Reader Store
己琳さんのレビュー
いいね!された数146
  • 桃太郎侍(新潮文庫)

    桃太郎侍(新潮文庫)

    山手樹一郎

    新潮文庫

    時代小説デビューにぜひ!

    ある年代以上の方は、タイトルを見れば「テレビ化されたあの時代劇の原作か?」と思い当たることでしょう。その通りです! テレビでは勧善懲悪の一話完結で何年間か放送されましたが、原作は長編作品です。 作品を読み初めてすぐに、天涯孤独の身でありながら捻くれずにどこかのんびりとした世間知らずな主人公のことを放っては置けないと思えてしまうのは この作者のほかの作品にも共通していると思います。 (ああそれなのに、作品数が2作品しか発売されていないなんて…!!) 長編作品ではありますが肩のこらない作品であり、桃太郎の八面六臂の活躍と物語のどんでん返しにワクワクし、作品の最後局面では涙した思い出がある作品です。 この作者さんの文章はとても読みやすく、時代小説は文章が堅苦しくて…というかたに入門書という感じで読める作品だと思います。

    0
    投稿日: 2018.08.08
  • 華舞鬼町おばけ写真館 祖父のカメラとほかほかおにぎり

    華舞鬼町おばけ写真館 祖父のカメラとほかほかおにぎり

    蒼月海里,六七質

    角川ホラー文庫

    新シリーズ登場!

    同じ出版社で、つい最近完了した幽落町おばけ駄菓子屋シリーズのスピンオフ作品。 祖父の遺品であるインスタントカメラをカワウソに奪われた主人公・久遠寺那由多(くおんじ なゆた)。彼がカワウソを追いかけて迷い込んだところは、アヤカシたちが住む華舞鬼(かぶき)町。 そこの住人である狭間堂と名乗る男性に助けられてカメラは無事に戻ってきたが、カメラを盗った理由をカワウソに聞くと「本来、写真に写るはずのない風景が写っていた」という。 この事件がきっかけで、那由多と華舞鬼町の住人たちとの交流が始まった…。 引っ込み思案で対人恐怖症気味の那由多が、狭間堂たちとの出会いで徐々に成長していく過程が丁寧に描かれています。 幽落町シリーズを読んだことがない方でも楽しめる作品だと思いますが、巻末の余話では幽落町の住人が遊びに来たりしていますので、幽落町シリーズも読んで欲しいなと思っています。(どうやら華舞鬼町は幽落町の隣町らしいです)

    0
    投稿日: 2017.10.16
  • 検事はひまわりに嘘をつく

    みとう鈴梨, 陵クミコ

    検事はひまわりに嘘をつく

    みとう鈴梨,陵クミコ

    幻冬舎ルチル文庫

    ツンデレ検事と人気者弁護士のお話。

    正義感ゆえに被告人を容赦なく追及し、被告人はもちろん判事たちにも恐れられている検事の藤野辺。 今回担当する事件の被告の弁護人が小学生時代の初恋相手・弓瀬優動と知って内心はウキウキするものの、 表情を変えることなく弓瀬と渡り合って公判をおこなっていたある日、 元赴任先の友人から久しぶりに会いたいと誘われて向かった先はゲイの乱交パーティー。 そこには若い恋人に何も知らされず誘われたらしい弓瀬が現れて・・・。 小学生時代と変わらない人気者の弓瀬と、ツンデレ関西人の藤野辺。 口では文句を言いながらも、寝込んでしまった弓瀬の世話をかいがいしくする彼は可愛い。 彼らが担当している事件から思わぬ災難に巻き込まれてしまいますが 弓瀬の活躍で無事お姫様(藤野辺)は助けられたのでした。 表題の作品ともうひとつの作品は後日談で、弓瀬視点のお話。 弓瀬ののろけ話かと思いきや、二人ののろけ話でごちそうさま~って感じです。

    1
    投稿日: 2016.12.14
  • 静かなるドン(1)

    静かなるドン(1)

    新田たつお

    実業之日本社

    昼はダメ平社員、夜は関東最大ヤクザの総長(ドン)

