hoge2さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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男の首
ジョルジュ・シムノン, 宗左近 / グーテンベルク21
悪役の人物像が秀逸
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メグレが当初犯人と思われた男をあえて逃がして、その裏に潜む真犯人を追うというストーリーです。
この真犯人は、すぐにメグレの前に姿を現すもののなかなかシッポをつかませません。黙っていれば、完全犯罪になり…そうなのに、メグレを挑発するような態度を取り続けるしたたかな人物で、メグレも苦戦します。この犯人の屈折した人物像が本作の読みどころだと思います。
謎解きよりも、人物描写を重視する人におすすめです。 続きを読む投稿日:2016.01.23
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みんなバーに帰る
パトリック・デウィット, 茂木健 / 東京創元社
冷めた文体
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酔っ払いたちの姿を次々に紹介していく第1章、主人公が壊れていく第2章、主人公の更生努力?を描いた第3章と、(内容略)第4章から成り立っています。
中心的なストーリーがあるわけではなく、主人公を含む、酒…場に集まる酔っ払いと麻薬中毒者の救いのない破滅的な姿が短いエピソードを積み重ねながら描かれていきます。
救いのない暗い物語かもしれませんが、自己憐憫も他者批判も感じられない冷めた視線で語る文体は、以外にもからっとした読後感を与えてくれます。
好き嫌いが分かれるかもしれませんが、同著者の「シスターズ・ブラザーズ」の文章が好きだった人には、文句なくお勧めできると思います。
一方で小説に起承転結のはっきりしたスリルあふれる物語を求める人は、不満に思うかもしれません 続きを読む投稿日:2015.10.11
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不可触領域
半村良 / 文春文庫
ちょっとネタばれ
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ひとつのアイデアで引っ張る作品なので、そのアイデアを受け入れることができるかで評価は分かれると思います。
もったいぶった割りに最後が強引のような気もしますが、メディアによる群集操作というテーマは、現在…にも通じると思います。
続きを読む投稿日:2015.05.18
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闇の中の哄笑
半村良 / 角川文庫
今度は、グランドホテル形式
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本作は、とあるホテルに集まった政治家、金融家、嘘部一族、その他いろいろな人をグランドホテル形式で描いた作品で、半村良氏の作品にしては、珍しい部類に入ると思います。
それまで、人を操りだます側として、絶…対的な立場に立っていた、嘘部一族が疑心暗鬼になっていくさまなど、興味深いストーリー展開ですが、話の面白さ自体は、前2作に劣るかと思います。
本シリーズは、作品毎にスタイルを変えているので、3作まとめて読むと、半村良氏のいろいろな面を見ることができると思います。 続きを読む投稿日:2015.09.28
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丑三つ時から夜明けまで
大倉崇裕 / 光文社文庫
最後の短編を読むと、ブラックな余韻が残ります
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異能者のチームが出てくる物語というと、チームメンバーに突拍子も無い技能や性格付けをして、それをネタに作品を書き連ねるということを想像しますが、本作で作者はそのような手段に訴えず、ワンランク上を狙ってい…るような印象を持ちました。
各短編は、バラエティに富んでおり、単に幽霊が犯人でしたという安易な落ちを避けたアイデア豊かな作品群に仕上がっています。
また、各短編はユーモアを湛えているものの、最後の短編まで読むと、全体にそれまでの作品に仕掛けられた伏線が活きて、ブラックな余韻を残してくれます。
欲を言えば、もう少し最後の作品につながる伏線を仕込んでくれた方が衝撃があったように思いますが、水準以上の作品です。
続きを読む投稿日:2015.05.18
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氷河民族
山田正紀 / 角川文庫
少しネタばれのコメント
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冒頭に出てくる謎の美女をめぐる謎の提示から、わくわくして読むことができました。
無駄の無い物語は、テンポ良く進み飽きさせませんが、いよいよこれからというところで、終わってしまいます。
ここで終わらせる…なら、その前の山場でもう少し緊迫感を出して盛り上げてほしかったような。
山田正紀ファンなら読んでも良いと思いますが、山田氏の最初の一冊なら、SF系なら「神狩り」、「宝石泥棒」、ミステリなら「人喰いの時代」をお勧めします。 続きを読む投稿日:2015.05.19