
米国製エリートは本当にすごいのか?
佐々木紀彦
東洋経済新報社
5年も経ってから読むと、時代が変わったことに気が付きますね
早く世間に認められたい野心家による、20代後半での米国大学院への留学体験雑記(2007年9月~2009年6月)です。評者は出来なかったことだけに、正直羨ましい。筆者の行動力も素晴らしい。最近は、某有名出版社を辞め、新進気鋭のニュースサイトへ転職なさったようです。 内容が、論文ではなく体験記でしたので、纏めることは出来ません。いくつか「なるほど」と思った点を、自分自身の備忘も兼ね、ご紹介させて頂こうと思います。 ・米国の大学の講義では事前の課題図書(Reading assignment)が非常に多いため遊ぶ暇もなく、1分単位の時間管理(Time Management)が必然となる。女子学生も多額の投資として勉強しに来ている(当然ですが)ので、勉強の邪念(恋愛対象)になるような綺麗な人が少ない。 ・大学は勉強の内容以上にコネ作りの場のようだ。(学歴が卒業後もSNS等を通じたネットワーク構築上での武器になりそうですね) ・当時(2008年頃)は、韓国人留学生が、一昔前の日本人のように、人数が多い上に韓国人同士で固まってつるんでいたので、(本国の人口規模の割に)存在感が大きく凄かった。アジア人が、留学生全体の5割を占める。 ・米国に中国本土から留学している中国人留学生も多いが、独立独歩でつるんでいない分だけ話し易い。反日教育を受けているが、国家としての中国と個々の中国人は別次元。日本のアニメで育ち、日本のAVのお世話になったという話しになり、意外と話せる。日本産コンテンツの力を感じる。 ・高い学費と時間を投資した卒業生は、投資が回収できる金融・コンサル系の有名企業に進む人が多い。教育内容とも相性がいいようだ。(結局は金が全ての世界か?) ・歴史の教養は、過去の教訓から今を理解し、的確な情勢判断に基づき未来を創造していく原動力。政治的な理由や個人の感情ではなく、歴史のファクトに基づき実証的・理性的に真摯に向き合い議論を積み上げていく姿勢に感銘。日本も学ぶべきという筆者の感想。 ・韓国のロビーイング(従軍慰安婦問題)にせよ、中国に対する米国内の「封じ込め派」と「融和派」の対立にせよ、国際政治を見極め、日本の存在感を復活(パッシング状態から脱却)させるには、国を引っ張るエリートのインテリジェンスが大事。 ・米国への日本人留学生が減ったのは、日本の国力とプレゼンスが下がったからではなく、国として成熟した(発展途上国を卒業した)から。絶対数としては少子化の影響もある。(日本の経済界重鎮による日本人留学生の減少に対する嘆きに違和感) とまぁ、本書のタイトルとは全然関係の無い、留学感想文でございます。 読後、評者の心をよぎったのは「米国産のエリートを羨ましがっても、大したことないと思っても、何にもなりません」といったあたりでしょうか。 当時、米国留学よりも、仕事と家庭作りにまい進して良かったです。
4投稿日: 2018.06.25
へうげもの(1)
山田芳裕
モーニング
新感覚歴史漫画
謎だらけの作品です。正直、タイトルからして読めない(歴史的仮名遣い)。英語のほうだって読めない、英語式に思わず「ひゅうぐ・モノ」と読んでしまった。。。そもそも、どうして英語の副題が付いているのか?英語圏の人にも読んでほしいわけでもなさそう。。。副題の英語の意味の通り、主題は「茶道の世界」とも思えないし。 また、最初、画風を見て、これ本当に歴史漫画なのかと思いました。昭和時代の作家による、同時代の歴史小説を読んだことがある影響でしょうか、かなり違和感を覚えました。でも、本作品の冒頭に出てくる織田信長は、当時の人からしても、これくらい違和感もある人だったとも思うので、その突出ぶりがストレートに伝わってくる気もします。歴史小説でのあのシーンがこんな風に表現されるなんて・・・、という楽しみ方が出来る漫画です。まさに、新感覚歴史漫画。
0投稿日: 2017.05.11
イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北
内藤正典
集英社新書
正直、良く意味の分からないタイトル
