されて…記憶には留まらずなんとなくそういった主張もあるという認識で終わってしまう。その主張の中身を確かめもせずにだ。
本書は、AIに夢中になる社会に冷水をぶっかけてくれる。AI技術に期待するなら、必ず一度は本書を読んで頭を冷静するべきだと思う。いい自省の書となった。
ただ、ベーシックインカムは早計とした部分やブルーオーシャン戦略の部分などをもう少し詳しく書いて欲しかった。著者の主張が非常にデータと論理を重んじているだけあって、その部分がとってつけたような印象を受けてしまった。 続きを読む投稿日:2018.04.04
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昆虫はすごい
丸山宗利 / 光文社新書
「へぇ、そんな昆虫もいるのか」という発見がある本
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●この本の良い点
・昆虫を知らない人間でもいろいろな昆虫を紹介していて好奇心が満たされる
・ところどころに昆虫の特性の説明があり、これも面白い
・新書にしては写真が多い
●この本の悪い点(…但し、必ずしも人にとって悪い点ではないことに留意)
・虫の写真が多い為、電車の中で読むのに気を使う
・テーマを決めて紹介しているが、「こんな昆虫もいるよ、こんな昆虫もいるよ、こんな昆虫もいるよ」と次々と紹介されるので、やや網羅的な印象を受ける。(但し、興味のきっかけにはなる)
●総評
昆虫な苦手な人には見るのもおぞましい本だろうが、昆虫について少しでも興味があるのなら読んで損はない。昆虫の種類は多いので、どうしても浅く広くな内容になってしまうが著者の経験談も軽くまじえたエッセー的な部分もあるので、昆虫図鑑よりは読み物として手を出しやすい。
●こんな人向け
・昆虫に興味があるが、その分野について知識のない人
・単純に昆虫が好きな人 続きを読む投稿日:2017.08.04