
すばらしい新世界
オールダス・ハックスリー,高畠文夫
グーテンベルク21
フォード紀元632年
1932年作の、608年先を描いたディストピア小説。はじめの方にSTAP細胞を想起させるような記述があって、古典ってすごいな…と再認識しました(まさか元ネタでは無いでしょうが)。 翻訳も良く、ぐいぐい引き込まれていくものの、見事に救いようのないお話で、「しばらくホラー系はパス」って気持ちです(^^;
1投稿日: 2014.07.27コロロギ岳から木星トロヤへ
小川一水
ハヤカワ文庫JA
絡み合う3つの時空それぞれに味わいがありました
多次元宇宙を人間の認識できる3次元で切り取る話は偶に見かけるけれど、異次元の知的生命体の視点を取り入れることで俄然おもしろくなったのだと思う。さらにそいつが空気読めないドジっ娘で少年たちが危機に陥るという、はた迷惑なお話。満喫しました。
3投稿日: 2014.07.23魔法使いとランデヴー
野尻抱介
ハヤカワ文庫JA
これぞ大団円
しっかりした設定と本編ストーリーとの緩やかな繋がりと、そしてむちゃくちゃな大冒険。最高。
2投稿日: 2014.07.18数字で読む「アベノミクスの空騒ぎ」―新潮45eBooklet
藻谷浩介
新潮45eBooklet
藻谷理論の入門と復習に
他の書籍でも書かれている内容をおさらいしている感じなので、藻谷さんの主張のエッセンスを知りたい人、いろいろ読んだのを復習したい人、それぞれに向くと思います。 コンパクトで、何しろ安いです。
0投稿日: 2014.07.04アメリカは日本の消費税を許さない 通貨戦争で読み解く世界経済
岩本沙弓
文春新書
アメリカ公文書の海から拾い上げたメッセージ
著者が以前から指摘している「消費税が輸出企業への還付であること」の指摘から一歩進み、アメリカの公文書館での調査結果を踏まえた検討結果を惜しみなく披露している。円ドルレートの歴史と日米協議の連関を並べてみると、税制と為替が通商問題で繋がっていた。消費税の無い・低い国ほど創造性豊かな活動ができている分析も分かりやすく、また、それでも消費税を手放そうとしない背景の推察にも説得力がある。つくづく、アクセルとブレーキを同時に踏むような狭窄した政策はヤメにしてもらいたいと思う。
1投稿日: 2014.07.04勝率ゼロへの挑戦~史上初の無罪はいかにして生まれたか~
八田隆
光文社
「引き返す勇気」がお題目ではいけない
マネーの話には全く弱く、報道ではチンプンカンプンな経済事件であったが、噛んで含めるような説明によって何が起こっていたのかをようやく理解できた。 出るべくして出る無罪が、意志の強い人が多大な運に恵まれた時にしか出ないという中世司法の実態、しかもこの事案が村木事件を踏まえた検察自身の「引き返す勇気」という言葉の陰で進行していた実態に愕然とした。無罪が出て、本当に良かった。 引き続いて、国賠訴訟を通して刑事司法改革へ向けた基金を作ろうとされている姿勢に感銘を受けた。なお続く挑戦を応援したい。
2投稿日: 2014.06.21アメリカの電子書籍“ブーム”は今
大原ケイ
カドカワ・ミニッツブック
面白くてためになる16分読書でした
ReaderのようなE-ink端末に興味を持ちどんどん本を読んでくれる[ガジェット好き AND 本好き]には既に行き渡り、Fireなどのタブレットは「ながら読書」端末で冊数は伸びないし、KDPのようなセルフパブリッシングは単価が安くて売上は伸びない。 というわけで、いわゆるブームは去った。データを元に現場を見て積み上げた話で、納得度が高かった。 ここからはストリーミングのような電書らしいサービスが着地できるかが課題になってくるのだろうが、でもそこは既に電書漬けになってる僕らにはピンと来ない世界だったりする。
2投稿日: 2014.05.24真実 新聞が警察に跪いた日
高田昌幸
角川文庫
一人一人は良い人ばかり…
どのような組織でも、内輪の都合が勝つときはあるだろう。本書では、北海道新聞社と北海道警察がそれぞれの、かつ複数の論理を貫いたときに、どのような問題が起こり、どのような作用を及ぼしたかが克明に記されている。 新聞社が調査報道を貫くことも、新聞社が家宅捜索や訴訟提起におびえることも、警察が正義を貫くことも、警察が権威を守ることも、それぞれの内輪にはスジが通る話だと思う。 その中に裏金問題や経理不祥事という汚点が投げ込まれたときに、権力を持つ組織が暴力を剥き出しにして自己保存を図ろうとすると何がおこるか。極めて具体的な事例を、さすがの筆力でまとめあげていく力作でした。 一人一人は大したことをしている積もりはないところが、実に恐かった。
3投稿日: 2014.05.22経済倫理=あなたは、なに主義?
橋本努
講談社選書メチエ
若いうちに振り幅の広い議論を見ておくのは良いこと
経済と倫理の諸課題に絞って、巷で語られている諸々のイデオロギーを横断的に整理する試み。途中で浅田彰氏の影響を受けた話が出てきてなるほどと思った私は50代、背伸びして見回した経験は一生ものだと思い返す今日この頃です。 サンデルの正義論もそうですが、争いなく共有できる価値が背景に下がり、微妙な差異を強調せざるを得なくなるバランスの悪さが「読み物」としては辛いところ。 コミュタリアニズムには経済政策が無く、ここを埋め合わせる議論はマルクス主義や社会民主主義左派の経済学が提供している、という話が面白かった。
1投稿日: 2014.05.17ふたつの嘘 沖縄密約[1972-2010]
諸永裕司
講談社
糾弾ではなく、淡々と綴られるノンフィクション
沖縄返還時の密約のひとつを巡る双極子のような2組の「ふたつの嘘」を軸にした、様々な波紋の物語です。正義を振りかざす糾弾調が苦手な人にも読みやすいと思います。 サイドストーリーとして紹介されている、ベトナム戦争に関する米国極秘文書訴訟において米連邦最高裁が言った「政府の秘密は、政治の誤りを永続させる」がズシンときました。1970年代の昔話が過去のものでは無いということを、秘密保護法施行前のいま、しっかり噛み締めたい。
1投稿日: 2014.05.11