
世界は文学でできている~対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義~
沼野充義
光文社
「世界文学」とは、「世界の文学」じゃない。
世界文学を提唱した人びとのうちのひとりである デイヴィッド・ダムロッシュは、世界文学について次のようなことを主張している。 「世界文学とは、翻訳によって(価値を減ずるものではなく)価値を増すものだ」 日本では2010年あたりから「世界文学」の考え方が浸透してきており、 その最たるものは池澤夏樹個人編集の世界文学全集にある。 また辻原登などの現代作家による著作(「東京大学で世界文学を学ぶ」)も含めて 「世界文学」に関する本が少なからず出版されてきた。 この本はそのような系譜にある。 他に世界文学について書かれた本と比べて この本が対談形式であることは特筆すべき点であろう。 「世界文学」は専門家にとっても まだ地図も目録もできていない未踏の領域であるが、 この本はひとつのよい道しるべとなるだろう。
3投稿日: 2014.08.20
刑務所わず。 塀の中では言えないホントの話
堀江貴文
文藝春秋
サクサクと読んでフンフンとうなづいて
これまでに、こんな風に描かれた刑務所話があっただろうか。 まあ、重く受け止めずに サクサクと読んでフンフンとうなづいて 適当に読むというスタンスでいると 意外と足元をすくわれます。ご注意を。
2投稿日: 2014.07.18
学生時代にやらなくてもいい20のこと
朝井リョウ
文藝春秋
読み応えすっきりです
コミカルなのにネタに走っていない バランスの取れたエッセイ集です。 言うなればラジオに投稿される面白いエピソードみたいに、 フレッシュな話なんだけど、けしてベタにかたられているわけでもなく 読み応えすっきりです。 朝井リョウの作品をまだ読んだことがない人でも、 十分楽しめるエッセイ集になっています。 むしろ、これを入り口に朝井リョウを読み始めるのもありです。 (私の場合は、これを読んだ後に小説を読み始めました)
3投稿日: 2014.07.18
これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義
ウォルター・ルーウィン,東江一紀
文藝春秋
縦書きで読む物理は頭に入ってきやすい
物理と聞くだけで眠気が襲ってくる・・・ そんな人でも楽しく読み進められる本だと思います。 教科書では、まず物理の法則を説明して、 それから身近な例を紹介しますが、 この本では、まず身近な例を紹介してから 説明にするっと入っていきます。 ところどころでMITでのエピソードも書いてあったりして、 それもそれで興味深いものです。 そしてこの本を何よりも面白くしているのは、 文章だけじゃなくて講義で行った実験の映像も ウェブで見られるようになっていることです(英語ですが)。 アンドロイドで読む場合などは特に、同時並行で実験を見ることができて 読書体験を超えた読書になることでしょう。 文の調子が翻訳口調なのは少し気になる方がいるかもしれませんが それでも、著者の物理への愛が感じられる一冊になっています。
3投稿日: 2014.07.18
超ヤバい経済学
スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
東洋経済新報社
物の見方は決して一つではないのだよ。
普段、あまりこういうものは読まないのですが 放り出すことなく楽しめました。 目次を見てお分かりかとは思いますが、 実例と統計に基づいた、ユニークな題材が取り上げられていて、 そのなかで経済学に触れられるようになっています。 経済学という学問に肉薄する本というよりは 物の見方に対する示唆を与えてくれる本です。
1投稿日: 2014.07.07
人生はワンチャンス!- 「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法
水野敬也,長沼直樹
ミズノオフィス
ふざけたこの本は何なんだ・・・
なんて第一印象をもっとかもしれませんが、とんでもない。 印象論というか思い付きで書かれたような(おっと失敬) そこらへんの自己啓発本とはちがいます。 しっかりいろんな原典から参照されているので、 網羅的に「偉人」の話を読むことができます。 生真面目なあなたは、この本をきっかけに 原典を自分でたどってみるのもいいかもしれません。
1投稿日: 2014.07.07
思い出のマーニー 下
ジョーン・G.ロビンソン,松野正子
岩波少年文庫
二人の夏は、あなたの思い出になる
ラストに向けて、物語が繋がっていく様子には、 まるでいままで一本の糸と入して見ていたものが 一枚のきれいな布を構成していることに気づいたときのような 淡い鮮やかさと、そして言い知れない切なさがあります。 読み終わった時、二人の物語は、 自分が体験したことみたいに こころに残り続けるでしょう。
2投稿日: 2014.07.05
思い出のマーニー 上
ジョーン・G.ロビンソン,松野正子
岩波少年文庫
児童文学だからって、あなどれない。
海辺の小さな村での二人の少女にまつわる 味わい深い物語です。 一度目読んだら、その繊細な心理描写に引き込まれ 二度目によんだら、詩的ともいえるその風景描写の魅力に心奪われます。 もう大人になった人でも、 この本を読むのに遅すぎるということはないと思います。 2014年夏公開のジブリ映画の原作でもありますね。
3投稿日: 2014.07.05
氷点(上)
三浦綾子
角川文庫
まずは気軽に読み始めてはいかがでしょう。
「氷点」は名作とは知っていたものの、 正直なところ本の厚さに気おくれしていました。 でも、電子書籍だと不思議と とっつきにくさが和らいだような気がします。 とはいえ、上質なミルクレープのように 綿密に人間模様が編み込まれた小説です。 この世界観に引き込まれて、 そしてこちらに戻ってきたときの 形容しがたい感覚は、読んだ人だけの特権でしょう。
1投稿日: 2014.07.04
新訳 マクベス
シェイクスピア,河合祥一郎
角川文庫
これを読むと、ほかの作品が理解できるようになったり・・・
いわずもがなのシェイクスピアの名作。 この作品からの引用やモチーフは、どこかしらで触れたことがあると思います。 血を洗い落とそうとヒステリックに手を洗うマクベス夫人の姿は、 今日でも多くのサスペンスドラマの犯人たちが踏襲していたりします。 児童向けの作品ですが、「黒魔女さんが通る!」にも、マクベスからの引用があります。 とっつきにくいですが、手に取ってみると 意外とすいすいと読み進められます。 手元にあっても古典特有の威圧感がない電子書籍でたっぷりと味わってください。
2投稿日: 2014.07.01
