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さっさと不況を終わらせろ
ポール・クルーグマン, 山形浩生 / 早川書房
すべての経済学の本が、これくらい平易であればいいのに
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この本をかんたんにまとめると、
不況の時には
・政府支出を増やして、お金を循環させましょう
・民間の負担になること(増税、利上げetc)はやめましょう
ということになる。
もちろん言いっぱなしでは…なくて、様々な理論的な根拠があることも示している。
この本のいいところは、平易な文章で書かれているおかげで、普段経済政策のことにまったく興味がない層にも経済学の論理を伝えることができるという点である。
例をあげてみる。
日本の新聞や情報番組を見ると、『赤字国債の大量発行で日本経済は崩壊する』『だからこそ事業仕分けが必要だ』といった報道がされることが多い。大半の人がこの話を知っていて、日本の将来に悲観している。
しかし、クルーグマンの意見はまったく反対だ。
彼によると、不況の時にはどんどん国債を発行して経済を循環させることが必要であるという。
また。赤字国債の返済は支出カットによる国家予算の黒字化ではなく、インフレによって国債の額が目減りしたときに返せばよいと述べている。
既存の報道ではなかなか教えてくれないこのような考え方、理論を知ることで、必要以上に将来に不安を感じることがなくなるだろう。
正しい知識を身につけて、自分で判断することがこれからの時代は求められる。
それを可能にするのは平易な文章でわかりやすく書かれている本であり、本書はその条件を満たしている。
リーマンショック後の経済のことについて書かれた本ではあるが、アベノミクスの意味を知る上で理解を深めてくれる本だと思う。 続きを読む投稿日:2014.10.06
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銃・病原菌・鉄 上巻
ジャレドダイアモンド / 草思社
読みやすいが、中身の詰まった良本
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なぜ産業革命に代表される、人類の進歩の最先端は常にヨーロッパに存在したのか?
ヨーロッパ人が他の人種に比べて知能で優れていたからなのか?
そうではないとしたら、何が決定要因となってここまでの発展の差が…開いたのか?
著者はこの問いに対して、ヨーロッパのあるユーラシア大陸が、他の大陸に比べて東西に長いこと、農耕に適した植物と、家畜にするのに適した野生動物が存在していたことが、ヨーロッパ人の技術の先進性の究極的な要因だと述べている。これらの要因と結論にはいささか論理の飛躍があるように思われえるが、本の内容を読むことで十分納得の行く説明や考古学的な証拠が取り上げられているので、少しでも興味があれば読んでみることをお勧めしたい。
また、著者がフィールドワークを行った地でもあるパプアニューギニアを始め、東南アジアの民族の移動や交易についても詳しく述べられているので、今後日本と関係が強化されるであろう東南アジアについて詳しく掘り下げて知りたいという場合でもこの本は役に立つのではないかと思う。 続きを読む投稿日:2014.09.10