
織田家の長男に生まれました~戦国時代に転生したけど、死にたくないので改革を起こします~ 8
逸見兎歌, 大沼田伊勢彦, 平沢下戸
織田家の長男に生まれました~戦国時代に転生したけど、死にたくないので改革を起こします~ 8
逸見兎歌,大沼田伊勢彦,平沢下戸
チャンピオンクロス
領主たちの戦略のせめぎあい
この巻は、転生者らしい未来知識の発揮の場面はまったくなく、一介の中小領主として周辺の領主たちとの戦略のせめぎあい にどっぷりと浸かってしまっている。歴史読み物としてはこのやり方のほうが正道であることはよく分かる。しかし、転生モノの特徴である 未来知識 を活かして無双する という爽快感がないところはやや惜しい。絵は相変わらずややぎこちない。
0投稿日: 2025.06.30叛鬼<文庫版>
伊東潤
コルク
凄まじい戦いの人生
私の知識の中で空白に近かった戦国初期の関東地方の様子がよくわかった。最初から最後までほぼ戦いの描写で埋め尽くされた作品である。その戦いも戦略の冴え、戦術の巧みさ、個人的な戦技の卓越さ といった一般受けする要素はほとんど無く、大半がひたすら叩き合い、殺し合いに終止している。作者伊東潤が訴えたかった「下剋上」というものも、文章で抽象的に表現されているが、主人公の行動を見ると、下剋上というよりは 都合の良い方へ 生き残りができる方へ 転身していったようにしか思えない。
0投稿日: 2025.06.29地図から読む歴史
足利健亮
講談社学術文庫
根拠がある話とない話
発掘調査の実績や出土物、地形からの考察など現物を伴った根拠がある話はたとえ地味でも謎解きサスペンス風の雰囲気もあって面白い。逆に文字や発音からの考察は眉唾物だと感じた。奈良時代から平安時代初期の古代律令制国家のころ幅広な直線幹線道路が整備されたのに、それが整備されなくなって曲がりくねった狭い道に劣化してゆくという過程は、古代ローマの街道を思わせて面白い。信長 秀吉 家康の話では、城下に無理に街道を集約させたという秀吉の話が面白い。家康の話は?である。
0投稿日: 2025.06.03首折り男のための協奏曲(新潮文庫)
伊坂幸太郎
新潮文庫
連作短編集なのかはっきりしない
もともと独立した短編であったものを、加筆して連作短編集っぽくしたものらしい。そのせいか全体のまとまりがなく焦点がボケた あるいは焦点がないような印象を受けた。所々にこの作者らしいユーモラスな台詞があるが、他の作品と比べて控えめ。
0投稿日: 2025.05.31ドイツ誕生 神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世
菊池良生
講談社現代新書
皇帝の凄まじい一生
実態がわかりにくい「神聖ローマ帝国」の初代皇帝オットー1世の伝記である。現代の「国民国家」という考え方にとらわれてしまっている我々とはまるで違った形 考え方をベースとした「帝国」がなかなかに興味深い。特に「国とは王家の私有財産であった。」という話には感銘を受けた。それにしても、身内 子どもたちに次々と先立たれた人生だったんだな。
0投稿日: 2025.03.28君の心を漢字たい 3巻(完)
須河篤志
くらげバンチ
ちゃんとまとめている。
このコミック業界ではダラダラと巻を重ねる作品が多い中、ちゃんと3巻に話をまとめて大変に読後感が良い。気になる相手の心の中を読みたい という欲求は誰にでもあるが、「漢字一文字」が見えるという能力は大変に斬新で敬服した。そしてその能力が失われても、心を相手に伝える大切さを歌い上げていてとても良い。もちろん漢字の勉強にもなる。絵柄もとても良い。
0投稿日: 2025.03.28地検のS
伊兼源太郎
講談社文庫
連作地検ミステリー
語り部として作者自身が投影されたような新聞記者を動かしている。自分の体験をもとに描いていることもあって、大変にリアリティがある。法律と義理.人情というわかりやすい対比 バランスを描いている。下手に書くとお涙頂戴もののベタな作品になるところだが、その少し手前でとどまって描いている所が良い。読み進めるにつれて、どんどん話が深くなってきて検察内部の権力闘争が物語のメインテーマになってくる。
0投稿日: 2025.03.23RAGS プロローグ
Brian Ball, Trent Luther, ほか6名
RAGS プロローグ
Brian Ball,Trent Luther,Luigi Teruel,Raven Monroe,Capucine Drapala,Liz Finnegan,HEY YOU,WagaComix
ナンバーナイン
アメコミそのもの
アメコミそのものの絵柄である。書き込みが大変に多く迫力満点ではあるが、日本のコミックを読み慣れた人間からすると、大変にとっつきにくい。ストーリー以前に絵柄で拒否反応を起こしてしまう。それでも我慢して読んでゆくと確かにストーリーそのものは切迫感緊張感にあふれている。しかし読みにくい。
0投稿日: 2025.03.23ゆうびんの父
門井慶喜
幻冬舎単行本
前後半のバランスが悪い
NHKの大河ドラマが描く時代の大半が戦国時代か幕末になっているのは、この激動の時代が数多くの人物を生むからなのだろうな。本作品の主人公前島密も当然その時代の子である。次々と目指すものを変えてゆき、どれも一通りはできるが という主人公の一風変わった才能を丁寧に描き出している。特に前半は主人公の紆余曲折のせいか、見通しが悪く冗長な感じがする場面も多かった。中盤から話が生き生きとし始めた。幕末から明治維新の頃の有名人が次々と登場し、ワクワクしながら読み進めることができた。本書の題名が「郵便の父」ではなく「ゆうびんの父」となっていることにも納得させられた。特に終盤の地方の素封家を郵便局長にするところあたりは説得力があった。今日の郵政改革を阻む「全国郵便局長会」の手ごわさの遠因を知った思いである。郵便事業創業期の話をもっと詳しく知りたい。前半が詳しすぎ、終盤が短すぎる気がする。
0投稿日: 2025.03.20ハサミ男
殊能将之
講談社文庫
本格的ミステリーなのかな
読み終えて「本格的ミステリーなのかな」という疑問が浮かんできた。確かに予想しなかった結論ではあるが、ミステリーの有名なタブーである「作者しか知らない真実」にいくらか抵触するような気もする。とは言うものの大変の手の込んだミステリーであることには間違いない。最後の数行が未来をほのめかしているようで、なかなかに不気味である。
0投稿日: 2025.03.20