癒やしタイムにも、教養読書にもおすすめなライトノベル『狼と香辛料』

癒やしタイムにも、教養読書にもおすすめなライトノベル『狼と香辛料』

2017.05.26 - 特集

シミルボンに投稿された要注目記事をピックアップ!
今回はとりとんさんのコラムを取り上げます。

癒やしタイムにも、教養読書にもおすすめなライトノベル

行商人のロレンスは、馬車の荷台で麦の束に埋もれて眠る少女を見つける。 少女は狼の耳と尾を持つ美しい娘で、自らを豊作を司る神・ホロと名乗った。 「わっちは神と呼ばれたがよ。わっちゃあ、ホロ以外の何者でもない」 まるで経験を積んだ大人のような話し方で、ロレンスを巧みに翻弄する少女。 「お前は、本当に神なのか?」 最初は半信半疑だったロレンスも、やがてホロが旅に同行することを承諾する。 そんなふたりの旅に、思いがけない儲け話が舞い込んでくる。 近い将来、ある銀貨が値上がりするという噂。 疑いながらも、ロレンスはその儲け話に乗るのだが・・・・・・。

『狼と香辛料』は、中世ヨーロッパのような世界を舞台に、「貨幣」と「経済」をテーマにしたライトノベルです。ライトノベルという分類ではあるものの、やや難しい内容も含まれています。あくまでも軸は、ありがちな鈍感主人公と狼人間のヒロイン・ホロのラブコメではあるのですが、時には経済や神話をもとにした内容も語られます。逆に言えば、「ライトノベルと大人向けの小説の中間のような本を読みたい」というニーズにはピッタリでしょう。


私が本書を読み始めたのも、そんな中途半端な感性を持っていた高校生の頃でした。一番最初に通読したときは、「ホロがかわいい!経済の話難しい!」という感想しか抱きませんでした。それでも、この作品のファンになって「もっと内容をしっかり理解したい!」という思いから、経済に関する勉強を始めたのもこの時期です。結局「経済って難しい」という苦手意識は拭えていないのですが、社会人になった今も、純粋にライトノベルを読む姿勢で読み返すことが多いです。


この本の著者、支倉凍砂さんのブログでは、『狼と香辛料』を書き上げるために参考にした文献が紹介されています。そのリストを見てみると、図鑑や小説家向けのまとめ本は取り上げられておらず、ほとんどが古典や学術書ばかり。本書を書き上げるため、さまざまな難解な文献を読み込んでいることがうかがえます。著者のこの作品に対する熱意もひとしおなのでしょう。


文倉十さんのイラストに加え、自分のことを「わっち」と呼んだり、「~かや?」という語尾を使う独特の話し方。そして狼の耳と尻尾が生えている外見、などなど。ヒロインであるホロのかわいさは、この本の大きなポイントでもあります。もう1つのポイントは、経済の初歩について解説されている点です。学問に関する入門書には小説という形をとっているものはほとんどありません。マンガで解説されているものは多くありますが、文字がメインのストーリー性のある入門書はまず見当たりません。ところが本書は、小説でしかもライトノベルというジャンルのなかで、興味深く経済学の世界を紹介してくれる本なのです。


経済の入門書として、あるいはちょっと頭を使う教養読書の1つとして、手にとってみてください。刊行されているのは全部で17巻。ボリュームのあるストーリーですが、さすがはライトノベル。サクサク読み進めることができますよ。シリーズ続編である『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙』や、コミカライズ版、2期にわたるアニメ作品も楽しむことができます。かわいいヒロインで癒され、経済の知識で知的好奇心を満たす読書を楽しんでみてください。(とりとん)

『狼と香辛料』シリーズ

『狼と香辛料』コミカライズ

新シリーズ『狼と羊皮紙』

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