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このユーザーのレビュー
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万能鑑定士Qの推理劇 I
松岡圭祐 / 角川文庫
軽く楽しめるミステリ
13
そんなにコッテリしたミステリではないです。
そのため、本格的なものを期待するといささか肩透かしを食らうかもしれませんが、リーダビリティは高く、軽く楽しむにはもってこいの一冊です。
「ミステリはち…ょっと難しい……」という方でも、サクサク読めるのでおすすめできます。
それに、表紙の女の子に惹かれて完全キャラ萌えで読んでもOK。
惜しむらくは、シリーズがたくさん出ていて表紙とタイトルが似通っているためにどれを読んだのかわからなくなるところ。
これはなんとかしてほしい。 続きを読む投稿日:2013.11.13
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ハーモニー
伊藤計劃 / 早川書房
過大評価されがちだが、わたしは好きだよハーモニー
2
作者死去とともにブームが過熱し、「過大評価なのでは?」とも「正当評価だ」とも言われる論争が(一部で)繰り広げられている『ハーモニー』ですが、死去後に改めて読み直すと、作者自身の「生への執着」がひしひ…しと感じられてしみじみとしてしまいました。
徹底した健康管理という過剰な優しさを押し付ける「生府」のある世界で、二人の少女が冒険する果てに導きだされる驚くべき結論には、嘆息せざるを得ません。
『虐殺器官』は正直メタルギアソリッドからの借り物感が強かったのですが、『ハーモニー』になって作者独自のカラーが出たのではないでしょうか。もう読めないのは、残念です。 続きを読む投稿日:2013.11.13
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鳥葬 -まだ人間じゃない-
江波光則, くまおり純 / ガガガ文庫
読後感激重の衝撃ミステリ
3
ライトノベルらしくない表紙から察する通り、内容もライトノベルらしくないです。
そりゃまあ、ラノベレーベルで新興宗教やいじめに真正面から切り込んでいくラノベ界の異端児こと江波光則が書いているのだからしょ…うがない。
コピーには青春群像ミステリとありますが、別に群像劇でもないし、(一巻の時点では)ミステリでもありません。
SNSで希薄になっていく自意識と、過去に犯した無意識的な殺人に対する贖罪が取り上げられており、むしろ純文学に近いテイスト。
罪の意識と人と交流することの辛さの板挟みから希望を見出せるのか、とこれ一冊でも十分読ませる本ですが、やはり後編にあたる『密葬』まで読んでこその『鳥葬』です。
『密葬』では、本作の「人と関わること」というテーマが凄まじく苛烈に掘り下げられており、しかもミステリ的完成度も非常に高い一作。『鳥葬』から張ってあった伏線が一気に回収されていく様は見事。
ですので、『密葬』もセットで買ってみてください。特に読書家にとってはかなり辛い話ですが、損はないはずです。 続きを読む投稿日:2013.11.01
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スワロウテイル人工少女販売処
籘真千歳 / ハヤカワ文庫JA
普通のラノベに飽き足らない人におくる骨太サイバーパンク
3
イラストを『文学少女シリーズ』で知られる竹岡美穂氏が描いているので、それに惹かれた方も多いのではないでしょうか。
内容は、男性と女性が隔離されて暮らす近未来の日本を舞台としたサイバーパンクアクショ…ンで、 『文学少女』とはかけ離れていますが、普通のラノベでは物足りないと感じる方にとってはかなりおすすめです。
狂った人工妖精(人造生命やサイボーグに近い存在)を殺すことを仕事とする人工妖精の少女・揚羽が、都市を揺るがす陰謀に巻き込まれていくあらすじや、巨大メカや狂った妖精とのバトルシーン、口の悪い開発者との漫才じみた掛け合いはラノベっぽい。
しかし、親と子との関係や家族問題、性差といったテーマが盛り込まれており、ただ面白いだけでなく、深く考えさせられるような部分も多く存在します。
『マルドゥック・スクランブル』や『BEATLESS』といった美少女×サイバーパンクものが好きなら、是非読んでみてください。 続きを読む投稿日:2013.10.25
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know
野崎まど / ハヤカワ文庫JA
SF作家・野崎まどの本領発揮
3
野崎まどといえば、メディアワークス文庫から変格ミステリ作品を多く発表しているライトノベル作家ですが、本作はミステリ要素抜きの本格SFです。
人間にインプラント型通信機器・電子葉が装着され、世界を過剰な…情報が飛び交う未来社会。
そこに出現した、未来すら予測できる量子葉を持つ少女の4日間の冒険が描かれます。
少ないページ数でやや駆け足気味ではありますが、バトルありロマンスありと密度は濃いです。
そして何より特筆すべきは、ラストの美しさ。なぜ仏教が引用されるのか。量子葉でしか為せないこととはなにか。すべての要素がピシッと噛み合った感動を覚えました。
続きを読む投稿日:2013.10.08
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オイレンシュピーゲル壱 Black & Red & White
冲方丁, 白亜右月 / 角川スニーカー文庫
これぞまさしく冲方丁
2
冲方丁といえば、『天地明察』『光圀伝』が有名ですが、隠れた名作としてこのシュピーゲルシリーズを推したいです。
シュピーゲルシリーズ最大の特徴は、「/」「+」「=」を駆使した、無駄を省いた独特の文章表現…。一般的な小説の物とはまるで違うので、最初は面食らうかもしれませんが、慣れてしまえばむしろ普通の小説よりサクサク読めます。
ストーリーも非常に硬派。一言で言ってしまえば、「ISの皮を被ったメタルギアソリッド」。
様々な勢力や国家の思惑や政治経済が絡む重厚なストーリーは完成度が高く、特に4巻以降はそれが顕著になります。
キャラクターもしっかり作られており、一癖もふた癖もある美少女が大量に登場。
姉妹作である「スプライトシュピーゲル」のキャラとのクロスオーバーも楽しみの一つです。 続きを読む投稿日:2013.10.04