ラピスラズリさんのレビュー
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官僚の責任
古賀茂明 / PHP新書
官僚の生態を熟知する著者の提言
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官僚組織の生態、官僚という人種の思考回路が実によくわかりました。単なる官僚批判ではなく、官僚の生態を熟知して、彼らを使う方法論を提示。提言はエネルギー問題から年金まで多岐にわたっています。
投稿日:2014.08.25
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脱グローバル論 日本の未来のつくりかた
内田樹, 中島岳志, 平松邦夫, イケダハヤト, 小田嶋隆, 高木新平, 平川克美 / 講談社
若手二人の論客がスパイスを利かせる
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このメンバーが集まれば、流れとしては反自由主義、反グローバル化、反橋下的政治に行きつきます。しかし、イケダハヤト・高木新平という二人の若手論客の存在がいい触媒となって、その後のオジサンたちの対談も熱を…帯びていきます。最後の凱風館(内田先生の私塾)での対談ではTPPの本質へグイグイ迫る議論に、自分自身も色々と考えさせられました。 続きを読む
投稿日:2013.09.27
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もしアドラーが上司だったら
小倉広 / プレジデント社
アドラーの「目的論」をはじめとする考え方がよくわかる本
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タイトルだけ見ると、ドラッガーの「マネジメント」の解説本の二番煎じか?と思ってしまいますが、買って読む価値はあると思います。
アドラーの心理学の「目的論」の考え方は、その本質を理解するのが意外に…難しい。この本は、アドラーの心理学をレクチャーしてくれる上司(ドラさん)と主人公のリョウとのやり取りを通して、アドラーの心理学をやさしく紐解いていく。
アドラーの心理学には、目的論以外にも共同体感覚や善の選択、ライフスタイル(自己と世界についての意味づけ)といった鍵概念が多くありますが、この本は『社会に出て数年、伸び悩む若者が、自己の成長のために何をなすべきか』という焦点に絞り込んで解説しているため、極めて解りやすいです。特に、大学生から20代の若い世代の人が読めば、大げさではなく生き方が変わるかもしれません。 続きを読む投稿日:2017.07.03
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不機嫌な姫とブルックナー団
高原英理 / 講談社
コンサートという一期一会の空間が織りなす人間模様
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クラシック音楽に少しでも興味がある人なら、かなり楽しめる小説です。
ブルックナーはオーストリアの作曲家で、後期ロマン派の作曲家。作品は交響曲に集中しており、70分を超える長大な作品と、単純なモチ…ーフを煉瓦のように積み上げて建築物を造るような地道で重厚な作風が特徴です。私を含めたクラシック音楽愛好家の中でも好き嫌いが分かれる作曲家で、コンサートは「ブル・オタ(ブルックナーをこよなく愛するオタクの意)」と言われる人たちが大挙して押し寄せる。男性から絶大な人気があり、ブルックナーが演奏されるコンサートでは男子トイレが大混雑する逸話があるほど。
この小説は、一般的には女性には珍しいと言われるブルックナー愛好家のゆたきと「ブルックナー団」と自称する3人の冴えないオタクの男達が、奇妙な交流を繰り返す中で、ブルックナーの人生が紐解かれ、姫(ゆたき)とブルックナー団のメンバーたちそれぞれ人生と奇妙なシンクロを見せる。思い通りにならない人生の中で、不器用だが最後は大伽藍が立ち現れるようなブルックナーの壮大な音楽に希望を見出し、生きる力を得ていく。はっきりしたオチはないが、コンサートという1回限りの生演奏を聴く場の一期一会の瞬間と、そこに居合わせる人々の営みが見事に描かれていると思う。
余談になりますが、ブルックナー団のメンバーは、まるで秋葉原にいそうなファッションと立ち居振る舞いを見せるが、僕がコンサートホールで見かける「ブル・オタ」とはかなり違う印象。実際の「ブル・オタ」の方々は、割と痩せ形で、服はワールド系(TAKEO KIKUCHI率高し)髪はワックスでキメて、ジャケットや眼鏡や時計は国産の機能的なモノを身に着けた全体的に清潔感のあるファッション。ロビーではお酒は一滴も飲まず、配られたプログラムの一言一句を読み込み、コンサート中も一音たりとも聞き逃すまいと尋常ではない集中力を発揮。実際にはそんな人が多い印象があるけどなあ(笑) 続きを読む投稿日:2017.07.03
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清須会議
三谷幸喜 / 幻冬舎
歌舞伎の演目にしたら面白そうですね
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小説・・・というよりも脚本です(笑)歴史的な事実に即した、舞台劇。それを文章で読んでいる感じがします。歌舞伎の演目として作り込んだら面白そうです。
投稿日:2013.09.24
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エデン
近藤史恵 / 新潮文庫
前作「サクリファイス」を超える傑作!
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「サクリファイス」の続編です。登場人物は多いが、文体が極めて明快なため、すいすい読めます。読み始めると眠れなくなることは間違いありません!
自転車ロードレーサートとして様々な人の思い背負って、…本場ヨーロッパへ渡った白石誓は、アシストとしての能力を評価され、フランスのチームへと移籍。チームのエース:ミッコ・コルホネンのアシストとして、世界中のロードレーサーが憧れる楽園(エデン)である、ツール・ド・フランスへ出場する。
三週間で約三千キロを走破するという、極めて過酷なレース。ツアーで勝利するための戦略と駆け引き、エース同士の争いからチーム内での争いなどレーサたちは様々な葛藤と思いを抱え、人間模様を描きながら楽園を疾走する。
最後で語られる誓うの言葉が印象的。
「ここはこの世でいちばん過酷な楽園だ」「楽園に裏切られる者も、楽園を裏切るものもいる。楽園を追われる者も、そしてまた舞い戻ってくる者も」 続きを読む投稿日:2017.09.18