shiroyagi03さんのレビュー
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なぜ皮膚はかゆくなるのか
菊池新 / PHP新書
頭の中はカユくなるのか?
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はてさて、これは困った本です。
いや、ほめるところがないということではありません。
中身が不明瞭であるというわけもありません。
その逆で、たいへん明快ですしおもしろい内容です。
ただなんという…か、どうほめたらいいのかわからない本なのであります。
この本は「かゆみ」についての本です。
おそらく、対象としている読者層はアトピーで悩んでいる人やジンマシンで悩んでいる人たちなのだと思います。
そういった、一般の本好きというよりも切実な問題意識を抱えている人向けの本だと思います。
そして、そういった人たちにとってこの本はたいへん有益な本だと思います。
でも、決してそれだけではない、もうちょっと広くて深いものをこの本は含んでいる、そんな風にも思えるのです。
それがどういうものであるかとというと、ちょっとまとめにくい。
気になったエピソードはたくさんあるけどどれか二つ三つ挙げてみてといわれると、どれをどう伝えていいか迷ってしまいます。
アンポンタンな話です。
たとえるのならそう、脳科学の本にすこし似ているような気がします。
脳科学についての本は世にあまたあります。
興味深いエピソードがたくさんあって、身につまされたり考えさせられたりします。
みんな大好き脳科学といった感じで、一般の本好きが普通にそれを楽しむことができます。
この本もそんな脳科学の本に似た、そこからふくらませてちょっと哲学的なことまで考えてみたくなるような、そんな本であります。
もちろん著者の方はそういう読み方楽しみ方までを想定しているわけではないと思うですがどうでしょうか。
中島らもさんのエッセイ集で「頭の中がカユいんだ」という本があります。
タイトルだけお借りしてなんですが、この本はまさに頭の中がかゆくなる、そんな本です。
(追記)
目次(章立て)をあげてみます。
この本の射程範囲(?)がだいたいわかると思いますので。
<以下目次>
はじめに
第1章 かゆみの本能と感覚
第1項 ”掻くと気持ちいい”の本能を考える
第2項 かゆみは特殊な感覚
第3項 「かゆみ」と「痛み」の微妙な関係
第4項 「痛み」は素早く、「かゆみ」はトロい
第5項 「心」がかゆみにおよぼす影響
第6項 掻くとさらにかゆくなるもの
第2章 ”無性に”かゆくなる皮膚のしくみ
第1項 原因がわかるもの、わからないもの
第2項 かゆみの主犯格、「ヒスタミン」と「マスト細胞」
第3項 アレルギーの最初におこること
第4項 どのようにして脳に伝わるのか
第5項 掻くとさらに、かゆみを感じやすい体になる
第6項 かゆみを増幅させる装置
第7項 掻かずにかゆみを抑える
第8項 異常な知覚と、どう向き合うか
第3章 医者にかかる前に知っておきたい治療法
第1項 現実には知識のない医師もいる
第2項 虫刺され・かぶれ・日やけは、表皮のダメージ
第3項 じんましんのかゆみは、ヒスタミンが原因
第4項 乾皮症や乾燥肌は、かゆみ過敏状態になっている
第5項 慢性湿疹・金属アレルギーは、まず原因の除去から
第6項 アトピーは、ステロイドだけでは治せない
第7項 ヘルペス(単純疱疹・帯状疱疹)には外用薬はあまり効かない
第8項 かゆい水虫もかゆくない水虫も、治療の基本は同じ
第9項 しもやけは異常感覚
第10項 目のかゆみには抗ヒスタミン剤が効く
第11項 むずむず脚症候群は、中枢性のかゆみか?
