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mag2000さんのレビュー
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  • 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

    色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

    村上春樹

    文春文庫

    やはり別格

    本当にいい文章。こういうものを「小説」というのだ!村上作品の多くはためいきとともに読了。それが私のくせのようだ。さすが他の小説家の追随を許さない村上文学。個々の表現も優れているが、全体に貫かれる雰囲気が唯一無二で、いかに作家が考え抜いて書いたかが感じられる。それでいてリズムもいい。感動するとか心に残るというのではなく腹にどん!とそれも静かに入りこんでくる登場人物の感情。現実に向かい合い人生を切り開く主人公の濃密な時間がまるで自分のことのように思えてくる。でもよく考えてみると彼への仕打ちはひどいものだ。

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    投稿日: 2017.04.05
  • 坂の途中の家

    坂の途中の家

    角田光代

    朝日新聞出版

    嫌な感じだけどひきこまれます

    味の濃い脂っこいチャーハンを食べた後のような心地です。角田作品を読んだ人特に男性に、この年回りの女性が皆こんな風に思って生きてると思われたら嫌だなと思います。私は乳児だった頃とてもおとなしく、必要以上に泣かなかったそうで、母は近所の人から「赤ちゃんいなくなったのかと思った。病気なの?」と言われたそうです。母は子育て時期に小児科の医療関係者や近所の人、親類などから無神経な言葉を山ほど受けたといいます。今ではずいぶん配慮するようにはなったでしょうが、態度や表情で傷つける人々は絶えないし疑心暗鬼も世の常です。

    1
    投稿日: 2016.10.20
  • 小説 君の名は。

    小説 君の名は。

    新海誠

    角川文庫

    よんでよかった

    すばらしかったです。「時をかける少女」とか「転校生」とか「とりかえばや物語」とかこういう設定の話はいろいろあるので先入観はしかたないのですが、読み終わってみるとこれはまた別の良さがあります。おもしろおかしさと切なさとのバランスが絶妙で、美しい情景の描写も沁みる、よく練られた小説だと思いました。 今は映画が大ヒット中なのでブームが一段落したら映像化も見たいです。

    2
    投稿日: 2016.10.20
  • 福家警部補の挨拶

    福家警部補の挨拶

    大倉崇裕

    創元推理文庫

    福家警部補ファンになりました

    四編すべておもしろいけど「愛情のシナリオ」はほろっとしてしまった。「月の雫」もいい。福家さん、ものすごい酒豪!やはり私も古畑任三郎を想起しました。犯人たちが魅力的だという所も同じ。だからこそよりいっそう犯罪が悲しく感じられて効果的なのです。続きも追います。

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    投稿日: 2016.08.26
  • 光る壁画

    光る壁画

    吉村昭

    新潮社

    久々に大満足の読書

    最近胃の内視鏡検査を受けたので興味を持って読んだ。さすが大御所だ。文章が淡々と簡潔で、決して感動を煽るような文体じゃないのに登場人物たちの情熱がちゃんと伝わってくる。公私の間で悩む主人公の設定はフィクションらしいが、これで開発物語として単調になるのを免れていると思う。終戦直後で物資も貧しく素材もまだ原始的なものしかなかっただろう。開発を支える職人たちの技は将来も絶対滅びてほしくないものだ。この人たちの努力が元になって様々な技術革新が私たちの健康や治療に貢献してくれていると思うと感謝の気持ちがわく。

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    投稿日: 2016.08.22
  • 頭は「本の読み方」で磨かれる

    頭は「本の読み方」で磨かれる

    茂木健一郎

    三笠書房

    読みたい本が増えます

    中高生向きの読書を推奨するための啓蒙書かなと思われます。とてもわかりやすく学者臭いところもなくて好印象です。やはり一流の人は広範囲に読み、あっさりとじっくりのバランスもよく知っている。私も読書は好きだし、自分の読書の質を高めたいという気持ちも少しはあるので、若者向けであってもこの種の読書案内のようなものをたまに読んで確認作業をしつつ自分を鼓舞したいと思うのです。ファウストが読みたくなった。

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    投稿日: 2016.08.14
  • 韓国が漢字を復活できない理由

    韓国が漢字を復活できない理由

    豊田有恒

    祥伝社新書

    豊富な知識は説得力

    和製漢語を中国人が使っていることは知っていたがハングルもそうだったとは知らなかった。漢字かなまじりの日本語がいかに優れているかは置いておいて、ナショナリズムに縛られて文化まで知らないうちに狭められるというのは窮屈で本末転倒だと思った。本書は韓国文化に造詣の深い著者が例をあげて韓国の文字や言葉を紹介し、ハングル一辺倒の教育になった経緯を書いている。今までハングルなんて興味もなかったので初めて知ることが多くおもしろかった。要するに中身はおいしいから好き、でもパッケージで日本製であることがばれるのが嫌みたいです。

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    投稿日: 2016.08.14
  • 青い鳥

    青い鳥

    重松清

    新潮社

    再読

    風変りで優秀教師とは程遠い村内先生を主人公にした短編集。重松作品だから予想通り涙と鼻水が出ます。私も、「みんなで・・・」も、「ふつうに・・・」も嫌いだったから、各編に登場する中学生たちの心情を想像すると身につまされる。ハムスター、カエル、カスタネット、ハンカチ、おまもり、ぬいぐるみと主人公を支える脇役たちが生きていて、中学生という最も残酷な生き物に寄り添う先生の信念と優しさをみごとに浮き彫りにしています。村内先生はきっとどこかにいると信じたいです。

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    投稿日: 2016.07.13
  • 珈琲色に夜は更けて シリーズ小さな喫茶店

    珈琲色に夜は更けて シリーズ小さな喫茶店

    山川直人

    ビームコミックス

    みんなにすすめたい 

    待ちに待った山川さんの新刊。すごくいい!一度目より二度目、三度目はもっと。読むほどに心にしみ入る。この人のマンガは面白いというより、味わい深いと言いたい。期待を上回る馥郁とした珈琲の香り。「病気の名前」「古い本」「第四会議室」「匂う女」「恋人を夢の中に置き去りにした話」がよかった!いやいや全部よかった!ぜひお勧めしたい。みんなに。寝る前もう一度読もうっと。

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    投稿日: 2016.06.27
  • 深川澪通り木戸番小屋

    深川澪通り木戸番小屋

    北原亞以子

    講談社文庫

    プロローグの連作短編集

    人びとの心の痛みを包み込んでくれる木戸番のわけありっぽいご夫婦の話。とても評判がいいので読んでみた。個々の短編に登場する人たちがとても近く感じる。ねたみ、そねみ。見栄と嘘。本当の自分はこんなじゃないと思ってる人たち。みんな今もどこにでもいる人たちだ。でもこの木戸番夫婦のようにやさしく耳を傾けてくれる人は稀にしか出会えない。笑兵衛さんはかなりいい男らしい。お二人の事情もわかったところで、続きも読みたいです。

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    投稿日: 2016.06.27