弓ム日月さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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終末のフール
伊坂幸太郎 / 集英社文庫
悪い人はいない。
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昔はやった言葉で言えば、「終わりの始まり」ではなく「終わりの終わりの方」の世界の話。そこでであがく人々、ではなくてのんびり過ごす人々、のんびり過ごそうとする人々の話。
この話には悪い人は出てこない。…なぜならすでに悪い人々は淘汰されているから。となればこれは理想郷を描いた物語かと思いきや、そんな状況とは思えない。終点が決まっている理想郷などありはしないだろうが、登場人物たちの振る舞いは皆とても落ち着き払い、むしろ人生を楽しんでいるかのようだ。これが達観というものか。 続きを読む投稿日:2017.06.28
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彼女はもういない
西澤保彦 / 幻冬舎単行本
後味の悪さ以上に…
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この物語に出てくる人物すべてが不幸である(難を逃れた女性も嫌な記憶が残るという意味では不幸)。後味はこれ以上ないくらい悪い。
だが、それより面白くないのは物語全体に伏線がしっかりしていない。
予想…外の結果を提示するにはそれなりの伏線が必要であろうが、なにかその全てが曖昧でこじつけがましく、「あーそうだったのか、そう言われればそうだ」が良い伏線とすれば、特にラストに至る伏線は「そう言われても、そう取れば取れるかもしれないけど、ちょっと違うんじゃないかな、そうは考えないだろう、そんな描写あった?」ばかりに読んでしまう。
西澤氏の伏線の張り方は比較的わかりやすく、それでいて面白さを削がないのが良いところと思っているので、この物語はなにか別の意図を持って書いているようにも思われる。あるいは体調が良くなかったとか。
ちなみに、城田理会は「Monsterz」の押切奈々(藤井美菜)で再生された。 続きを読む投稿日:2018.08.14