第4章 かゆみにまつわる実際の症例
第1項 実際の皮膚科診療の現場では
第2項 症状1 アトピー性皮膚炎[30代 男性 二人の例]
第3項 症状2 金属アレルギー[42歳 女性]
第4項 症状3 慢性じんましん[56歳 男性]
第5項 症状4 子どもが抱える皮膚トラブル[0歳児]
第6項 症状5 毛染めの薬品にアレルギー反応[70歳 男性]
第7項 症状6 ひどい掻きぐせ[8歳 女児]
おわりに
参考文献
続きを読む投稿日:2018.06.22
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クルマを捨ててこそ地方は甦る
藤井聡 / PHP新書
羊頭狗肉である。
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タイトルに興味をもち購入しました。
しかし結果としては、「羊頭狗肉」と呼ぶにふさわしい著作でした。
本書の内容をまとめると
「地方の中核都市レベルの都市であればクルマ利用の抑制について対応を…するといいことがあるかもしれないが「負け戦」で終わることも覚悟しておく必要がある。あとそれとは別に、一般論として、あまりクルマに頼りすぎた生活をしているとなんらかの支障がでるかもしれないので注意すべし。」といったものです。
以上です。
本当にこれ以上のものは含まれていません。
タイトルが悪いんですね。
だって「クルマを捨ててこそ地方は甦る」というタイトルですよ。
そういう内容を期待しちゃうじゃないですか。
でも実際には
タイトルでは「クルマを捨ててこそ」といっていますが、実際には「クルマとかしこくつきあう」ことを推奨しています。
タイトルの「地方」は、本書では、一般的な「地方」のことを指しているのではなく「県庁所在所レベルの地方都市」を指しています。
「地方は甦る」というものの、その効果は実は疑わしいものであることを著者自身が自覚しています。
第5章の中で「・・・そのために、地方政府や地域社会は、京都市や富山市のように、半ば「負け戦」を覚悟の上で戦う心持ちで、一つひとつの交通まちづくりの取り組みを最大の戦略性を持って展開する姿勢を、持続しなければならない。」とあります。
「負け戦」を覚悟の上で。
何をかいわんや、です。
タイトルは著者ではなく、出版社の人が決めたのかもしれません。
そう考えれば、タイトルと中身との解離をとやかく責めてもしょうがないのかもしれません。
しかし、中身についても少々、いや大分お粗末であるといわざるをえません。
最終章(「おわりに」)の中で、20代後半に留学を経験して以来、自分の中での最も大きな研究テーマの一つだったのが、本書で論じた「かしこいクルマの使い方」の問題であった、とあります。
著者略歴をみるに、1968年生まれとあります。
二十年余の研究の成果がこの内容なのでしょうか。
本当にそうですか。
「やっつけ」で作った本なのではないか、なんとなくそう感じます。
人とクルマの現在の関係についてある種の危機感を持っている。
それはわたくしも著者の方と思いを同じくするものです。
でもそこで感じている危機感の本質やその解決に求めるものはちがっていたようです。
老婆心ながらですが、もしこの本の購入をお考えでしたら、著者のファンの方ならしらず、そうでなければおやめになったほうが宜しいかと存じます。
おそらくはそのほうが著者の為にもなるかと存じます。
紙の本ですが「<小さい交通>が都市を変える」大野秀敏、佐藤和貴子、齊藤せつな著(NTT出版)という本があります。
これは有益な本でした。
個人的にはこちらをお勧めします。
読後のあと味が悪すぎたのでつい毒舌になってしまいました。
著者の藤井聡さん。
いろいろとご活躍の方で著書も多数おありのようです。
優秀な方なのでしょう。
今回たまたまハズレをひいてしまっただけで、他の著作では有益なものもあるのかもしれません。
ただ個人的にはもういいです。
さよなら。
続きを読む投稿日:2018.09.12
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生きる哲学としてのセックス
代々木忠 / 幻冬舎新書
「監督、女をわかってないわね。」
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本書は御歳八十歳のAV監督が記した自叙伝?のような本です。
著者はその筋では有名な人、なのかな。
カマトトぶるわけではないですが、当方野暮天ゆえ著者の本業の世界についてはあまり明るくないのでござる…。
いや本当。
わたくしとて男子のはしくれ、AVぐらい観たことはあります。
でも、著者の監督作品を観たことがあるのかと問われれば、正直よくわからんちんです。
本書の内容はというと、永年AVの現場にたずさわってきた者としてそこで得られた知見を通して、性について、男女の仲について語っています。
構成としては、一つの方向に向かって話が進んでいくというわけでもなく、どこか散文的というか、ある種徒然草のようなまとまりのなさが感じられます。
「徒然草のような」とは、徒然草ってあっちとこっちで言ってることが真逆だったりする箇所が多々散見されますが、それがマイナスにはなっていませんよね。
整合性はないけど妥当性はあるというか。
要はアレです。あの感じです。
また、おじいちゃんの自慢話のような、時代錯誤のような箇所も正直あります。
そもそも、本書そのものがAVの現場で出会った人たちを通して性について語っているわけで、そりゃああなた、ある特殊な人たちを例にあげて普遍的一般的なことを語ろうとしても無理があるでしょう、てなハナシでもあります。
ただ、そういったマイナス面を責める気にはなれません。
読み手である当方がそこを差し引いて読めばいいだけのこと、そう思います。
あくまでここで表されているのはこの著者がその生涯をとおして手にした知見なのですから、無理にきれいにトリミングする必要はありません。
このままで全然結構です。
とはいえ、はてさてこの本をどう評価したらいいものか。
誰かに勧めたくなる本、というものではないような気がします。
同時に誰かにこの本を読んでもらいたいな、という思いもあります。
あいつとあいつにはこの本読んでもらいたいな、そうすれば風俗通いなんかやめてもっと奥さんのこと大事にするんじゃないかな、そんな思いも浮かんだりしました。
でもどうでしょうか。この本を読んで何かを得る人はそれ以前にもうそれを得ている人のような気もします。
また、エロにつられてこの本を読んで、何かを得たつもりにだけなって本当は何も得ていない、そんな人も出てきそうな気もします。
どうなんでしょうね。
なんだか奇妙なプレゼントを受け取ってしまったような、そんな感じです。
これをボクにどうしろというんですか。
どうもしなくていいんですけどね。
あと女の人はこの本を読んでどう思うんだろう。
やっぱり今も「監督、女をわかってないわね。」って言われちゃうんでしょうか。
なんだかそんな気がしないでもないです。
ちょっとだけ気になります。 続きを読む投稿日:2018.11.01