taberunaさんのレビュー
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東大合格生の秘密の「勝負ノート」
太田あや / 文藝春秋
ノート作成の羅針盤のような本
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特に受験生ではないいい大人であるが、なんとなく東大生のノートを見てみたい!という好奇心に駆られて読んでみた。しかし蓋を開けてみたらごくごく普通の高校生のノートだった。中には殴り書きのようなノートもある…。字や纏め方が綺麗なノートもあるが、どこかのノート作成本で見たような…ちょっぴり小技の効いたありふれたノートだ。でも読み進めてみると、なるほどね、と普通のノートとの違いに気付いてくる。
では何が違うのか。
彼らは先生からやれと言われていることを、疑いもせず誤魔化しもせずただ素直にやっていた。「何だそれだけか」ではなくそれをするのがとても大変なのだ。高校生といえば部活もあれば、学校には受験に関係のない科目もある。家庭の事情でうまく時間が取れなかったり、病気になったりストレスで集中できなかったりなどのアクシデントもあるだろう。こんなとき参考書を読んだり問題集を解くことは不可能だ。でも自分のために作られたノートがあればある程度のことは乗り越えられるのだ。今やっていることと東大合格というゴールを直接結びつけたときに、自分のできる限りの最短ルートを見つけることができた人から勝ち残っていく。
この本を読んで「そんなノートの作り方があったのか」と気付いた人は、今までやれといわれたことを完璧にしてこなかった私のような人が多いのだと思う。言われたことを忠実にやろうとすると、先にも述べたように普通の高校生は色々なアクシデントが待ち構えている。受験までの短い期間では、圧倒的に時間が足りない。授業ノートや参考書への書き込みなどの普通の作業では、それらに太刀打ちできなくて悩むのだ。それでも忠実に先生たちの意見に従おうとするならば、自ずと別の方法、つまり新しい形のノート作りを模索するようになる。やらなければならないことを短時間で済ますにはどうしたらよいか、試行錯誤の末たどり着いたノートの形は大抵似たようなパターンに終着する。
現役東大生たちは受験生だった頃、こぞってテストで間違えたところの復習をするためのノート、反復演習するためのオリジナルノートなどを作成していた。そんな中で、ポイントが一目でわかるように、目次に書き込みをしたり、色分けをしたりなどに個性が光っていた。目を見張るのは間違えたところをいかに短時間で反復学習できるようにするか、それらのことを地道に考えていただけで特別なことは何もない、でもそのような大変辛い作業を楽しんでやる才能が必要だということが本を読めば嫌というほどわかった。これは私にとって多少の落胆があった。なぜなら特別な努力や特別なノートが東大生という結果を導いたのではないかという魔法の杖のような何かを期待していたためだ。現実は、正しい方向への努力×地頭の良さ=東大生という正攻法の掛け算だった。この本を読めば楽して頭が良くなるかもしれないという、私の淡い期待は見事に打ち砕かれたというわけである。
ではその正しい方向とは一体何なのか。その具体的な内容が彼らのノートを拝見していると見えてくる。本には実物のノートがカラーで載っているし、色々な人の工夫を凝らしたノートが参考にできるので、眺めているだけでも楽しい。見ているうちに自分に合ったテイストのノートの作り方が見えてくると思う。ノート作りは何も大学受験に限った話ではない。子どもから大人まで、ありとあらゆる分野の試験に挑戦しようとしている人、そのための努力する覚悟のある人が、残された限られた時間の中で間違った方向へかじ取りしないためには読んでおいたほうがよい本といえる。
続きを読む投稿日:2015.09.17