ナチ_コチ_ショチさんのレビュー
参考にされた数
92
このユーザーのレビュー
-
腐蝕の王国
江上剛 / 幻冬舎文庫
硬い経済小説のイメージがあったが、サクサク読める佳作
1
私にとっては、2作目の江上作品。さすがに元銀行マンが書いただけあって、銀行の裏事情がリアルに書かれていて面白かった。現在・過去の2つの時間軸が比較的短いテンポで交互に記述されており、これにより長い小説…にもかかわらず、飽きずにサクサクと読むことができた。不良債権隠し(飛ばし)、子会社を通じての迂回融資等々銀行の悪行が延々に続くかと思われたが、終章で物語はドラスティックに展開する。ストーリー的に藤山を殺す必要まであったかどうか疑問だが、血のつながりとは、家族とはについても考えさせられる。 続きを読む
投稿日:2017.06.25
-
φは壊れたね PATH CONNECTED φ BROKE
森博嗣 / 講談社文庫
気軽に読める推理(謎解き)小説、旅のお供にいいかも。
1
森博嗣作品の初読み。好きな人には根強い人気を持つ作家だと承知していたが、何故か避けてきた(学部こそ違え、同じ大学の先輩というのも敬遠してきた要因かな)。Gシリーズとの触れ込みだが、このシリーズは軽いタ…ッチの”謎解きが中心”のシリーズなのでしょうか(見当違いなら恐縮です)。文章は読みやすく、出てくるキャラクターも面白く、ストーリーもすんなりと頭に入る。あと数冊読んでから私なりの総評をしよう。ひとまず星3/5としました。 続きを読む
投稿日:2017.06.18
-
スリーパー
楡周平 / 角川文庫
落合信彦を思い出させる楡氏のインテリジェンス(情報機関)小説
0
楡氏の小説はやはり情報機関(インテリジェンス)の争いが面白い。この小説では、CIA vs 中国人民解放軍・瀋陽軍区の東アジア海域の覇権争いだが、若かりしころに夢中で読んだ落合信彦氏の小説をほうふつとさ…せる。社会派小説としての楡氏も悪くは無いが、無限連鎖やこのスリーパーに代表される各国の情報機関相互の情報合戦、最終的には破壊工作が面白い。プロローグとエピローグで朝倉恭介が出てくるところも、今後の続編を期待させる。 続きを読む
投稿日:2017.06.09
-
ドナウよ、静かに流れよ
大崎善生 / 角川文庫
いかにも大崎氏らしい初期のセミノンフィクション
0
小説だと思い込んで読み始めた本。実は大崎氏の初期のノンフィションだったんですね。海外まで飛んで積極的な取材をかけたが、何せ『心中した当人たちの心的な部分』を関係者の誰も把握していないため、良くも悪くも…大崎氏のイマジネーションが主になった感は否めない。ドナウに身を投げなければならなかった当人たちの想いに関して、美化しすぎる(現世からの逃避行ではなくて、むしろ積極的に)ような気もするが・・・、このあたりが大崎氏らしくてある意味で良いかもしれない。この取材を巡る旅が、後のアジアンタムブルーやユーラシアの双子を生み出すことになったんだろうな。大崎ファンにとっては、氏の原風景を探るには良い作品。 続きを読む
投稿日:2017.06.03
-
哀しき偶然(小学館文庫)
藤田宜永 / 小学館文庫
少しだけハードボイルドがかかったお洒落な探偵小説
0
ちょいハードボイルドタッチでお洒落な推理小説。やはり藤田宜永氏は恋愛小説を書くよりも、推理・サスペンス小説のほうがうまいと思う。モダン東京<3>という副題のとおり、大戦前の軍部が台頭しつつあるが、それ…でもモボ・モガと呼ばれた若者達が全盛だった古き良き時代(?)を背景にしているが、多分この設定を現在としてもまったく違和感が無く読める。独身貴族を謳歌する主人公の秘密探偵という職業名もよく、休日に寝そべりながら気軽に読むには良い作品。 続きを読む
投稿日:2017.05.21
-
みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥津軽編 完黙(小学館文庫)
相場英雄 / 小学館文庫
何もしたくないときに気張らずにボーっと読むには楽しい小説
1
第一作の『因習の殺意』に引き続き、第三作『完黙』を読んだ。先の作品に比較して舞台設定のスケールは小さくなっているが、持田・遠山達の登場人物の心情に切り込んだ良い作品になっている。捜二の管理官・田名部(…始めこそは大型の経済事件を追っていた)が何故か捜一の立場で動くことになるストーリーも面白い。それにしても、この作品での宮沢は浅見光彦張りの推理をみせるが、ある意味でこれ以上名探偵にはなってほしくない気もする。このシリーズ、気張らずに時間潰しに読みたい時にお勧め。 続きを読む
投稿日:2017.05.19