    家の仕事を嫌い、ランジェリーメーカーに勤めている主人公の静也。 しかし父が射殺されたことにより、静也は否応無く跡目相続争いに巻き込まれ 先代の妻であり、静也の母の「跡目は静也に」という鶴の一言で 昼はサラリーマン、夜限定で新鮮組総長にという条件で跡目を相続することに。 しかし静也は亡くなった先代総長と違い非暴力主義。 自分の代で新鮮組の看板を下ろしてもかまわないと言い出す始末で 先代に心酔している組員たちは反発するやら対抗勢力に寝返るやらで不穏な空気になるが 静也の母は「彼以外に総長に相応しい者はいない」と譲らない。 なぜなら、母は静也の真の姿を知っているから。 新鮮組権力争い、敵対勢力との縄張り争い、そして静也の切ない恋物語です。 全100数巻という長いお話なのですがテンポの良い展開でハラハラしながら読みました。 あまり暴力シーンはどぎつくありませんが、連載雑誌が成人向けだったため性描写も多々あり お子さんがいる方はご注意を。

    0
    投稿日: 2016.12.10
  • 幽落町おばけ駄菓子屋 夕涼みの蝉時雨

    幽落町おばけ駄菓子屋 夕涼みの蝉時雨

    蒼月海里

    角川ホラー文庫

    シリーズ初・地方が舞台!

    彼方が住んでいるアパートの空き部屋の一室を、倉庫代わりに使っていた猫目。 荷物が増えすぎたために大掃除することに。掃除中に猫目さんの物ではない瀬戸物を見つけるが、 それは付喪神になりながらもぞんざいに扱われ、人間に恨みを募らせてアヤカシとなってしまった瀬戸物たちだった…。 シリーズ七作目にして初の東京以外の舞台・仙台が登場します(第三話) 彼方くんと迷い家・真夜さんとの二人旅で、水脈さんと猫目さんは幽落町で留守番です。 仙台旅行を楽しみつつ、新たなアヤカシとの出会いがあり そして偶然見つけた穢れたちには悲しい物語がありました。 仙台が舞台なので、東日本大震災後の観光地の様子が描かれており 震災前とはずいぶん様変わりしてしまったんだろうなと思いながら読みました。 そして余話では、作者の別作品「深海カフェ 2万哩」シリーズの深海さんが登場します。 深海カフェ・・・を読んでない方でも楽しめる話になっています。 両方読んでいる私はニヤニヤしながら読みましたよ♪

    1
    投稿日: 2016.09.26
  • 上司と熱愛 ~男系大家族物語2~

    上司と熱愛 ~男系大家族物語2~

    日向唯稀,みずかねりょう

    セシル文庫

    兎田家がモデルに?

    前巻で晴れて恋人関係になれた兎田家長男・寧と鷹崎。 しかし仕事と大家族の世話にと大忙しの二人は、なかなかデートも儘ならないようで・・・。 相変わらず兎田家の天使・七生に嫌われる鷹崎はちょっと可哀想ですが 兎田家ブラコンの頂点である寧を射止めた代償なので仕方ないでしょうね。 二人の束の間の逢瀬がちょっぴり刺激的で切なく感じました。 今回は兎田家の大騒動(食育フェアのイメージモデルになる!!)が中心に描かれておりますが その裏では次男・双葉の恋が静かにスタートをし始め、これはこれでどう展開してゆくのかが楽しみです。

    1
    投稿日: 2016.06.20
  • 深海カフェ 海底二万哩

    深海カフェ 海底二万哩

    蒼月海里

    角川文庫

    倫太郎が「自分の心の海」で見つけたものとは?

    主人公・倫太郎が兄のように慕っていた大空が行方不明になって7年。 彼の大好きだった水族館を見学中に「海底二万哩」という名のカフェの扉を見つけ 惹きつけられるように店内に入ると、そこには大空に瓜二つの店員・深海(ふかみ)が。 彼曰く「このカフェは心が疲れた人だけが見つけられる店なんだ」 倫太郎が訝るのをよそに、次に入ってきた客・ミカの疲れた様子を見て 「疲れているのは宝物を失くしたから。その宝物を君の心の海へ探しに行ってあげる」と言い出し 倫太郎を巻き込んで彼女の心の海へと飛び込んで行きますが・・・はたして彼女の宝物とは? 三編の読みきり作品+番外編?の構成です。 番外編には、この作者の別作品シリーズ「幽落町おばけ駄菓子屋」の 主人公・彼方クンと友達の奈々也クンが登場します。 どうやら仲良く二人であちこちへと遊びに行っているようですね。

    4
    投稿日: 2016.05.26
  • 幽落町おばけ駄菓子屋 晴天に舞う鯉のぼり

    幽落町おばけ駄菓子屋 晴天に舞う鯉のぼり

    蒼月海里

    角川ホラー文庫

    新たなる展開?