「イスラムの怒り」(2009年著)は、イスラムに疎い日本人への警告書として良書と思いましたので、著者の内藤氏による、その後のアップデートと思って、こちらの本も読んでみました。 非科学的な態度を取ると映るムスリムへの嫌悪と、欧米社会での移民の疎外感と差別体験が悪循環を作ってきたのかという背景説明については、取り上げられている事例こそ新しいですが、本質的には前作の繰り返しのように感じました。 むしろ本書でのアップデートは、 1.「集団的自衛権」の発動を可能とする安保法案は、日本をイスラムとの戦いに巻き込む危険性を高めるだけという論旨と、 2.憲法第九条を頂く平和国家として、紛争当事者の和解の場の設定する「Doshisha Process」こそが日本の役割とするの著者の主張 の2点に集約されます。 そう考えると、「イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北」を本書のタイトルとする理由が、良く分かりません。 「イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北」の意味自体は、平たく言えは以下の意味でしょう。 ・現行の国境線は、欧米的価値観に基づき当時の列強が勝手に引いたものであって、ムスリムからすれば、正しい信仰の実践の結果としての、正しいイスラム世界の行を作る上で阻害要因でしかない。 ・よって「イスラム国」の目的は、欧米的価値観そのものへの挑戦であり、欧米的価値観と国際秩序を守ろうとする欧米諸国と、既得権益を守ろうとする中東諸国の政府は、「イスラム国」を本気で潰そうとして戦争になっている。しかし、正しいイスラム運動の結果としての「イスラム国」勝利の暁には、西洋が作った「中東」は崩壊し、中東諸国の国境線も無くなっているということでしょう。 しかし、現実問題そんなことが可能でしょうか? 百歩譲って、非常に長い目で見て可能だとして、「イスラム国」の勝利が、世界と日本に真の平和をもたらすのでしょうか? 評者には、タイトルの意味を真に受け、極論すれば、『日本も含めて世界全体が「イスラム国」になった時が答えである』と言っているに等しいように思えます。それは、一人の日本人としての評者には、「受け入れ難い答え(=求めている答えになっていない)」です。 上記は極端な解釈かもしれませんが、何ともすっきりしない読後感でした。しかし、この「すっきりしなさ加減」こそが「イスラム国」問題の本質なのでしょうね。
1投稿日: 2017.05.11
極黒のブリュンヒルデ 18
岡本倫
週刊ヤングジャンプ
じっくりと最後まで岡本ワールドを堪能しました!
発売されてから随分と経ってしまいましたが、最後までたどり着きました。岡本倫さん、ありがとうございました。 全篇を通じ、中盤が先が読めなくて一番面白く感じました。
5投稿日: 2017.02.16
年を重ねるのが楽しくなる!「スマート・エイジング」という生き方
川島隆太,村田裕之
扶桑社BOOKS新書
健康なまま歳を取りましょうと言う話し
歳を取っても、新しいことにチャレンジし続け、頭も体も使って過ごしましょう。人の役に立てればベスト。自然体で歳を重ねるのが結局はスマートな(賢い)行き方ですと言う話し。 いちいち偉い先生方に言われんでもと思ってしまった。 5年前の情報だが、高齢者人口と要介護者比率に関する統計資料と定量予測は参考になった。今後は最新の直接情報ソースに当たって、意味するところを自分で考えてみたい。
6投稿日: 2016.02.28
週刊ダイヤモンド「ソニー特集」バリュー版 2冊パック(週刊ダイヤモンド特集BOOKS(Vol.7))
後藤直義,藤田章夫
ダイヤモンド社
黒子のソニー
今更ながら読みました。1冊目は「辞めても、なお魂はソニーマン」という話しで、2冊目は黒子のバスケならぬ「黒子のソニー」の話し。読めば、なぜソニーが新しい収益源を生み出せず低迷したのか、これだけ凋落しても漸くながら黒字化できたのかの理由が、ざっくりとですが把握できます。流し読みで15分くらいで読めます。
3投稿日: 2016.02.28
検証 ミャンマーブーム
WEDGEミャンマー取材班,井上久男
WEDGEセレクション
丁寧に現地取材した記事
