stokowskiさんのレビュー
参考にされた数
8
このユーザーのレビュー
-
火星年代記〔新版〕
レイ・ブラッドベリ, 小笠原豊樹 / 早川書房
抒情詩
5
この作品は1999年の夏からはじまり、2050年代にかけて地球人によって入植され移り変わってゆく火星を連作短編小説集といった形式にして描かれた作品です。SFというには科学的考証などには無頓着なのでSF…というよりはファンタジーというべきでしょうが、それよりもこの作品の真骨頂はその抒情詩的な文体にあると思います。
作品のオープニングにあたる“1999年 ロケットの夏”と題されたたった3ページほどの部分。ロケットがはじめて発射される時の大人も子供も熱狂する様をこれほど詩的に、優しくつづった文章にはなかなか出会えないでしょう。それより先は地球の人々によって火星がじわじわと汚されてゆく様が描かれてゆきます。ちょうど地球を汚していったように...。
これを読むと最近の宇宙ビジネスさえ罪深いものに思えてきます。人間って観光旅行でさえ、その土地を汚したりしてますからね。 続きを読む投稿日:2013.09.25
-
コーチング
落合博満 / ダイヤモンド社
「采配」のあとに読んでみては
3
この本は落合氏の「采配」の前著にあたるのですが、あちらが多数レビューがあるにもかかわらずレビューがまだないので書いてみます。なるほど読んでいると「采配」は監督という立場で書かれているのに対し、本著はコ…ーチという立場で選手を育て指導することについて書かれているためテーマが地味になるし、それゆえに「采配」よりはビジネス書としての性格が強くなっているのがレビュ-数の差なのだろうな、と思いました。やはり私も含めて野球ファンというのはゲームとして、この選手をこう動かすといった具合に監督目線で野球を楽しもうとしますから。
この本が「采配」の前著にあたり、「采配」の中でも「コーチング」で書かれたことを前置きした上で話をすすめているので「コーチング」→「采配」の順に読むべきと思われる方が多いかもしれませんが、私の場合はその逆に読みましたが結果的にそのほうがよかったと思います。というのも「采配」の中で長嶋茂雄監督のことをネガティブ思考の塊だと書かれていましたが、私はあれだけの采配をする自信のある人がネガティブなわけがないだろう、と思っていました。ところが「コーチング」中にさらにこのことを発展させて書いてあって、実はネガティブ思考というのはまず最悪のケースを想定して(試合でいえば負けること)、それを回避する手を打っておけば、後は勝ちだした時にその勢いに乗っていけばいいということでした。どうやら私はネガティブ思考の意味を間違えていたと気づかされた瞬間であり、目からウロコのような体験でした。この理由の他に「采配」の方が野球ファンを楽しませる内容が多く入りやすいので私は「采配」のあとに本書を読むことをおすすめします。
それにしても落合氏、誤解されすぎでは。私の周囲にも落合嫌いだという人もいますが、これほどシャープに考えられ、氏の野球で培ってきた考え方はビジネスや一般社会にも広い範囲で応用がきくし、私自身には嫌う理由がないのですが...。
続きを読む投稿日:2014.01.19