かんけつさんのレビュー
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アンブロークン アロー 戦闘妖精・雪風
神林長平 / ハヤカワ文庫JA
戦いはまだまだ続く
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なぜか三部作完結と思い込んでいたが、戦いはまだまだ続く。
ジャムと雪風と機械知性体と人類の認識を巡る戦いは、リアルを巡る哲学談義の連続に読み進むにはかなり苦労した。現実世界の変貌により正しいリアルがな…にか分からなくなるので読みづらくなるのも当然か。
とはいえ、続きが気になるところである。 続きを読む投稿日:2015.09.22
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月は無慈悲な夜の女王
ロバート・A・ハインライン, 矢野徹 / ハヤカワ文庫SF
ハインラインの代表作のひとつ
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ハインラインと言えば世間一般には「夏への扉」だろうし、ミリタリーSF好きなら「宇宙の戦士」。私も長いことこの2冊しか読んだことがなく、冗長との噂の晩年の作品をはじめとする他の本はまあ読まなくてもいいだ…ろうと長いこと思っていたのである。
だが、欧米ではハインラインの代表作といえばこの作品らしいというので、何度が買おうかと思ったこともあったのだ。ただ文庫本は結構厚かった上に、古い作品より新しいのを先に読もうじゃないかということで、結局読まずじまいだった。
しかし、時が流れて電子書籍時代になってたまに古典と呼ばれる本も読むようになってきて、ようやくハインラインの他作品も読む気になってきた。
Amazonのレビューなどでは翻訳の古めかしさが話題にされているが、実際私が書店で手にとって買おうかどうか悩んだ文庫本が出たのは1976だし、それは古くても当然だろう。
朝晩の通勤時に30~60分ごと電子書籍で読んで、読了するのに2月くらいかかっているから、客観的に評価して読みにくさはあるのかもしれない。
ネビュラ賞を争った「ババル-17」や「アルジャーノンに花束を」の印象に比べると古びてる印象は間違いなくあった。その印象には、この作品の後にAIや月の独立を描いた作品が多数ありいろんな作品に影響を与えているせいもあるだろう。
古典的名作の範疇に入りつつあるのかも知れない。 続きを読む投稿日:2015.09.20
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世界最終戦争の夢
阿部知二, H・G・ウェルズ / 創元SF文庫
「猫」が書かれた時代前後に発表された小説たち
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「アリの帝国」「森の中の宝」「めずらしい蘭の花が咲く」「海からの襲撃者」「盲人の国」「故エルヴシャム氏の物語」「ダチョウの売買」「赤むらさきのキノコ」「剥製師の手柄話」「「最後のらっぱ」の物語」「世界…最終戦争の夢」「クモの谷」
知能の高い巨大有り、有毒植物、食肉蘭、人食いタコ?イカ?、キノコ、クモとSF生物ネタが多し。
調べてみるとウェルズの短編集が書かれた時期「世界最終戦争の夢」(1901)、「盲人の国」(1904)、「蟻の帝国」(1905)あたりで、「吾輩は猫である」(1905~1906)の書かれた時期とほぼ被っていた。たまたまだが。
夏目漱石。1867~1916。
H・G・ウェルズ。1866~1946。
意外にも同年代作家だったと初めて知った。 続きを読む投稿日:2015.09.18
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グレー・レンズマン
E・E・スミス, 小隅黎 / 東京創元社
レンズマンシリーズ第2弾
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「銀河パトロール隊」を学校の図書館から借りて読んで大興奮したのは小学校高学年の頃だったか。
何十年も経って登場した新訳版を電子書籍で読むのはそれだけで感慨深いものがある。
古いから悪いわけではない。古…いからこそいいこともあるぞ、というわけでいまだに楽しく読めるのは大したものだ。
レンズマンは宿敵ボスコーンを壊滅させたわけですが、続編はまだまだ続く。ここでやめるわけにはいかないので、こうなれば続編も読むしかない。 続きを読む投稿日:2015.09.18
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フランケンシュタイン
メアリー・シェリー, 森下弓子 / 創元推理文庫
あるいは現代のプロメテウス
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だいぶ以前に読んだスコールズ&ラブキン『SFその歴史とビジョン』でSFの十大小説として紹介されていて、読む前からかなり詳しいあらすじだけは知っていた。
どうかと思ったのだが、予想以上に面白く古びていな…かった。科学的な設定は置いておいて、倫理的な問題は今日的でもある。
(まあ科学者よりも宗教屋の倫理の方がよほど危ないってことをぼくたちはオウム真理教から学んできたわけだが。)
やはり怪物のキャラクターは出色であった。はじめは無垢な存在だったが、その怪異な容貌故に迫害され、悪意に侵され、子供を殺し、無実の女を陥れ、伴侶を作るという約束を破られたことで、フランケンシュタインの友人を殺し、結婚したばかりの妻を殺してしまう。
フランケンシュタインとしては怪物を赦すことはできないわけだが、しかし、フランケンシュタインの死に際しての怪物の複雑な心情など、胸に迫るものがある。
この本は電子書籍として最初の方に買ったので、電子書籍版には解説がないことはこの本で知った。本を買うとまず解説を読んでしまう私にはちょっと残念であった。 続きを読む投稿日:2015.09.18
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地球光
アーサー・C・クラーク, 中桐雅夫 / ハヤカワ文庫SF
地味だけど佳作
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クラークらしく月世界の描写はいい。「渇きの海」で主役を務めた月塵の流れをくむ描写もちらりと出てくる。
大筋は惑星連合と地球の戦争を巡るスパイ活動が描かれる。
ただ素人スパイなので、権謀術数渦巻く頭脳…戦や活劇などはない。その意味で派手さはなく地味な印象。
クラークは近未来ものよりも遠未来ものの「都市と星」が好きなのでちょっと評価が辛いかも。 続きを読む投稿日:2015.09.16