gushwellさんのレビュー
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秋月記
葉室麟 / 角川文庫
信じた道をひたすらまっすぐに貫く男の話
3
九州の小藩秋月藩の財政再建に奔走した「間小四郎」の半生を描いたこの作品、期待以上でした。
家老宮崎織部の専横を正すために、志を同じくする仲間たちと立ち上が、いわゆる「織部崩れ」を為すまでと、その後の…小四郎の苦悩の対比が実に良かったと思います。
他人の目を気にせずに、自分が正しいと信じた道をひたすらまっすぐに貫いていく主人公間小四郎の姿に心うたれました。 続きを読む投稿日:2015.08.03
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算法少女
遠藤寛子, 箕田源二郎 / ちくま学芸文庫
学ぶことの楽しさが伝わってくる
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江戸時代(1775年)に出版された和算書『算法少女』にインスパイアされて書かれた少年少女向け小説。ひらがなの割合が多くてちょっと読みにくい所もあったけれど、とても面白く読めました。40年前の1973年…に発表された小説とは思えない新鮮さを感じました。
算法好きの父親に手ほどきを受け、和算好きになった主人公の少女千葉あきが、和算書『算法少女』を出版するお話です。少女あきの和算に向き合う姿が生き生きと描かれています。
和算に対する興味が益々強くなりました。数学に興味のある人はもちろん、興味の無い人にも十分に楽しめる作品だと思います。
学ぶことの楽しさが伝わってきます、子供たちに薦めたい一冊ですね。 続きを読む投稿日:2013.10.16
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赤ひげ診療譚
山本周五郎 / 新潮社
心にしみる作品
2
長崎で医学の勉強をして江戸に帰ってきた若い医師の保本登は、小石川養生所で見習い医として働くことになります。幕府の御番医になるつもりで長崎へ遊学した彼には、「養生所」の勤務はとても不本意なことでした。そ…んな彼は、医長である「赤ひげ」に対し反抗的な態度をとります。しかし、「赤ひげ」の患者への接し方をまじかで見るうちに、次第に赤ひげに引き付けられ、「医」というものを真剣に考えるようになり、医師として人間として成長して行きます。
8編からなる短編集の形式をとっていて、ひとつひとつの話が独立していながら連続性がある小説です。
なんて表現したら良いかわかりませんが、一つ一つのお話が、隙がなく、心にしみる作品だと思います。 続きを読む投稿日:2015.12.29
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樅ノ木は残った(上)
山本周五郎 / 新潮社
静かに進む物語。ラストは緊張感とスピード感で圧倒される
1
「伊達騒動」といわれる伊達家のお家騒動において、極悪人の烙印を押されていた原田甲斐に対し、新しい解釈を与えており、闘い抜く人間の姿を感動的に描いたとても重厚感のある歴史小説です。
ひとつの大事を成し遂…げるために孤独に絶え、家族をも犠牲にせざるを得なかった原田甲斐。封建時代と今ではあまりにも状況が異なりますが、組織の中にいるものとして、どういった思いで彼が「伊達騒動」に立ち向かっていったのかを考えずには入られません。
一個人としての原田甲斐と組織の中で生きる男としての原田甲斐を内面から描き、たんなる英雄物語ではなく、「人間ドラマ」として読むものを感動させます。
静かに静かに(それでいて、読むものを引き付けて話さないエピソードが数々織り込まれています)話が進んでいくのですが、ラストはそれまでとは対照的に緊張感とスピード感があり、読むものを圧倒させます。 続きを読む投稿日:2015.12.29
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ロスジェネの逆襲
池井戸潤 / ダイヤモンド社
サラリーマンの必読書
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シリーズものだとと知らずに読みました。前作を読んでいなくても全く問題ありませんでした。
「下町ロケット」も良かったけど、この「ロスジェネの逆襲」も良いですね。
企業小説にしては堅苦しさがなく、とても読…みやすかったです。それにしても、主人公の半沢直樹、かっこ良すぎです。ここまで、爽快でスカッとする読後感は久しぶりのような気がします。これはサラリーマンの必読書(笑)ですね。エンターテイメント性に優れた傑作だと思います。 続きを読む投稿日:2013.10.16