限られた人的・時間的制約の中で、丁寧に現地取材されたことが伺えます。日本語で取れる情報ソースに偏ってはいるようではりますが。。。また、現地駐在員の危機感の裏返しか、中国や韓国企業の進出をライバル視した記述となっており、少し過敏かなと感じました。評者は、他の国と、経済合理性のないODA合戦をしても無意味と思っており、他国の援助で作ったインフラを利用して稼いでやるくらいにしたたかであるべきと考えているので。 これから発展する国ですし、敢えてフロンティアで出て行こうという進取の気性に富んだ、現地に根をはって奮闘している記事に出てくるような日本人は、みな個性的かつ情熱的ですね。 総選挙もありましたし、現地は、その後わずか1年半でも様変わり。短期間でも現地を訪れてから、本稿を読むと、変化のスピードの速さに驚かされるのではないでしょうか? 一方、ダウェーについては、他人の言説の受け売りで、現地を訪れて書いたもののではないことがよく分かりました。 ミャンマーに興味のある方は一読の価値ありですが、いま読んでも状況がすっかり変わっていますよという警告(登場している日本人の殆どは帰国されています)の意味で。★2つとしました。
5投稿日: 2016.01.04
デービッド・アトキンソン 新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」
デービッドアトキンソン
東洋経済新報社
隠れた観光大国ニッポンに贈る提案書
観光立国になる為の4つの要素とは何か!? その4つをすべて持つ潜在的な観光大国ニッポン。あまりにも潜在的な力を活かすことが出来ていない現状を少しでも改善することが出来れば、人口が減少する日本においても更なる経済成長を実現することができるという、日本を愛するイギリス人による渾身の提案書です。 日本で信じられている「観光立国の前提条件」の勘違いについても、ズバっと切り込んでいます。正直、耳が痛い。 評者は、日本は観光で食べていかねばならないような国ではないという認識をずっと持っておりましたが、決して外国人に媚びへつらうような感覚を伴わなくとも、正しく求められている課題に取り組むことさえ出来れば、充分に新産業を日本において飛躍的に発展させることが出来るだという確信を本書を通じで得ることが出来ました。 また、本書を通じて、観光産業に対する自分の認識の甘さと偏りに気がつかされました。 大げさかもしれませんが、新しい日本の将来を切り開くための啓蒙書とも言えます。
8投稿日: 2015.12.28
インベスターZ(2)
三田紀房
モーニング
株式投資入門編
注意して読まないと、株式投資というよりも、デイ・トレーダーへのいざないという感じになっている部分があるのが残念ですが、分かる人が読めば、分かる構成にはなっており、投資についての大切な視点が語られています。 よく言われる、ゴールドラッシュにおけるジーパン、スコップは何かを探す視点の重要性が語られています。半年前の減少で喩えると、ピケティが売れて、一番儲けたのが誰なのかということですかね。 どうしたら、資本家サイドになれるのかという一番大事な点は、既に投資家サイドだったという前提で展開されてぼかされてはいますが、それが現実ではあります。 どの立場で読むかで、解釈が根本的に分かれてしまう巻。確信部分に触れている重要な巻なのになぁ。。。
3投稿日: 2015.12.28
インベスターZ(1)
三田紀房
モーニング
お金とは何かという問いに対する1つの答え
中高一貫私立校の、秘密の投資部があった(しかも秘密の地下室に)という設定で、繰り広げられる首席入学者6名のみによる選ばれしものの帝王学養成漫画です。 一部の限られたエリート(首席入学者達)によって、休み時間や部活動の時間に、学校運営資金が稼がれているという、なかなか非現実的な組み立てですが、一種の投資理論の教育としては、示唆に富む内容と思います。 むしろ、こんなすごい結社があったら、歴代のOBがどんな社会人になっているのかのほうに興味が湧いてしまいます。 万人受けする内容ではないでしょうが、少し投資をかじったことがある方なら、自分の経験と照らし合わせて興味深く読めるのではないかなと思います。 今の時代、お金とは何か、投資活動とはどういうものか。という問いに対する自分なりの知見を持っておくことはとても大切なことだと思いますので。
3投稿日: 2015.12.28
