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本読むアシカさんのレビュー
いいね!された数142
  • 共喰い

    共喰い

    田中慎弥

    集英社文庫

    作者の人柄にこだわるな

    この小説の中では、 方言を会話に取り入れ、小さな共同体が作りこまれている。 濃密な人間関係を避けられない彼らはの行動は、 そのなかでぐるぐると回らざるを得ないという条件に縛られる。 性と血をめぐる問題を扱うことにより、本人たちが気づきかけている 人と人の間が濃いことに対する窮屈さを一層浮き彫りにしている。 希薄な社会になれてしまった都会の人びとには、少々重いかもしれない。 だが、その重さを体験できるのが、本作である。

    1
    投稿日: 2013.10.05
  • 完訳 ギリシア・ローマ神話 上

    完訳 ギリシア・ローマ神話 上

    トマス・ブルフィンチ,大久保博

    角川文庫

    教養のため、というよりとにかくおもしろい

    とっつきにくいギリシャ神話やローマ神話の入門編です。 読みやすい語り口で、眠くなりません。 登場する神々や人々の名前が難しいのを少しガマンすれば 童話とかアニメとかの元ネタを見つけられるのも、また楽しい。

    12
    投稿日: 2013.10.04
  • 葬送 第一部(上)

    葬送 第一部(上)

    平野啓一郎

    新潮社

    これはただの伝記ではない

    音楽家ショパンと画家ドラクロワに関する実話をめぐる大作です。 まるで翻訳されているかのような文調によって、繊細に巨匠二人の心情に寄り添いながらも、 ダイナミックに二人の活躍と周りの人びととの関係性を描き出しています。 とっつきにくい歴史上の人物の中に、人間らしさを感じられるはずです。

    2
    投稿日: 2013.09.24
  • カラスの親指 by rule of CROW’s thumb

    カラスの親指 by rule of CROW’s thumb

    道尾秀介

    講談社文庫

    さわやかな読了感

    悲しい過去を背負っていても、どこかコミカルに繰り広げられる 詐欺師二人、そして彼らと組む姉妹二人と一人の青年による物語です。 詐欺の手口に感心し、彼らの人間関係の変化と壮大な計画を見守っているうちに、 騙されるのは、もしかしたらあなたかもしれない。

    0
    投稿日: 2013.09.24
  • 図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1)

    図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1)

    有川浩

    角川文庫

    気が付けば、とりこになっている。

    さっくりと読めます。 別冊も含めて全部で6巻ありますが、 もちろん読みくたびれることはないです。 物語の前提となっている図書館隊の設定もややこしそうに見えて、すっと入ってきます。 モチーフは少しいかつい(?)感じに見えますが、 もどかしい恋の物語が好きな人なら、読んでいて楽しいはず。 有川浩読まず嫌いのあなたも、一度手に取ったらページをめくらされますよ。

    2
    投稿日: 2013.09.24
  • わたしを離さないで Never Let Me Go

    わたしを離さないで Never Let Me Go

    カズオ・イシグロ,土屋政雄

    ハヤカワepi文庫

    小難しいことは、読んでから考えた方がいい。

    この物語では、一枚一枚皮を剥いでいくように真実がむき出しになっていきます。 焦らないで(ページをとばしたりしないで)、かみしめて読んだほうがいいとおもう。 賛否両論ありますが、少なくとも読んだことが時間の無駄と感じるようなことはないです。

    2
    投稿日: 2013.09.24
  • カラマーゾフの兄弟〈1〉

    カラマーゾフの兄弟〈1〉

    ドストエフスキー,亀山郁夫

    光文社古典新訳文庫

    とりあえず私はアリョーシャがかわいらしくて好きです。

    一度は読んでおきたい長編の名作といわれている「カラマーゾフの兄弟」。 最近出版されたこともあって、訳の日本語によってつっかかることはないです。 なにより、電子書籍だとこれだけの分量がある本でも重たくないというのもまた魅力的。 敬遠しがちな小説ですが、いざ読んでみたら抜け出せなくなるかも。

    0
    投稿日: 2013.09.24
  • 俺俺

    俺俺

    星野智幸

    新潮社

    「俺」が増えるたび、あなたは引き込まれていく

    亀梨和也主演映画の原作である本作は、小説としても十分読み応えのある作品です。 物語が進むにつれて世界に「俺」が増殖していく描写によって、めまいを感じるような想像へと導かれます。 超現実的なことが起こっているのに、語り手の手に取るようにリアルな感覚がたまらない。 同じような顔をした通勤電車に揺られているのにうんざりしかけているあなたこそ、 現実へ浸食しかけているこの架空の世界に酔いしれるべし。

    3
    投稿日: 2013.09.24
  • ジヴェルニーの食卓[電子特別版]

    ジヴェルニーの食卓[電子特別版]

    原田マハ

    集英社文芸単行本

    芸術家たちの、人間としての奥深い世界へ

    教科書、美術館、どこかのウェブサイト・・・ ドガ、セザンヌ、モネ、マティスの作品をそれとは知らずとも一度は見たことがあるはず。 彼らの作品の裏に隠された物語が、この本の中では綴られています。 美術に造詣が深い人も、今まで触れる機会があまりなかった人もともに楽しめるとおもいます。 日本国内にも、この本に出てくる芸術家の作品をを収蔵している美術館は多くあります。 例えば、東京・上野の国立西洋美術館はモネの睡蓮の絵を所蔵しており、 常設展示されているので開館日にはいつでもみられます。 それ以外にも、全国各地の美術館で行われている展覧会で見る機会が数多くあるので、 この小説を読んで気になった方は、足を運んでみたらいかがでしょうか。

    1
    投稿日: 2013.09.24