くっちゃね村のねむり姫さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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背高泡立草
古川真人 / 集英社文芸単行本
いくつかの小説を同時に読んでいる感じ?
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今回の芥川賞ということで、早々読んでみました。セイタカアワダチソウは漢字にするとこうなるのかと、まず妙なところに感心。しかし、この植物も昔は確かに丈が高かったですが、日本に入ってきて、台風の多い気候…にあわせ、最近は徐々に丈が短くなってきたという話を聞いたことがあります。
閑話休題。さて話の方は、いくつかの小説を同時に読んでいる感じでありました。個々の物語は大変興味深く、単なる草刈りの場面もそれぞれの思惑の描写が面白かったです。しかし、たぶん個々の物語はそれぞれ過去から現在に繋がっているのでしょうが、それが一つにまとまっているようには思えず、え?これでエンド?という感じは否めませんでした。方言を使った展開は、面白かったのですけどね。 続きを読む投稿日:2020.04.01
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あなただけの、咲き方で
八千草薫 / 幻冬舎単行本
楚々と咲いているようで、意外にアグレッシブだったその生き方
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今は亡き親父がファンだった八千草薫さん。私にとっては上品なおばさまという印象が強いかな。自分の人生をこんな素敵なエッセイにまとめ上げることが出来るだけでも、素敵なことであります。
登山が好きだっ…たなんて事から、役者としての覚悟みたいなものまで書かれてありますが、すべてに興味深いものがありました。
「あなただけ」の咲き方を貫くのは、実際には大変難しいことだと思います。八千草さんは、悩みながらも、夫のアドバイスや協力もあって、そんな生き方ができたのかもしれませんね。でも、何か我々にも参考になるところがありそうな気がしました。 続きを読む投稿日:2020.04.01
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影
カーリン・アルヴテーゲン, 柳沢由実子 / 小学館
言い得て妙なタイトル
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輝かしい功績を持つ人にも、人に言えない影があるかも知れない。また一方、誰にも言えない秘密が、影のようにつきまとう人生は、多かれ少なかれ誰にもあるかもしれない。そんなことを思わせてくれる小説でした。
…
物語は、なぜ一人ぼっちで亡くなった家政婦の死がそんなに問題になっているのか。読み始めると、わからないことだらけで、何に登場人物が悩み、怯えているのかがわからない状態でストーリーが展開します。おまけに登場人物が多い上に、スウェーデン人の名前が難しく、記憶出来ないのに閉口しました。冒頭に主な登場人物の紹介ページがありますが、私は別に紙に書いて読み進めました。
すべての内容がわかり始めるのは、小説の真ん中あたり。徐々に社会的地位もある家族の影の部分が見えてきます。そして、その影に怯えて死んでいった家政婦のことも。まさに人間の影の部分を描いたような小説で、なかなか面白いけど、後味が良いとは。。。。 続きを読む投稿日:2020.04.01
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ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ / 新潮社
自分で誰かの靴を履いてみること。これに尽きるかも知れない
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今話題の本ということで手にしたのですが、これは全ての人が読むべきものかもしれません。タイトルから、単に人種差別を受けたことを書いてあるのかなぁと、思っていましたが、イヤイヤそんなものではありませんで…した。
「どんな夏休みだった?」「ずっとお腹が空いていた」
イギリスという先進国で、このような会話が少年の間で交わされたというだけで、結構衝撃的でした。もっとも日本でも子供の貧困が問題視されていますよね。
また一方、イギリスの公立中学校で必須として行われているらしい「演劇」とか「ライフ・スキル教育」というものに、とても興味を引かれました。これらは共感力を養うものらしいのですが、勿論、だからと言ってイギリスにおいて差別が無くなってきたわけではありません。とはいえ、日本の教育にはないでしょう。英語やダンスを必須にする前に、やるべき事があるような気がします。
「小さな政府」これが自由主義国の基本なのかも知れませんが、本の中で指摘されているように、恵まれない人に同情するならあなたがお金を出しなさい。できないのなら見捨てて、罪悪感とともに生きていきなさい。なんていう社会は、絶対に嫌な気がします。
ノンフィクションとはいえ、再生された制服をもらった息子の友人が坂道を登りながら、右手の甲で両目を擦る仕草をした、などという描写には、思わず目頭が熱くなります。
このような母と子の学びの関係の中でそだった息子は、きっとすばらしい世界を作り上げてくれるものと信じたいと思います。ただちょっとだけ気になるのは、あんまりダンナ、お父さんが出てこないところかな。
とは言え、これは単なるエッセイではありません。物凄く沢山のことを、意識せずして問題提起している一冊でありました。下手な社会学の本よりも、有用な本だと思います。 続きを読む投稿日:2020.04.01
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告知
久坂部羊 / 幻冬舎文庫
いつか必ず訪れるその時に
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在宅医療について書かれた小説ですが、体験に基づいたものであり、リアリティにあふれておりました。
架空の「あすなろクリニック」における症例を6つの短編として描かれており、「告知」とはその内の一つで…ありました。単行本は「いつか、あなたも」というタイトルで、作者の個人的な理由にて文庫化する際にタイトルを変えたとのことですが、元の方が的を射ているような気がします。
人の死亡率は100%。それをどのようにむかえるか、また身内の旅立ちをどのように看取るか、必ず、我々も体験することなんですね。
一番最初の「綿をつめる」から、なかなかショッキングでありました。病院で亡くなった我が父の場合は、病理解剖されましたので、当然のことながら、このような場面を見てはおりません。このエンゼルケアの場面が、新米医師の初体験を通して、初めて我々読者も知ることになります。「おくりびと」の前に、このような処置が必要なのですね。
この最初の一編から始まり、一つ一つが死と向き合う、本人、家族、医師、看護師の思いと葛藤が描かれていきます。話が話だけに、ハッピーエンドでは終わりません。また、在宅医療から再入院となり、「あすなろクリニック」から離れていってしまう患者さんもいます。それでも、真摯に患者さんに向き合う医師と看護師には頭が下がります。
読んだ後、決して感動する話ではありません。その意味では小説の体を成していないという指摘もあるやもしれません。それでもしかし、「いつか、わたしも」体験せざるを得ない話であり、どのようにその時を迎えるか、考えさせられる小説でありました。 続きを読む投稿日:2020.04.29
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知識ゼロからの行動経済学入門
川西諭 / 幻冬舎単行本
とてもわかりやすい入門書でありました
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大学の教養課程の講義というよりも、素人相手の市民講座レベルの講義という感じで、興味があるけど、よくわからないという私には、最適な本でありました。
著名な学者さん達の実験結果等を示しながら解説して…あり、なかなか興味深いものがありましたよ。
「モンティ・ホール問題」は確率論。「参照基準点を動かして相手の感情を変える」というのは、心理学?また、不確実な状況下での判断・意志決定のプロセスを解き明かした「プロスペクト理論」や「囚人のジレンマ」等、引き込まれる内容ばかりでした。また、巻末に索引がついており、語句の整理のも役立ちそうです。
だだし、商品情報にあるとおり、イラストや図、漫画が多用されておりますので、Readerで読むにはつらいでしょう。私は、この本についてはタブレットで読みました。 続きを読む投稿日:2020.04.29