    シリーズ第6作目。 前回、蘇芳の計らいでもう一年間幽落町に居られるようになった彼方。 今回は水脈を呼び出すためだけに、水脈の宿敵?都築に誘拐された挙句に 「水脈の飼い犬」認定されてしまったり 彼方の故郷・千葉で水脈と退魔の鬼・忍との羊羹対決に巻き込まれたりと散々な目に合いますが これまでの感じと違い、今回は都築が主人公の話が巻末に描かれています。 冷徹で完璧そうな都築ですが、退魔の鬼・忍から「綻びだらけだな、君は」と指摘され絶句している彼が 水脈たちに導かれて少しずつ人を寄せ付けない刺々しさが薄れてきそうな雰囲気が感じられます。 次巻も楽しみです。

    0
    投稿日: 2016.05.04
  • 九十九さん家のあやかし事情 五人の兄と、迷子の狐

    九十九さん家のあやかし事情 五人の兄と、迷子の狐

    椎名蓮月,vient

    富士見L文庫

    今後の展開が楽しみです。

    主人公・九十九(つくも)あかねは両親が幼い頃に亡くなったこともり、あまりにも過保護で過干渉気味な五人の兄たちにウンザリ気味。 ある日亡くなった父からの手紙が、祓い屋・甲斐によってあかねに届けられ そこには「あかねを嫁に欲しいという”あやかし”がいる」と書かれてあり 「もし嫌であれば、兄たちと蔵の中にある箱に封じ込めている”あやかし”たちの力を借りて追い払うように」とも 書かれていました。 手紙に書かれていた箱を兄たちと一緒に見つけ、思い切って開けてみたら・・・そこからがさあ大変! 中に封じ込められていたあやかしたちが逃げ出し、その数日後から町で騒動が起き始め 九十九兄妹たちは騒動を起こしている(らしい)あやかしを見つけて捕まえようとしますが・・・。 今回のタイトルにもある通り、騒動を引き起こしているのは”妖狐”なのですが それには悲しい理由がありました・・・。 第一巻ということもあって、後半までは九十九家兄妹の紹介が主ですが 物語の重要な鍵を握る(と思われる)脇役として、祓い屋・甲斐と逃げ遅れたあやかし・雷電が登場。 「雷電」という勇ましい名前のあやかしですが、可愛らしいウサギのぬいぐるみに封じこめられているので あやかしの不気味さがなくコミカルな役割をしてくれています。 兄妹vs.甲斐、兄妹vs.雷電のやり取りがテンポよく進み あっという間に読み終わってしまいました。 以前書店で見かけて気になっていた本でしたが、楽しませてもらいました。 続きも購入したいと思っています。

    3
    投稿日: 2016.03.23
  • パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から

    パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から

    似鳥鶏

    幻冬舎

    ライトな推理小説?

    元優秀刑事の弟・惣司智と兄・季(みのる)の経営する喫茶店プリエールを舞台に、智の在籍していた県警本部の秘書官・直ちゃんに半ば強引に迷宮入りしそうな事件を推理させられ解決してゆく物語。 読みながら一所懸命推理しつつ読みましたが、事件の展開が速くいきなり犯人がわかっちゃったりして 本格的な推理小説がお好きな方には、少々物足りないだろうなと感じました。 いわゆる火曜サスペンスのような感じの物語をイメージしていただければいいかもしれません。 そう思って読み進めていくと、最終話が実は第一話の物語と関連していたという展開は思ってもみませんでした。 一番推理が楽しめるのは最終話でしょうか。 物語の舞台が惣司兄弟の営む喫茶店なので、美味しそうなデザートや飲み物が登場し 傷ついた人々の心を癒してくれています。

    2
    投稿日: 2016.03.09