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しょ~ちゃん2さんのレビュー
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  • 運命の人(一)

    運命の人(一)

    山崎豊子

    文春文庫

    「ヌチドゥ宝」を噛みしめよ

    沖縄辺野古基地化を強行しようとする政府関係者、国家議員達にまずこの第四巻から読んで貰いたい。鉄弾の暴風雨が襲う沖縄の島々、本土の捨て駒にされ辛うじて命が長らえても米占領下に虐げられた。沖縄の島民は自分の土地を略奪され返還後もそれは大して変わらず、そして今再び三度、新たな基地が押し付けられようとしている。沖縄の艱難辛苦を顧みればこうした仕打ちが出来ようにもない筈だ。この本は元毎日新聞記者西山氏をモデルにした物語だ。その人間の生きるを問う深い内容とは別に、縷々語られる沖縄を、沖縄の哀しみをぜひ読み取って欲しい。「命こそ宝」の深い意味合いと意義、今日に生きる全てに届けたい。

    0
    投稿日: 2015.09.01
  • 峠うどん物語 上

    峠うどん物語 上

    重松清

    講談社文庫

    ゆれる乙女心はまだまだ

    淑子ちゃんは高校受験を控えた女の子。親や祖父母の周りに起こる様々な人生場面に遭遇、乙女心を悩ませるのでした。がそこはそれ、まだまだ子ども。結局は「うどん屋」を営む祖父母のおめがね通り。しかし心を重ねられまんざらでもなさそう。物語はオムニバス形式で進んでいく。それにしても男性作家の重松清さん、よく中学生の女の子の揺れる気持ち・心持ちが解るもののですねぇ。 これを読んでてふと思い出したのが『三匹のおっさん』。逆に女性作家の有川浩さんが中年おっさんの気持ちをよく汲み取った小説。この著者二人のを読んでいて、お互いが逆の立場で書いてるのではないのだろうか?と思える程でした。『おっさん』は下巻をどうしようかと思ってた所でTV連載され、結局毎金曜最終回まで見てしまいました。TVドラマ化って原作を脚色しすぎとか言われもしますが、こちらは案外原作に忠実だったようです。 この『峠うどん』もTV連載出来る代物ではないでしょうか。 淑子ちゃんの眼を通して人間社会の複雑怪奇な現象と、それらが結局は落ち着く所に落ち着くという実際とそれを見据えている、祖父母のふれあいもまた楽しくも微笑ましい。ホームドラマうってつけでは?

    1
    投稿日: 2015.06.28
  • 虹の岬の喫茶店

    虹の岬の喫茶店

    森沢明夫

    幻冬舎文庫

    静かに背中(せな)を押してくれる人

    柏木悦子が営む岬の喫茶店を訪れた客との経緯(いきさつ)を、短・中編6本に纏めた作品。各章毎に曲のタイトルがつけられている。一章一章は独立しながらもちょっとした引き継ぎが残されている。二章に登場する客こそ本作品の作家だろうと想像させるのも一興だ。各編通して店の主人・悦子が、聴き役ながらも客を慰め或いは励まし或いはと様々に、背中(せな)を押し前へ歩を進めるよう誘(いざな)う。壁に掛けられた大きな海に掛かる虹の絵がその力の源泉にもなっている。 そしてこの作品がこの秋、吉永小百合主演で映画化される。作品は勿論傑作だが、映画にも大きな期待を寄せたい。

    4
    投稿日: 2014.07.15
  • 鬼頭莫宏短編集 残暑

    鬼頭莫宏短編集 残暑

    鬼頭莫宏

    月刊IKKI

    輪廻でしょうか?なんでしょうね!

    うん今時こういう非科学的なお話が漫画になるなんて思ってもいなかった。けど日本人ってのはこういうの好きだよネ。夏場の怪談話、お岩さんや牡丹灯籠なんて名作だもの。これもそんな感じ。怪談じゃなくややお寺で説法を聞いているようなそんなお話です。気持ちがほっこり、ほこほこします。短編×数本ってのがいいですね。娘が選んだ旦那が実は父親そっくりだった!?知らぬは娘本人達だけって展開は大笑いしながら頷ける一品です。

    0
    投稿日: 2014.03.26
  • 惑星9の休日

    惑星9の休日

    町田洋

    祥伝社コミックス

    何か懐かしさを、ノスタルジーを感じる

    まず、白と黒がいい。いわゆるグレースケールで描かれている。 雲と空、夜空と星、夏が実に似合っている作品だ。 全編通して「初恋」を感じさせる。 あのときめき、あのきらめき、あのどぎまぎ、あの甘酸っぱさ… そうか、デジャブなんだ。 通って来た道だから、懐かしい風景に出会った感動を覚えるのか。 海の風景、ガスタンクのてっぺん、お節介な隣人、 誰もが知っているああした光景、そして思い出。まるでちょっと前に戻ったみたいな。

    2
    投稿日: 2013.11.10
  • 星守る犬

    星守る犬

    村上たかし

    漫画アクション

    無償の慕い

    ごく普通の勤勉な中年が、何故か家族とすれ違ってしまう。残されたのは家族の愛犬だった筈の犬と、持病。犬目線でお父さんが描かれてゆく。死線さ迷う犬に最大の愛を注ぐお父さん。ひたむきに慕って慕ってまっずぐな犬の目線。忠犬ハチ公など実際に見聞きする犬の従順さが、混沌とした現代生活においても光る。涙なくしては読み続けられない感動作。コミックとは思えない程の秀作だ。

    0
    投稿日: 2013.09.25
  • 百年法 上

    百年法 上

    山田宗樹

    角川文庫

    不老不死を司る独裁者の恐ろしさ

    あの『嫌われ松子…』の作者の初長編SFとの評を見て手にした。時はあたかも国政上で”独裁者”の誕生かと思われる時期だった。  中身は確かにSFの衣を被ってはいるが、実は政治小説ではないか?いや『感染列島』のような恐怖小説か?と思わせる程、訴求力は凄い。  主人公の登場は端から察そうとしていた。ぐいぐい引き込まれるテンポと内容。シチュエーションが交互に代わり、まるで線路のポイント交換の如く、頭の切り替えが大変だった。  「百年法は是か非か」国民の総意はいずれに傾く?施行に注力する主人公軍団。しかし結果は?  やがて独裁者が仕立てられてゆく。仕立てた主人公さえ独裁者の魔の手に握られてしまった。さあいかなる展開が可能なのか。とその時、集団自殺が発生する。その背景にある個の葛藤、また制度の否定集団、さらに対症療法さえ見つからない新型ガンの出来。根本からの解決策に挑む国家中枢。”軍”のらしからぬ法に基づく道理ある遂行。  米国や中国、ロシアなど外国の影響はとの思いには全く触れず、舞台は国内を出ない構築も素晴らしい。  自然人としての人間の生き様にも切り込んだ傑作だった。

    5
    投稿日: 2013.09.25