shirokuma-pandaさんのレビュー
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グッド・ガール
メアリー・クビカ, 小林玲子 / 小学館
ミステリーの原点 (素直な気持ちで 読みましょう)
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シカゴの治安判事娘ミアが 誘拐される。誘拐したのは、ある男から誘拐の依頼を受けたコリンという男。コリンは誘拐の目的を知らされていないが 恐らくは営利目的かと想像している。
ミアは 美術が好きでその方向…に進みたがったが 法律家で厳格な父親は それを絶対に認めようとはしてくれない。 ミアは18歳になるまで待って、家を出て自立しながら美術の勉強を始める。そして25歳の誕生日に誘拐されるのだが、警察の捜索によって、無事に解放されることになる。 しかし、ミアの記憶は失われていて 誘拐の真相が不明のままである。
物語は、ミアが解放された前と後との時軸を境にして、関係者の心象や事件捜査の進捗を語る形で進行してゆく。 そして 語られる 衝撃的な事実 とは。
物語の 進め方も見事であるが、最後に待っている衝撃!
あまり 先読みしないで 素直な心で 読んだほうが 面白さが増します。(難しいでしょうが…) 続きを読む投稿日:2016.12.21
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しろいろの街の、その骨の体温の
村田沙耶香 / 朝日新聞出版
女の子って! 私は何点のシンデレラ?
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小4の女の子 結佳が 中3の新学期になるまでの 成長と挫折の物語、と言ってしまうのは この小説を正しく伝えたことには全くならない。
誰しもがそうであるように 自分が傷つくことを惧れ、周りの空気をよみ…ながら逃げ惑っている(自分の棲む場所を探している)自分に苛立ちながらも、一方で
そうした自分に違和感を何となく感じている自分。 それが、大嫌いな自分が住んでいる住宅団地の開発の停滞が、ある時から、急に開発が進捗し始めたこととリンク
するかのように、そんな自分から 解放される道を選ぶことになる。
女性の好きな童話といえば、「シンデレラ」「白雪姫」などがその代表とされているが、それらは『自分が(人よりも)幸福を掴めるか』と
いう物語ともいえる。 だから?女の子は幼い頃から 周りの女性と 自分との比較に余念がない、と 単純化してみた時、
女の子はなんと面倒な現実を生きているものか 男のそれに比べ。 (それを 繊細さとよぶのも違う気がするが)
伊吹君という、まことに(都合の)よい子(=好青年という意味です)の存在が、彼自身の成長につれて結佳自身も感化されながら、この物語は 怖いくらいな血なまぐささと共に
進んでゆく。
女の子が、可愛くて、甘くて、柔らかいと思っている男。 女は何考えてるのか分からん、と思っている男性は、これを読んで 女性嫌いになっても 私の関知するものではございませんので
続きを読む投稿日:2016.08.10
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教場
長岡弘樹 / 小学館
社会の縮図
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この小説(短篇集)は、果たして「警察小説」のジャンルに収まるものななおかどうか。 確かに 「警察学校初任科(警察官を目指す者が 一人前の警察官になるための教育を受け そこで不適任者と認められれば 退学…処分を受けることになる)」という 閉ざされた空間のなかで そこに 年齢もそれまで過ごした社会経験も様々な生徒たちと 彼らを指導する教官、特に 風間教官との出会いが 描かれているのです。
この小説は しかし、この特殊な学校の内側を単に描いているだけではなく、また 単にこの閉ざされた空間で起きる 謎解きを 描いている ばかりではありません。 むしろ、この限られた環境の中での 生徒一人一人の個性と 風間という卓越した指導者の交流を通じた、ドラマが主に描かれていて読み手に深い感銘を与えます。 勿論、警察小説ですので、読後は少し 警察官に親近感が湧きますが、オッツト それは この風間教官に育てられた警官かどうかを 充分 吟味する必要があるかも知れません。 何故、風間教官が こんなに 生徒に厳しくも 時には 優しくも接しているのか?は、このシリーズのパート2の最後に その答えがあります。 この小説に 共感を覚えた方は そちらも手にされても 損はないか と。 続きを読む投稿日:2016.07.21
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もう過去はいらない
ダニエル・フリードマン, 野口百合子 / 東京創元社
88歳と78歳の知恵比べ! 決して高齢者と侮るな。
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近々『死』がやってくることは間違いない。既にその兆候は日増しに顕著である。現に、前作で負った傷が故で歩行記が手放せない状況だ。
携帯は使えても、孫のテキーラが持っているスマホのことは分からないし、孫の…はなし《GPS? SNS?ets.》は、正直 理解不能だ。
だが、それがなんだ! 若い奴らはそんなものに答を頼り切ってるが、長い人生を生きてきて学んだことはそんなものでは学べない。
だから 奴イライジャの考えている答は 違うものだと直感的にわかるのだ。
ストーリーは、現在と過去の 約40年を行き来しながら進行してゆく。 40年の年月は、はたして長いものなのか 案外短いものなのか?
ユダヤ人の強制施設でアウシュビッツよりももっと酷いところがあった「行き先は?アウシュビッツ!よかった」らしい。
だが、88歳にマグナムが撃てるのか?
続きを読む投稿日:2016.02.02
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悲しみのイレーヌ
ピエール・ルメートル, 橘明美 / 文春文庫
犯人は? えっ!
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主人公カミーユとそのチームが それぞれの個性で事件を解決する展開は「その女アレックス」と同様ですが、今回も死体がゾロゾロ。
犯人像も 事件の時間的経緯とともに二転三転 と変わり、物語はミステリーの王道…を進みます。
犯人の非常に偏執的で緻密な犯行の結果は、もしこの次に カミーユが登場する物語があるとすれば(また、そうして欲しいですが)重大な影響下に
おかれることは間違いありません。 その場合、カミーユは今回の事件とどの様な折り合いをつけているのでしょう?
作者が今回 この結末をもってきたことは、あるいは このシリーズを終了するつもりで描いたのかもしれない、と心配ですが… 続きを読む投稿日:2016.01.22
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64(ロクヨン)(上)
横山秀夫 / 文春文庫
先に映像で見てしまった!方へ
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つい先ごろNHKで『ロクヨン』を観てしまったのですが、アレはアレです。従って、本で読んで、コレはコレです。(何のコッチャ!)
私のように、先にドラマで観てから新たに活字で読んでみても 面白さには全く遜…色は無い。 むしろ、(当然、本の方が)心理描写が加わって、物語に新たな肉付けがされた充足感があります。 これまで多くは、「ドラマで観たからイイヨネ」でしたが、作品によっては、このような経験もさせてくれるのですね。 続きを読む投稿日:2015.06.15