モンブランさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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夜明けの縁をさ迷う人々
小川洋子 / 角川文庫
ちゃんと女性的だけど、どろどろしてない、不思議な短篇集です
2
9つの短篇が収録されている。説明文には「世界の片隅でひっそりと生きる、どこか風変わりな人々」とあるが、「どこか」どころかとても変わった人がどれにも登場する。そしてたいてい、彼ら彼女らは悲しい運命をたど…る。私が一番よかったと感じたのは「曲芸と野球」。語り手の小学生「僕」が少年野球でなぜ流し打ちしかしなかったのかという謎からお話は始まる。そして大人になった「僕」を描いて物語は終わるのだけど、この少年が魅力的に描かれている。短いお話なのだけど、悲しいお話が多い中で、そしてこれも悲しいのだけど、さわやかな読後感があった。他の短篇も全部謎めいていて、内容もおもしろいのだが、文章が丁寧でいい。たとえば「涙売り」の次の文章。「私は彼の左足を抱き、くるぶしに耳を寄せます。すると洞窟の果てにある泉に、一滴涙がこぼれ落ちるような音が、鼓膜に届いてきます。」 続きを読む
投稿日:2015.04.12
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偶然の祝福
小川洋子 / 角川文庫
静かで深い、だからいつか読み返したい
1
7つの短篇は独立したお話だが、小説家である主人公の語り手「私」は全部に共通している。
短篇の並び方は時間順ではなく、読んでいくうちに主人公が最初の短篇の「今」の暮らし方になった経緯がわかるようになって…いる。
後半の短篇では、主人公の恋愛が主に描かれる。
私は「エーデルワイス」が心に残った。主人公の前に現れた熱狂的な男性の読者。
この短篇を最後まで読むと、この男性が何者か、なぜ主人公の前に現れたのかがわかる気がした。
それから、主人公の息子(赤ちゃん)の友達であるカタツムリの縫いぐるみがでてくる部分がいいです。この縫いぐるみを見てみたい。
続きを読む投稿日:2015.04.13